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メーガン夫人が人種差別と非難した王室メンバー2人の名が明らかに。英米でこの騒動の反応は?

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

イギリス人作家による英王室の暴露本が、オランダで販売中止になる騒ぎに発展している。以前より問題になっていた「人種差別的なコメントをした」とされる英王室メンバー2人の名が、「エラー」(ミス)により出版物として世に出てしまったのだ。

ミスのあった暴露本とは、オランダで11月28日に発売されたオミッド・スコビー(Omid Scobie)氏による『Endgame(エンドゲーム)』のオランダ語版だ。2人の名は削除されるようで、その修正作業により一時的に販売中止となっている。

メーガン夫人が以前告白した内容とは?

ハリー王子とメーガン、サセックス公爵夫人(Meghan, Duchess of Sussex、以下メーガン夫人)の現在4歳になる長男、アーチー王子(Prince Archie of Sussex)がお腹の中にいる時、肌の色についてのコメントが英王室メンバーからあったとして、メーガン夫人を憤慨させたことが以前より伝えられていた。

事の発端は2021年、オプラ・ウィンフリー氏によるメーガン夫人のインタビューだ。

メーガン夫人はウィンフリー氏によるインタビューの中で、このように告白した。

「(生まれてくるアーチー王子について)肌の色がどれほどダークかについての懸念やそのような会話があった」

ウィンフリー氏は「なんだって?」と一瞬言葉を失う。「赤ちゃんの肌がどのくらいダークになるかとか、そういう会話?」と尋ねると、メーガン夫人は「そのような感じの意味が潜在的に含まれるものでした」と、神妙な面持ちで返答した。ウィンフリー氏が「誰がそのようなコメントをしたのかは言わないのですね?」と尋ねると、メーガン夫人はあまりにも彼らに与えるダメージが大きいとして名前は伏せた。ハリー王子も「絶対に明かさない。気まずい会話だった。少しショックを受けた」と付け加えていた。

このインタビューが放映されるや否や、メディアやSNSで「英王室に人種差別主義者がいる」と大騒ぎになり、まるで犯人探しのようなことが始まった。しかしこれまで名前は明かされていなかった。

ちなみに、今回2人の名前が印刷され出版されたのはオランダ語版で、英語のオリジナル版では名前は明かされていない。一体どんなプロセスでこのようなエラー(ミス)が起きたのかは、明らかになっていない。

肌の色について言及した王室メンバー2人とは?

ミスのあったオランダ語版の報道でも、王室メンバー2人の名は明かされていなかったが、このほどイギリスのテレビ番組で公表された。

イギリス人キャスターのピアーズ・モルガン氏が11月29日の自身の番組で、その2人の名前について言及したのだ。

モルガン氏は「オランダで名前が世に出たのなら、イギリス人にも知る権利がある」と話し、「(公表することで)もっとオープンな議論ができるはず。なぜならそのような人種差別的なコメントが王室の誰かからあったなんて、私は信じていないからです。そうしたコメントがあったという証拠が見つかるまで私は絶対に信じない」と前置きした上で、モルガン氏は「2人とは、チャールズ国王とキャサリン皇太子妃(ケイト・ミドルトン)」だと発表した。

モルガン氏は「私たちはそのような言葉が本当に発せられたのか、どのような文脈だったのか、そもそも人種(差別)的な意図があったのか調べることができます。先ほども言いましたが、私はそんなことはなかったと思います」と、2人の王室メンバーをフォローした。

王室メンバーの誰もが差別主義者ではないと信じているモルガン氏の意見は、これまで筆者が話を聞いてきた複数のイギリス人の意見と重なる。もっと多くの人に話を聞くと異なる印象もあるのかもしれないが、実際に話を聞いてみて、多くのイギリス人は英王室を敬愛し支持し、アメリカに渡ったハリー王子夫妻を好意的に思っていないことを実感する。

王室のないアメリカでの意見は分かれるが、若年層はハリー王子夫妻を歓迎し、年配者は王室に楯突いたハリー王子夫妻を非難する傾向があるように感じる。またこの騒動に興味のあるアメリカ人は圧倒的に女性が多いというのも特徴だ。

今回2人の王室メンバーの名が明らかになったが、だからと言ってその2人が人種差別主義者と決めつけるのは時期尚早だし、注意が必要だ。なぜなら問題となっている事案はメーガン夫人、つまり「一方」からのものだから。また、コンテキスト(文脈)を含まなければ、切り取り報道のように本来の意図と違った意味で捉えられたり誤解を生んだりすることはある。筆者はこのウィンフリー氏のインタビューを観た時、眉唾ものだと感じずにはいられなかった。王室メンバーが差別的な意味で発言するなんてことは信じがたいからだ。結局のところ、このような擦った揉んだの事案は当事者しかわからないが、おそらく王室は今後も沈黙を貫くだろう。となると真相は藪の中、か?!

この騒動について、人々はモルガン氏同様に考えることはあるようで、SNSや投稿サイトなどでさまざまな意見が飛び交っている。筆者の周りでも以下のようなコメントが聞こえてきた。

ニューヨーク在住歴20年以上のイギリス出身の白人女性は、メーガン夫人におかんむりだ。

「被害妄想が大きすぎる。ベイビーの肌や髪の毛などについてのこのような会話なんて、異人種間結婚では妊娠中に普通にあることよ。うちの親戚の間でもあったわよ。彼女に強い被害者意識がある限り、どんな会話も『人種差別問題』と紐付けられるのだと思う」

ある黒人の男性は、これらの騒動について「まったく興味ない」と即答した。ただ肌の色について異人種が言及する際は「細心の注意が必要」ということだ。

「ヘンリー(ハリー王子)は昔はやんちゃな男の子で、イギリスでは愛されキャラだったんですよ」。そう話すのはイギリス在住歴が長く、現在ニューヨークに住む日本人女性だ。イギリス人男性と国際結婚した自身の経験と照らし合わせる。

「娘がいますが、妊娠中に私の両親が(子どもがハーフということで)『どんな赤ちゃんが生まれてくるかな?』なんていう会話は普通にありました」「どのような赤ちゃんが孫として生まれてくるのか祖父母として関心があって当然。それを人種差別だなんて思ったこともないです」

以前より、チャールズ国王が言ったのではないかという噂を耳にしたことがあるというアメリカ人女性は、このように言った。

「状況の善悪はその場にいないとわからない。だけれど、問題はペラペラ話すことなのよ。問題がない家族なんてない。どんな家庭でも問題があるものでしょう?それをいちいちメディアで話すってどうなの?」

(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、著名ミュージシャンのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をニューヨークに移す。出版社のシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材し、日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。

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