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三連休は雪? 関東は予想が難しい付着しやすくて重い雪

饒村曜気象予報士
平成25年(2013年)1月14日の成人の日の関東の雪(撮影:高橋和也)

難しい南岸低気圧の雪予報

 南岸低気圧による関東の雪は、低気圧進路が少し変わっただけ雪になったり雨になったり、あるいは雨も雪も降らないこともあることから、難しい予報の1つです。

 しかも、雪が降って10センチの積雪となれば関東の交通機関は大混乱しますが、10センチの雪に相当する10ミリの雨が降った場合はほとんど影響がないというように、予報の影響が大きいことから気象庁の予報官やお天気会社の気象予報士泣かせです。

 南岸低気圧による関東の雪は、多くの場合、水分を多く含んでいることが多く、重たい雪です。そして、樹木や電線などに付着しやすい雪です。

 タイトル画像は、平成25年(2013年)1月14日(成人の日)の関東の雪ですが、枝に付着し、枝が重みで垂れ下がっています。

 もう少し雪の量が多ければ、交通障害に加えて、枝が折れたり、電線が切れたりする着雪害も発生するところでした。

平成最後の成人の日を含む三連休

 年明けから続いていた年始寒波は、大陸の高気圧の一部が移動性高気圧になって東進したことから、西日本から一服してきました。

 上空5500メートルの気温も、大雪の目安となる氷点下36度の寒気が北海道の北まで北上し、平地での雪の目安である氷点下30度の寒気も津軽海峡まで北上しています(図1)。

図1 気象衛星画像と地上天気図(1月10日9時)
図1 気象衛星画像と地上天気図(1月10日9時)

 今後、成人の日(1月14日)にかけて、氷点下36度以下という非常に強い寒気は南下してきませんが、氷点下30度以下という強い寒気が再び南下し、全国的に寒くなります(図2)。

図2 成人の日(1月14日)朝の寒気
図2 成人の日(1月14日)朝の寒気

 暖かい日が続いていたため、非常に寒く感じるのですが、これで平年並みの寒さです。

 東京の最高気温と最低気温の推移をみても、年末寒波や年始寒波の時に平年値を下回っても、平年より高い時もあり、平年値を挟んでの増減です。

 誤差幅を考えた週間天気予報の気温予想では、これからの最高気温は平年値を挟んでほぼ平年値、最低気温は平年値より若干高くなっています(図3)。

図3 東京の最高気温と最低気温の推移(平成31年1月11日以降は予想)
図3 東京の最高気温と最低気温の推移(平成31年1月11日以降は予想)

 東京の週間天気予報では、12日(土)が「曇りのち雨か雪」、13日(日)が「曇り一時雨か雪」となっています。

 つまり、成人の日を含む三連休には、南岸低気圧により、関東では付着しやすい重い雪が降る可能性がありますが、どちらかというと、雪よりも雨の可能性が高いという予報です(図4)。

 ただ、信頼度が「C」と、週明けの予報より信頼度が低く、難しい予報であることを示しています。

図4 東京地方の週間天気予報
図4 東京地方の週間天気予報

八丈島通過は一つの目安

 成人の日を含む三連休は、東シナ海で発生した低気圧が九州の南海上を東進して始まります(図5)。

図5 予想天気図(1月12日9時の予想)
図5 予想天気図(1月12日9時の予想)

 一般的には、低気圧が北東進して八丈島付近を通過するときは関東地方が大雪となります。

 八丈島より北を通過する場合は、大気圧からの暖気がはいって雨となり、八丈島の南を通過するときには、低気圧の雲から離れることで、雨も雪も降らないということになりますが、単純ではありません。

 平成18年(2006年)1月20日の場合は、南岸を東進する前線を伴った低気圧の北側に、別の低気圧が発生したことから、東京都心部で9センチなど、関東南部に8年ぶりの大雪となっています(図6)。

図6 地上天気図(左は2006年1月20日9時、右は21日9時)
図6 地上天気図(左は2006年1月20日9時、右は21日9時)

 低気圧が弱まって八丈島の南を通過したのですが、このときは大雪でした。

 気象庁では、関東南部で大雪となった1月20日に、従来の「1月中旬以降は気温が上昇して記録的な日本海側の豪雪も落ち着く」という予測を修正し、「北・東日本で大雪の可能性が高い」としています。

 平成18年(2006年)の冬は、それほど予報が難しかった年でした。

成人の日の大雪

 平成25年(2013年)1月14日の成人の日は、低気圧が八丈島の北を通過して雨が降っていたのですが、低気圧が急速に発達して北からの寒気を大きく南下させています(図7)。

図7 地上天気図(左は2013年1月14日9時、右は15日9時)
図7 地上天気図(左は2013年1月14日9時、右は15日9時)

 このため、成人式の式典が始まる前から降っていた雨は、成人式の式典の途中から雪に変わり、成人式の式典が終わる頃には交通機関が大混乱するほど雪が降り積もっています。

首都圏大雪 連休の行楽客直撃 交通混乱「早く帰りたい」

 「成人の日」の14日、午前から太平洋側を中心に吹き荒れた激しい雪と風は、三連休の最終日に家路を急ぐ行楽客らを直撃した。平日に比べて通勤客は少なかったものの、東京都心は一時、吹雪になり交通網が混乱。乗用車が立ち往生し、電車は遅れがちとなった。この日の都心の積雪はわずか8センチで、都市の弱点をさらけ出した。

◆気象庁予報外れ 「積雪可能性小さい」

 気象庁は14日未明の天気予報で、都心の積雪について「可能性は小さい」としていた。しかし、見込みは外れ、同日午前には都心で大雪注意報を発表。東京、横浜では今シーズンの初雪を観測した。

 この日の都心の気温は、午前5時で6.2度。同庁は14日の日中の最高気温を6度と予想していたが、その後、気温はみるみる下がっていき、同11時には2.3度、正午には0.8度に。同庁は同10時41分、東京23区に大雪注意報を出した。

 今回、大雪をもたらした低気圧は、雨になるのか雪になるのかを最終的に見極めるのが難しいとされる「南岸低気圧」。同庁では「内陸の寒気が予想以上に沿岸に流入して、気温が下がったため」としているが、「気温が3~4度なら雨、1度弱で雪となる微妙な状況だった」と説明している。

出典:読売新聞(2013年1月15日朝刊)

雨、それとも雪

 平成31年(2019年)の成人の日を含む三連休は、東シナ海で発生した低気圧が北緯30度線に沿って東進し、あまり北上しない見込みです。

 しかし、この低気圧の北側で空気の集まりがぶつかり、小さな低気圧が発生する可能性が高く、雨や雪を降らせる雲が、北へ大きく広がってくる見込みです(図8)。

図8 雲の予想(1月13日0時の予想)
図8 雲の予想(1月13日0時の予想)

 平成18年(2006年)のときのように、関東に大雪を降らせるほど北へ雲が広がるかどうかは、現時点で不明ですが、「低気圧が本州の沖合いをかなり離れて通過するので、雨も雪も降らない」とは、単純に言えないことは確かです。

 このように、本州南岸を低気圧が通過するときの雪については、予想が難しいことを念頭に、最新情報の入手に努める必要があります。

タイトル画像の出典:高橋和也氏提供。

図1、図2の出典:ウェザーマップ提供。

図3の出典:気象庁資料をもとに著者作成。

図4、図5、図6、図7の出典:気象庁ホームページ。

図8の出典:ウェザーマップ資料に著者加筆。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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