家計管理は妻の仕事?~「全部妻にまかせている」夫は要注意
◆1人に任せきりにすると大きなムダが発生するかも
将来のための資金づくりをうまく進めるには、「家計管理」がモノを言います。「家計」というと、ひと昔前のイメージをもったままの人は、「家庭を守る妻の役割」と考えるでしょう。電卓をたたきながら、家計簿に数字を書き込んでいるイメージです。
夫は外で仕事に励み、妻は主婦として家事に専念という時代だったら、役割分担としてそれも仕方がなかったかもしれません。しかし、家計は家庭の経済計画です。本当はそんな時代でも家計は家族全体に影響する問題であり、夫婦が協力して運営するべきことだったのです。まして老後資金プランへの自己責任が重くなっている現代、妻1人に任せきりというのは通用しません。もし、うまく家計運営ができず、そのまま時間が過ぎてしまうと大変なことになります。
「早めにわかったからよかった」というケースとして、クレジットカードの支払い残高が残っているのに気づかず損をしている奥さんのケースを思い出します。利用明細書をチェックしていなかったため、使っているクレジットカードがリボ払い(リボルビング払い)になっているのを知らずにいたのです。
リボ払いは利用額にかかわらず毎月一定額を支払う方式で、所定の手数料(金利)がかかります。クレジットカードの利用を繰り返すと支払い残高が増えますが、リボ払いは定額の支払いなので利用限度額になるまで気づきにくいのです。つねに支払い残高がある状態になり、その間かさむ金利負担は、家計のムダな支出になってしまいます。
利用明細書を夫婦でチェックしていれば防げたムダでした。
◆じつは高収入家庭の1割が貯蓄ゼロ
「どうしても家計管理がうまくできず、毎月の収支がギリギリになってしまう」という奥さんの相談を受けたことがあります。こちらのケースも、夫は仕事が忙しすぎて毎日帰りが遅く、家計管理まで目が行き届かないようでした。
そのままだと貯蓄がまったくできず、住み替え、子どもの進学、定年後の生活など将来の予定が立たなくなってしまいます。高価なモノを買っているわけでなく、日常の買物で余計に使っているようだったので、食費など毎月の予算を決め、それを守るようアドバイスしました。それだけで貯蓄に回すお金が残るようになりました。
毎月の予算づくりの前に今後の計画(ライフプラン)を立てておく必要があります。
家族のライフプランは1人で決めるわけにはいきません。夫婦、場合によっては子どもの希望も反映させ、みんなが納得できる計画を立てます。そして、ライフプラン実現に必要な資金はいくらか、そのときまでにどう準備していくかを夫婦で話し合います。毎年いくら貯蓄しなければいけないかがわかれば、おのずと毎月の貯蓄額も計算できます。その貯蓄額を確保するために、支出の予算化と管理が不可欠となるのです。
「もっと収入が多ければラクに貯蓄できるのに」と思うことがあるかもしれませんが、高収入の世帯が必ずしもきちんと貯蓄できているとはかぎりません。高収入でも貯蓄ゼロの世帯が1割程度あります。入ってきた金額をすべて使ってしまっているのです。高収入が続いている間は問題なく家計が回るので、支出を管理しようという意識が働かないのでしょう。
けれども、会社員の場合は役職定年や定年退職の時期を迎えると収入がダウンしますし、事業を行っている人も経営難に陥る可能性があります。不測の事態に備える意味でも、「貯蓄できる家計」にしておくことが大切なのです。
◆お金の話合いは夫婦の風通しがよいことが大切
まだまだリタイアまで時間がある若い世代はもちろん、働き盛りの40代は、いまのうちに貯蓄できる家計にするために、ぜひ夫婦で話し合っての家計管理をしていきましょう。50代もまだ修正は間に合います。
50代は、子どもの教育費にかかるお金のメドが立ち、夫婦の老後資金づくりに注力できるケースが多いでしょう。この時期が大切です。ここで財布のヒモを緩めず、家計管理をしっかりやっていくことです。
夫婦での話合いが必要といいましたが、いままでお金の話をオープンにしたことがないというご夫婦も少なくないと思います。夫、妻のどちらかが主になって家計管理を行い、もう片方は信頼して任せているというケースは多いでしょう。
けれども、フタを開けてみたら期待していたようにはきちんとできてなかったなんてケースもあるのです。また、どちらかが主導権をにぎると、もう1人の意見が取り上げられなくなりがちです。
共働きの場合、家計に必要な金額を出し合って、あとはそれぞれが自分で管理しているケースも少なくないようです。自由になるお金があると、お互いにクレジットカードの使い道など知られたくないかもしれません。
しかし、夫婦や家族間の風通しがよいことは、これからの長い人生を考えたときに、とても大切です。ふだんからコミュニケーションがとれないまま過ぎると、ますますあらたまって話し合うことが難しくなります。思い立ったいまが話合いをはじめる良いチャンスです。