「還付申告」で税金を取り戻そう、医療費がかかった人や自然災害で損害を受けた人は、手続きしないとソン
◆納め過ぎの所得税を取り戻す「還付申告」
今年も確定申告の時期がやってきました。2018年分所得税の確定申告の受付けは2月18日から3月15日までとなっていますが、納め過ぎの税金を返してもらえる「還付申告」は、すでに1月1日から受付けが始まっています。
会社員・公務員など給与所得者の場合、所得税を給与天引きで納めているため、確定申告はあまり身近な制度ではないかもしれませんが、「還付申告」の対象となっていることは十分あり得ます。
その代表的なのが「医療費控除」。本人や生計を同じにする家族が入院した、歯科にかかったなどで医療費負担が大きかった場合には、税負担を軽減するという制度です。
また、昨年は台風や豪雨など自然災害の被害が各地で相次ぎました。住宅や家財に被害を受けたというご家庭も、例年より多いと思われます。もしそうであれば、ぜひ「雑損控除」を知っておいてください。
給与所得者の場合、勤め先が税額を計算し納税もしてくれますが、「医療費控除」や「雑損控除」の対象になるなどの個々の事情までは汲んで計算しません。そのため、それぞれが「還付申告」して納め過ぎの税金を戻してもらう必要があるのです。
所得税は、収入から経費(給与所得者の場合「給与所得控除」)と各種控除を差し引いた「課税所得金額」に対して計算されます。各種控除には、基礎控除、配偶者控除、扶養控除などの「人的控除」と、社会保険料控除、生命保険料控除などの「物的控除」があり、「医療費控除」と「雑損控除」も物的控除のひとつ。対象となる控除が多ければ、税額計算の基となる「課税所得金額」が少なくなり、所得税額も少なくなるというわけです。
「還付申告」は、勤め先で差し引かれなかった控除を反映させて税額を再計算し、納め過ぎの分を取り戻す手続きと言えます。
◆対象の医薬品購入が1万2000円を超えたらできる「医療費控除」
「医療費控除の還付申告」の方法には2通りあります。
1つ目は、実際に支払った医療費(生命保険などの入院給付金、健康保険の高額療養費などを差し引いた金額)のうち、10万円(総所得金額が200万円未満の人は総所得金額の5%の額)を超えた金額を「医療費控除」として所得控除できる、従来からの方法です。
たとえば、実際に支払った医療費の総額が25万円だったとすると、25万円-10万円=15万円が「医療費控除」の金額となります。
医療機関に支払った医療費の実費以外にも、市販薬の購入代(治療目的でないビタミン剤などはNG)、治療のためのマッサージなどの施術代、通院のための交通費などを「医療費控除」の対象として合算できます。
他にも対象となる項目があるので、国税庁のHP医療費控除の対象となる医療費で確認してみて下さい。
2つ目の方法は、2017年1月からスタートした「セルフメディケーション税制(特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例)」。
こちらは、勤務先や自治体が実施する健康診断を受けているなど「健康の保持増進および疾病の予防に関する一定の取組み」を行っている人が、制度の対象となる「スイッチOTC医薬品」(医師によって処方される医療用から転用された医薬品)を薬局やドラッグストアで1万2000円以上購入した場合、超えた部分を所得控除できるという内容になっています。
10万円を超えるほど医療機関にはかからなかったけど、購入した市販薬が結構あるというご家庭も多いと思います。「スイッチOTC医薬品」であるかどうかはパッケージに記載されているほか、購入時のレシートにも記載されているので確認しましょう。
「すでに捨ててしまった!」という方は、今年から要注意です。
従来の「医療費控除」と「セルフメディケーション税制」の両方は使えず、どちらかの選択になります。
従来の「医療費控除」を選択した場合、手続きに必要な書類は、(1)確定申告書、(2)2018年分の給与所得の源泉徴収票、(3)医療費控除の明細書です。(2)は1月に勤め先からもらっているはずです。
(1)はもよりの税務署に行けば手に入りますが、国税庁HPの国税庁 確定申告書等作成コーナーの「作成開始」をクリックし、指示どおり入力していくことで完成書類を作成することができます。
(3)のフォーマットは、医療費控除の明細書の書き方などから、PDF版あるいはExcel版をダウンロードすることができます。
2016年分までは「医療費控除」の還付申告に領収書の添付が求められていましたが、現在は(3)の明細書だけで良くなりました。ただし、税務署から確認のため領収書の提示を求められる可能性はあるので、5年間は捨てないようにしましょう。
「セルフメディケーション税制」を選択する場合は、先の(1)(2)と(3)セルフメディケーション税制の明細書(4)健康の保持増進および疾病の予防に関する取組を行ったことを明らかにする書類(健康診断の結果通知表、インフルエンザの予防接種の領収書など)が必要になります。
◆自然災害や火災で損害を受けたら税制面の配慮がある
2018年は地震、台風、豪雨などの自然災害が相次ぎましたが、いつどこで被災するか予測不可能で、もはや他人事ではありません。また、火災や盗難などにより損害を被るといったこともあり得ます。
それらの被害にあった場合には税制面の配慮があります。これまで大丈夫だったとしても、今後のために「雑損控除」について知っておきましょう。
「雑損控除」は、住宅や家財など(生活に通常必要な資産で事業用はダメ)に損失が発生した場合に適用される控除。金額は次の(ア)(イ)のうちいずれか多いほうとなります。
(ア)損害金額-所得金額の10分の1
「損害金額」は、損害を受ける直前のその資産の時価を基にして計算した損害額で、保険金や損害賠償金などによって補てんされる金額を除いた金額。(イ)で述べる災害関連支出を含む。
「所得金額」は、給与所得だけの場合、額面年収から給与所得控除額を引いた金額。
(イ)損害額のうちの災害関連支出の金額-5万円
「災害関連支出」は、災害により滅失した住宅・家財などを除去するための費用などの災害に関連したやむを得ない支出。
「還付申告」の際には、被害を受けた住宅や自動車などの取得年月などが分かるもの(売買契約書など)、修繕費など災害関連支出の領収証、保険金等で補填されたならその金額が分かる書類、罹災証明書の写し、源泉徴収票などが必要となります。
被害額が大きく、その年分の所得金額から控除しきれない金額がある場合には、原則として翌年以降3年間繰り越して、それぞれの年分の所得金額から控除することができます。
もうひとつ税制面の配慮として、「災害減免法」による措置があります。こちらは自然災害や火災が対象で、「雑損控除」では対象となっている盗難・横領には適用されません。
被災した場合には、「雑損控除」と「災害減免法」のどちらか有利な方を選択することができます。
「災害減免法」では、災害により住宅や家財の損害が価額の2分の1以上であった場合、その年分の所得金額が500万円以下のケースでは所得税が全額免除となります。所得金額500万円超750万円以下なら所得税は2分の1に軽減、750万円超1000万円以下なら4分の1を免除、1000万円超のケースには適用はありません。
「雑損控除」と「災害減免法」のどちらを選択すれば有利かは、所得金額と損害金額の大きさによります。所得金額500万円以下のケースの場合、損害金額が大きく3年間の繰越控除が使えるようなら「雑損控除」、そうでなければ「災害減免法」を選択するほうが有利になりそうです。
わが家の場合どうかなど確認したい場合は、所轄の税務署に行けば無料で相談が受けられます。