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ドラフト外で入団し、30歳目前にメジャーデビューの投手が初先発でドジャース相手に5回1失点

宇根夏樹ベースボール・ライター
スペンサー・ビベンス(サンフランシスコ・ジャイアンツ)Jun 30, 2024(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 6月30日、サンフランシスコ・ジャイアンツは、10対4でロサンゼルス・ドジャースを下した。

 この日のヒーローを1人挙げるなら、ルーキーのスペンサー・ビベンスだろう。初めてメジャーリーグの先発マウンドに上がり、5イニングを投げ、クリス・テイラーに打たれたホームランによる1失点に抑えた。

 ビベンスは、プロスペクトではない。高校時代も大学時代もドラフトにかかることなく、2022年5月にジャイアンツと契約を交わした。この時点の年齢は27歳。その前に、フランスのリーグとアメリカの独立リーグで投げている。

 メジャーデビューは、半月前の6月16日だ。そこから、先発初登板までに、リリーフとして5試合に登板し、9.0イニングで防御率3.00を記録した。11三振を奪ったものの、3本のホームランを喫している。5登板目の翌日に、30歳の誕生日を迎えた。

 ボブ・メルビン監督は、ビベンスに5イニングを投げさせるのではなく、もっと早い交代を想定していたのではないだろうか。今シーズンは、昇格前も先発登板はなく、AAAとメジャーリーグのどちらでも、3イニングが最長だった。AAAでは、21登板の41.2イニングで防御率2.81を記録していた。

 また、6月30日は、その前の登板から数えて中2日。試合前にジャイアンツがリリースしたゲーム・ノーツには、「2試合連続のブルペン・ゲーム、最初の1イニングを無失点で終えた左投手のエリック・ミラーに続く」と記してあった。

 3月にMLB.comが掲載したマリア・ガーダッドの記事によると、2021年のオフに筋トレに励んで体重を増やした結果、速球の球速が95マイルまでアップし、ジャイアンツの目に留まったという。

 スタットキャストは、6月30日にビベンスが投げた60球を、シンカーが28球、スウィーパーが16球、チェンジアップが9球、カッターが4球、4シームは3球としている。大谷翔平から奪った2三振――この日の奪三振は3――の3ストライク目は、それぞれ、95.0マイルの4シームと82.2マイルのスウィーパーを空振りさせた。

 まだ、先発1登板に過ぎないものの、ビベンスのシンデレラ・ストーリーは、続いていくかもしれない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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