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ヘンリー王子夫妻の新ウェブサイト、サセックス.comが「亡き女王への裏切り」と言われるワケ

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
sussex.comのトップページ。スクリーンショットは筆者が作成

ヘンリー王子夫妻が12日、突如オフィシャルウェブサイト、サセックス.com(sussex.com)を立ち上げ、物議を醸している。

トップページには溢れんばかりの笑顔で拍手をしながら何かを見つめる夫妻の写真が掲載されている。この写真は昨年ドイツで開催されたインヴィクタス・ゲーム(負傷した軍人らの国際スポーツ大会)の閉会式で撮影されたものだ。この写真の上に、夫妻の王室の紋章と、「ヘンリー王子&メーガンのオフィス」「サセックス公爵夫妻」(夫妻の王室の称号)という文字がある。

別のページには2人のプロフィールや活動内容が掲載されている。プロフィールについて、ヘンリー王子は「人道主義者、退役軍人、メンタルヘルスの擁護者、環境保護活動家」とあるが、英王室の王位継承順位5位であることは触れられていない。

メーガン夫人については「フェニミストであり人権と男女平等の擁護者」とある。2人とも最後に「妻(夫)と2人の子供、アーチー王子とリリベット王女と共にカリフォルニアに住んでいる」と結ばれている。

昨年9月16日、ドイツ・デュッセルドルフで開催されたインヴィクタスの閉会式にて。ウェブサイトに使われた写真はこの時に撮影された一枚と見られる。
昨年9月16日、ドイツ・デュッセルドルフで開催されたインヴィクタスの閉会式にて。ウェブサイトに使われた写真はこの時に撮影された一枚と見られる。写真:REX/アフロ

これまで夫妻はチャリティ財団アーチウェル.com(archewell.com)で活動内容を掲載してきたが、現在は新サイトsussex.comにリダイレクトされるようになっている。別の関連サイト、サセックスロイヤル.com(sussexroyal.com)も今後は新サイトにリダイレクトされる予定のようだ。

この新ウェブサイトが物議を醸しているとアメリカメディアが報じている。一番の問題は「ヘンリー王子夫妻が英王室から与えられた紋章とロイヤルサイファが掲載されていること。また『サセックス公爵』という称号が商業活動に使われていること」という。

新ウェブサイトには夫妻の制作会社アーチウェル・プロダクションへのリンクも貼られている。この新ウェブサイトについて「挑発的」と報じた英デイリーメールは「これは亡き女王との合意に対する裏切りだ」と非難する記事を発表。「商業主義的な内容は問題になる」と王室専門家のコメントも紹介した。

ページシックスも「ウェブサイトを開設したメーガン・マークル。故エリザベス女王二世への裏切り」という見出しで報じ、「サセックス・ロイヤルの名を個人ブランドのために使用しないというエリザベス女王との約束を反故にした」と非難した。

夫妻の王室の称号と紋章がサイトに使用されていることに対して、SNSなどでも辛辣なコメントが上がっている。例えばこのようなものだ。

「英王室を嫌って何年も前に離脱し、その後王室の悪口を吹聴したのに、未だに自分たちを『サセックス公爵』とブランディングし続けている」

「王室メンバーとしての義務を放棄し、英国民と歴史を侮辱し、伝統を嘲笑し、君主制を弱体化させたのに、この称号に張り付き寄生している」 etc...

2022年9月8日、96歳で亡くなったエリザベス二世。英国民に愛された女王だった。
2022年9月8日、96歳で亡くなったエリザベス二世。英国民に愛された女王だった。写真:代表撮影/ロイター/アフロ

ほかの英米メディアも次々に非難する記事を発表。

ピープルは新ウェブサイトについて「英王室を非難するわりに『よりロイヤル』になろうとしている」、「メーガン・マークルは昔やっていたライフスタイルブログ『The Tig』時代の、自分のお眼鏡に適った制作会社に今回も依頼するなど、裏側で連携している 」と伝えた。英BBCは「オフィス」という言葉が付けられていることを分析し「かつての野心や栄光の残り香を漂わせている」「上品でシンプルだけど高級チョコレートのサイトに適している」と皮肉を込めた。

(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、著名ミュージシャンのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をニューヨークに移す。出版社のシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材し、日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。

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