五輪を制した入江聖奈「まだボクシングを頑張ります」新たな目標とは
3日、東京五輪ボクシング女子フェザー級決勝戦が行われ、入江聖奈(20)がネスティー・ペテシオ(比)と戦った。
試合の展開
ペテシオは2019年AIBA女子世界ボクシング選手権で金メダルを獲得した選手だ。
左右にスイッチしながら、変則的かつパワフルなボクシングで勝ち上がってきた。
対する入江は五輪初出場。試合で着実に成長し、決勝の舞台まで辿り着いた。
序盤は入江のジャブが効果的で、ペテシオの打ち終わりにパンチを打ち込みペースを握った。
しかし、2ラウンド目はペテシオの猛攻におされ、ポイントを取られてしまう。
2ラウンド終了時の採点は互角で、勝負は最終ラウンドへ。
入江は最後まで積極的に攻め、ボディを交えながらポイントを取るが、ペテシオも負けじとパンチを返す。
互角の戦いを見せ、最後に入江が攻勢と見せ場をつくり試合終了。
判定は5-0、入江が日本女子ボクシング史上初の金メダルを獲得した。
試合のポイント
勝敗の決め手になったのは入江の左ジャブだ。
試合前のインタビューでも「左を当てて支配していきたい」と話していたように、入江はジャブが得意なボクサーだ。
相手の打ち終わりや、的確なタイミングでの左ジャブで着実にポイントを稼いだ。
近距離ではボディを打ち相手の勢いを止め、遠距離ではカウンターを決めてポイントを積み重ねるなどジャブ以外のパンチも多彩だ。
試合後に入江は「ほっぺを何回もつねった。夢みたい。13年間を出せるように頑張った」と話していた。
今回が五輪初出場ながら確実に成長し、ボクシング女子日本代表の愛称「ブルーローズ・ジャパン」の花言葉通り、見事に夢を叶えた。
入江の生い立ち
入江がボクシングを始めたきっかけは小学校まで遡る。
ボクシング漫画『がんばれ元気』を読んでボクシングに興味を持ったが、初めは両親にも言い出せず、こっそりと主人公を真似てパンチの練習をしていた。
「一人で練習していた時期があったからこそ、始めてからは思いっきりボクシングにのめり込めました」
ボクシングへの情熱が我慢できなくなり、両親に相談したが、女の子だからと最初は反対されていたようだ。
しかし、諦めきれず両親の反対を説き伏せ、小学2年時に山陰地方の名門・シュガーナックルボクシングジムで本格的にボクシングをスタートした。
その後、高校生以下が出場するアンダージュニア大会で活躍し、才能を開花させた。
「周りの期待があって後に引けなくなった。挫折も経験したが、家族の応援もあり五輪の舞台に辿り着いた。五輪の金メダルは支えてくれた両親に見せてあげたいです」
今後の入江聖奈
一躍時の人となった入江、プライベートはユニークだ。
カエルが非常に好きで、愛用しているのはカエルのバックとマスク。
練習が休みの日は、公園にオタマジャクシを見にいくのが楽しみのようだ。
大好きなカエルを飼いたいが、遠征や合宿続きなので難しいと話していた。
試合後の記者会見で「次の世界選手権でも金を取ります。有終の美で終わりたいです。大学いっぱいでボクシングは辞めるつもりです」との話もあった。
まだ大学3年生、卒業までは大好きなボクシングを全うしてほしい。
年内には世界選手権もあり、日本選手で世界選手権を制したボクサーは、男女ともにまだいない。
日本選手初となるタイトル獲得に期待が高まる。
「金をとったことでメディアにも報じてもらって、女子ボクシングが盛り上がってくれたら嬉しい」
ロンドンから正式採用された女子ボクシングだが、まだ世間的な認知は低い。
入江は「日本は舐められているので、並木さんとメダルを取ってドヤ顔したい(笑)」と話していた。
同じ日本代表フライ級・並木月海(22)も準決勝まで進んでいる。
入江の金メダルの功績は大きい。明るいキャラクターなので、日本女子ボクシング初の金メダリストとして競技の発展にぜひ関わってほしい。