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【緑町生駒】東京錦糸町で100年以上続くのれん分け町中華”生駒軒”の歴史を繋ぐ

町乃華菜子町中華愛好家

緑町生駒』は錦糸町駅から徒歩13分ほどの場所に店を構える東京都墨田区にある町中華。2023年3月に現在の場所にリニューアルオープンし一年以上が過ぎた。予約が困難な人気店となった現在も、以前と変わらず地域に密着した常連客に愛される店を守りつつ、常に新しいメニューを考案し進化し続けている。そんな緑町生駒のルーツは、日本でのれん分け制度を始めた”生駒軒”にあった。

2023年リニューアルオープンの記事はこちら

のれん分け制度を始めた町中華

”生駒軒”は大正6年、長野県から上京した児玉彦治氏が東京入谷に児玉製麵所、麻布に中華そば屋を開業したのが始まりだった。太平洋戦争で休業を余儀なくされたが、戦後に後継者の児玉武一氏によって再建された。焼け野原となった東京の街を見て『人々にゆたかな食生活を』をスローガンに戦後の復興を誓った。昭和26年、戦後の日暮里に1号店(現在は閉店)を開店させ、一杯30~40円の”中華そば”から新たな歴史が始まった。

現在の緑町生駒のラーメン580円
現在の緑町生駒のラーメン580円

昭和28年に人形町、昭和30年に蔵前にと店を増やしていった。昭和34年には、のれん分け制度”生駒会”を結成し制度を整えていった。

”生駒軒”は製麵所が始まりだった

児玉製麵所から従業員が独立の際に見習いをさせるために店を出したのがのれん分けの始まりだった。多い時で150以上の店があったが、現在は30店ほどになったと話す"緑町生駒"の初代小池光男さん。16歳で蔵前店、18歳で人形町の店に入り修行した経歴を持つ。厳しい修業時代は、何度も田舎の長野に帰りたくなったこともあったそうだ。"生駒会"では28歳まで務め上げた者にのれん分けを許される。28歳の独立を目指し、厳しい修業に耐え忍んで腕を磨き、念願の昭和49年に自分の店を構えることができた。緑町生駒は今年で51年目になり、親子三代で食事を楽しみに来る常連客もいる店になった。

児玉製麵所は平成30年に廃業している。

現在は中華好きにはお馴染みで定評のある製麺所”浅草開化楼”の細麺の中華麵を使用した中華そばを提供している。"生駒軒"の中華そばの定義に決まりはなく、のれん分けした店それぞれ特徴が異なる。緑町生駒では豚骨や鶏ガラがベースの肉の旨みの詰まったスープに、チャーシューにメンマ、ネギ、ワカメをのせたラーメンを580円と驚きの価格で提供している。他の料理に注目しがちだが、このスープの旨さが他の料理全てに結びつくのだと思う。『ぜひ味わって欲しい』と人に教えたくなる美味しいラーメンだと思う。

3度目のリニューアルオープン

2023年度のリニューアルは3度目。立ち退きがきっかけに歩いて数分の場所にオープンした。町中華が消えつつあるのは後継者不足だけでなく、再開発などで立ち退きをきっかけで閉業する店が多い。緑町生駒では息子の秀弘さんが二代目で跡を継ぐ。

創業からの名入れ皿
創業からの名入れ皿

大学生の頃からアルバイトで店を手伝い、父の職人としての背中を近くで見てきた。店を継ぐ覚悟は10代の頃からあった。一度はスポーツ用品を扱う小売業で勤めたそうだが、3年で店に戻ると父と約束をしていた。社会に出て勉強した方がいいと光雄さんの親心からのススメだった。仕事の都合で店に戻ったのは4年後になったが、それ以来は親子二代で店を守ってきた。他の生駒軒で後継者のいない店もあるが、光雄さんの先輩にあたる秋葉原の店など跡継ぎがいる店も存在する。

看板メニューの排骨カレーチャーハン

毎日40枚以上仕込む"排骨"(パーコー)は人気メニュー。スパイスとタレに漬け込んだ豚肉を揚げた"排骨"をカレーチャーハンにのせた排骨カレーチャーハンは、光雄さんが賄い料理として考案した。それが定着しランチで一番よく出る看板メニューになった。サクサクのスパイスが香る排骨にふんわりと炒められたチャーハン、サラっとしたカレーが相まってとても美味しい。

排骨カレーチャーハン1,050円
排骨カレーチャーハン1,050円

二代目考案の夜限定メニュー

創業からのメニューや味を守りながら、二代目秀弘さんが考案した限定メニュー目当てのお客も多い。旬の食材や自ら食べ歩いて刺激を受けた味を、生駒流にアレンジした創作料理が人気を集めている。限定の予定だった料理も、評判がよく要望の多いものは止められず、始めた当初の倍にまで増えたそうだ。

夜の限定メニュー
夜の限定メニュー

丸ごと美味しい徳大のエビマヨ

"ソフトシェル海老ガリチリ海老マヨ"は頭から丸ごと美味しい徳大の海老マヨ。食べ応えのある大きなエビマヨだ。スパイシーなチリ味のチップが振りかけられたお酒が進む料理。(お酒は二十歳になってから)海老の数は人数に応じて相談にのってもらえる。町中華らしい心遣いを感じる。

ソフトシェル海老ガリチリエビマヨ1,900
ソフトシェル海老ガリチリエビマヨ1,900

夜の看板料理の一つ

"皿しゅうまい"も夜限定の看板料理の一つ。評判を呼んで定番になりつつある料理だ。肉しゅうまいに加え、新たに海老皿しゅうまいもメニューに加わった。ジュワッと肉汁溢れ出すしゅうまいに。タレをたっぷりとかけて食べるリピート客が続出の一品。

皿しゅうまい1,200円
皿しゅうまい1,200円

二代目イチオシの新メニュー

常に旬の食材を使い、新メニューを更新している。"汁なしラージャンにらそば"はラージャン(辛味噌)を使ったまぜそば。生のニラと開華楼の麺の美味しさを生かした、二代目イチオシの新メニュー

汁なしラージャンにらそば1,200円
汁なしラージャンにらそば1,200円

夜は予約必須

昼はランチメニューを提供している。夜は予約必須の店となった。しばらく先まで予約が入っていそうだ。まずは昼のランチから気軽に立ち寄るのもいいと思う。

東京錦糸町で100年以上続くのれん分け町中華”生駒軒”の歴史を繋ぐ”緑町生駒”。のれん分けした店は他にも存在するが、後継者のいる店は少ない。創業からの味を守りながら新たな挑戦を続ける、"新しいカタチ"の町中華を訪れてぜひ体験してほしい。また、近くに生駒軒の暖簾を見かけることがあれば創業者の『人々にゆたかな食生活を』の思いを感じ、暖簾をくぐってみてはいかがだろうか。

【店舗情報】
緑町生駒
東京都墨田区緑4丁目6−1 パークホームズ錦糸町エアヴェール 1F
営業時間 11:30〜13:00 18:00〜21:00
水曜日定休(火曜と土曜は夜営業のみ)
電話 03-3633-4089(夜のみ予約可)
営業情報 Instagram

町中華愛好家

町中華や中華メニューを扱う食堂での食事を楽しむ事に生きがいを感じた体験記。東京近郊の人気店から、常連客だけが通う隠れた名店を巡る。味わいのある町中華体験を求めて街歩きをする日々。日本の食文化である日式中華の町中華の魅力を伝えて行きたい。

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