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東京で”チャーハンが人気”の町中華のラーメンがうまい!先代から受け継ぐこだわりの味【神楽坂龍朋】

町乃華菜子町中華愛好家

東京で”チャーハンが人気"の町中華と言えば必ず名前が挙がる店がある。それが神楽坂に店を構える昭和53年創業の『龍朋』だ。誰が決めたのか”東京三大チャーハン”の名店の一つとして数えられているのを目にしたことがある。確かに龍朋のチャーハンはその評判の通り、美味しいのは事実である。

絶大な支持があるチャーハン

絶大な支持があるチャーハンはいたってシンプル。具材には卵にネギとチャーシュー、味付けに塩胡椒や醤油を使った王道のチャーハンだ。このチャーハンを求めて、全国から町中華ファンが店に足を運ぶ。週末ともなると300食以上が飛ぶように売れ、店の前には行列ができる。

チャーハン並 900円
チャーハン並 900円

この並んでも食べたい龍朋のチャーハンの旨さの秘訣を、二代目の松﨑陽子さんにお話しを伺ったが、特別な作り方ではないと話す。詳しく話を聞き進めていくうちに、丁寧に作られたチャーハンだということがわかった。

知られざる旨さの秘訣

龍朋のチャーハンは実に丁寧に作られている。ラードはネギと生姜で香り付けをしたものを使用している。塩は粗塩を鍋で炒って使っている。ゴロゴロとたっぷりと入ったチャーシューは、豚肩ロース肉を毎日40kgは仕込んでいるそうだ。あまりにも有名なチャーハンだが、なぜ旨いのかは謎に包まれていた。その丁寧な工程こそが知られざる旨さの秘訣だと思う。

チャーハン大盛り 1,200円
チャーハン大盛り 1,200円

チャーハン大盛りは並盛りの2倍近いボリュームがある。この盛りの良さも魅力の一つ。
注文が多いチャーハンは、常に同じ鍋で作り続けていてるため、出来立てを素早く提供している。

先代から受け継ぐこだわりのスープ

先代の松﨑隆明さんがレシピを残したスープはチャーハンにも添えられている。この受け継いだ中華スープの味こそが店一番のこだわりだ。東京の町中華のラーメンと言えば、鶏ガラをベースにした醬油スープを連想するのが一般的だ。龍朋のスープは乳白色のいわゆる白湯スープ。材料に豚骨や鶏ガラ、魚介を使用している。さらに大豆を使用することによって、甘さととろみが加わるという。

チャーハンのセットのスープ
チャーハンのセットのスープ

この唯一無二のスープと、熱々のチャーハンをいっしょに食べることが支持されている理由の一つでもあると思う。
料理はどうしても多少のブレが生じることがある。料理人は6人いるし、担当の料理が決まっているわけではない。中華料理の肝であるスープを完璧に仕上げることが、店の料理を一定においしく保つ秘訣だと先代から伝えられている。

龍朋の原点を探る

先代の松﨑隆明さんは、富山県の雪深い五箇山地域の出身。高校卒業を機に料理人を目指し上京した。田舎を出て町中華で修行をする話はよく聞く話だ。隆明さんもその一人で昭和12年創業の『新三陽白山本店』で10年ほど修行を積んだ。これが龍朋の原点となった。

チャーシューメン 1,100円
チャーシューメン 1,100円

後に昭和51年に陽子さんと夫婦で、板橋区に店を構えた。その2年後、より良い立地の場所を探して神楽坂に店を移した。現在のテーブル席のみの客席とは異なり、小上がり席もあったそうだ。修行先の新三陽のようにメニュー数も多い中華料理店だった。修行先との大きな違いは独自の中華スープを研究し、他にはない龍朋の味を完成させた。独立した中華料理人が修行先のレシピのスープを使うことが多いが、隆明さんは常に独創的な発想で料理を研究し続けていたのだ。

スープに合わせたこだわりの特注麺

ラーメンはスープに合わせて作られたこだわりの中華麵を使用している。文京区本郷で中華麺屋も営む製麺所”助六”の特注麵。弾力があって伸びにくいやや太めの中細麵は、龍朋のラーメンのために作られている。

チャーシューメン 1,100円
チャーシューメン 1,100円

餃子がメニューにない理由

平成元年、中華麵を主とするスタイルにメニューを切り替えた。その際に100種ほどあった料理を30種ほどに絞った。龍朋で餃子がメニューにない理由はそこにあった。以前は餃子や焼売なども提供していた。店の効率を高めて、仕込みの負担を軽減するために現在の『中華麵店龍朋』に方向転換した。昼時は回転も早く、多くの人に料理を味わってもらえるようになったのだ。
近隣で働く人々にいつでも利用して欲しいと、通し営業を続けている。平成29年に隆明さんが逝去した後も、店への愛情とお客への想いを受け継いでいる。

センスが光るモダンな店内

店内はモダンで古さも新しさも感じるセンスの良さが光る。先代はアートを愛していた。そして若手の作家を応援していた。龍朋のメニュー書きはすべて店にも通う”書楽家”の安田有吾氏の作品だ。

壁紙はよく見ると柏の葉を使った珍しいデザイン。町中華というと赤いテーブルを連想すると思うが、龍朋の店内はお洒落な神楽坂の街によく似合う。 

店内の壁紙
店内の壁紙

コク深い八丁味噌を使った回鍋肉

チャーハンのおかずに注文するお客もいる”回鍋肉”も人気メニュー。タレに八丁味噌を使い甘辛くコク深い味。白飯にもお酒にも合う箸が止まらない逸品だ。

回鍋肉 950円(お酒は二十歳になってから)
回鍋肉 950円(お酒は二十歳になってから)

独創的な麵料理

他の中華料理店では見かけない麺料理がある。”トマトたまごめん”は青菜とトマトをふんわりと玉子でとじた餡がたっぷりのっている。フレッシュなトマトがさっぱりとして体にも優しく、女性にもおすすめのラーメンだ。鶏チャーシューにレタスがのった”東京ラーメン”独創的な麺料理。先代が考案した料理は創意工夫が施され、一品の注文でも満足するものばかり。

トマトたまごめん 900円(平日限定)
トマトたまごめん 900円(平日限定)

夏季限定の冷やし中華

個性的な盛り付けが特徴の”冷やし中華”は夏季限定。幅広い帯状の玉子と細切りにしたきゅうりとチャーシューのシンプルな具材。スープは酸味と甘さを抑えたすっきりと優しい味わい。ほんのりとごま油と生姜が香る。辛子は卓上調味料理に設置しているので好みで味変も楽しめる。

冷やし中華 1,100円
冷やし中華 1,100円

店の営業時間は長く、いつもお客で賑わっている。料理人は朝は5時を過ぎたころから仕込みを始めているそうだ。
これほどの人気店を守り続ける事は並大抵のことではない。二代目の陽子さんはとても気さくで明るく素敵な女将さん。すでに店に入っている三代目のご夫婦と、従業員の方々とで店を盛り上げている。その人柄も店の雰囲気に表れ、魅力となっている。

龍朋は都会の中にありながらも、町中華らしい温かさがある。これほどまでに有名になった店だが、先代から受け継いだ想いと唯一無二のスープを変わらず大事にしている。ぜひ店を訪れて、こだわりのスープで作ったラーメンを味わい体験して欲しい。

【店舗情報】
中華麺店 龍朋
東京都新宿区矢来町123番地
03-3267-6917
営業時間 11:00〜22:00
日曜日定休(祝日の月曜日もお休み)

町中華愛好家

味わいある 『町中華』や食堂を巡る体験記。東京近郊の人気店から、常連客が通う隠れた名店を巡る。”日式中華”の文化や魅力、店主の想いを伝えて行きたい。Instagramで町中華での食事の記録を発信中。

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