コロナ禍で中古マンション価格が大きく上がった東京都内の町100、多いのは都心?郊外?
東京都内で、コロナ禍により中古マンション価格が大きく上がった場所はどこだろう。
郊外にあたる東京市部か、それとも都心部なのか……興味深い事実を明らかにするデータが6月6日に発表された。
「マンションレビュー」を運営するワンノブアカインド社が発表した「コロナ禍での東京 中古マンション相場推移」で、その内容は2つに分かれる。
まず、コロナ禍の2021年において、東京都内で中古マンションの推定価格が高い町名100を価格が高い順に発表。それとは別に、コロナ禍が起きる前の2019年と比べ、2021年に中古マンション価格が大きく上昇した町名100の上昇率ランキングも発表された。
2つのうち、「2021年の中古マンション推定価格が高い場所」のほうは、上位が想像しやすい。それは、間違いなく都心だろう。
実際、同調査で中古マンションの推定価格が1億円を超えた町名は30あったのだが、それらはすべて都心の千代田区、中央区、港区、渋谷区のものだった。
100位までの町名のうち78が都心5区(千代田・中央・港・渋谷・新宿)のものだったことも含め、都心の強さを証明したかっこうだ。
それに対して、想像しにくいのが、コロナ禍で中古マンション価格が大きく上がったのはどこか、だ。
やはり都心5区なのか?それとも、上昇した「率」でいえば、郊外の東京市部か?はたまた、23区内のうち都心5区を除いた18区か?
興味深い調査結果をみてゆきたい。
上昇率100位以内のうち都心5区は33、では郊外は?
2019年に対し、2021年の中古マンション価格が大きく上がった町名100のうち、都心5区に位置するのは33。これに対し、東京市部の町はいくつ入っているのか。数えてみると、その数は12だった。
しかも、上位30位まででみると、都心5区の町が14ランクインしているのに対し、東京市部の町は3つだけ。コロナ禍で中古マンション価格が上がったと推定される郊外エリアは、それほど多くなかったわけだ。
そして、都心5区よりも多くの町がランクインしたのは23区から都心5区を除いた18区。都心5区こそが都心とすれば、準都心と位置づけられる場所だ。
価格上昇100地点のうち55地点が準都心。つまり、東京都内で、コロナ禍の期間、中古マンション価格が大きく上昇したのは、都心でもなく、郊外でもない、準都心部だったわけだ。
コロナ禍で、「これからは、郊外だ」といわれても、やはり不便な場所には行きたくない。かといって、便利な都心部はマンション価格が上がり、買いたくても手が出ない。
結局、2つの中間となる、23区内でも山手線外側エリアを中心とする準都心部が落としどころとなり、購入者が増加。その結果、準都心部でマンション価格が上がった場所が多かった、ということだろう。
では、具体的にどんな町でマンション需要が増し、価格が上昇したのか。価格上昇率が高かった100地点のうち、上位に位置する30の町名を紹介したい。
上昇率1位はバリバリの都心だが、2位は……
コロナ禍の前と比べて、中古マンション価格が最も大きく上昇した町は渋谷区の宇田川町。渋谷駅前のスクランブル交差点を渡り、渋谷センター街周辺から渋谷公会堂あたりまでのエリアだ。
といっても、渋谷区宇田川町には商業施設が集まり、分譲マンションは少ない。そのなか、2020年に「パークコート渋谷 ザ タワー」が完成した。渋谷区役所と渋谷公会堂の建て替えに伴って誕生した定期借地権付きのマンションだ。
渋谷区宇田川町は、巨大な超高層マンションの出現により、中古マンションの推定価格が60%近く上昇したと考えられる。
上昇率第2位の小平市鈴木町は、郊外の町だ。
それは、西武新宿線花小金井駅徒歩圏の住宅エリア。西武新宿線のほか、JR中央線の武蔵小金井駅に向かうバスも利用しやすいため、「中央線沿線に準ずる暮らしができて、割安」な点で人気がある場所だ。
実際、2019年の70平米推定価格が2575万円。割安な印象があったため、コロナ禍で郊外に注目する人が増えるなか、47%もの上昇率になったと考えられる。
ただし、郊外エリアで上昇率の高さ10位以内に入ったのは、小平市鈴木町だけ。他は都心エリアが中心となる。
都心エリアで注目したいのは、9位の港区海岸だ。
港区のなかで、唯一海に面した場所となり、近年、日の出桟橋近くで新築マンションが複数分譲された。首都高速が近い場所だったが、東京湾の光景が目の前に広がるなど魅力もあった。その結果、評価が高まり、中古価格が急上昇したのだろう。
10位の足立区南花畑は、「それ、どこ?」という人が多いだろう。最寄り駅はつくばエクスプレスの六町駅で、首都高速の三郷線が近い場所……「ろくちょう」「みさと」という読み方も分からない人が多いのではないか。目立たない場所だからこそ、中古マンション価格が抑えられていた。その場所が、コロナ禍で注目されるようになり、価格上昇が起きたと考えられる。
11位から20位で目立つ、中古マンションが割安な場所
コロナ禍の前と比べて、中古マンション価格が最も大きく上昇した町の11位から20位にも郊外の町名は少ない。福生市武蔵野台が11位にランクインしているだけだ。
都心から向かった場合、拝島駅からJR八高線でひと駅めとなる東福生駅周辺の住宅地である。ちなみに、東福生駅から東京駅までの距離・所要時間を調べてみると、JRの八高線・青梅線・中央線の経路で約48キロ・1時間20分ほど。毎日の通勤はつらいが、テレワークで出社する日が少ない、という人であれば、中古マンション価格の安さがうれしい場所になるだろう。
実際、2019年ならば70平米の中古マンションが1215万円で購入できた。それが、2021年には1591万円に上がった。が、それでもまだ安い。コロナ禍で、注目度を高めた東京都郊外エリアの代表格か。
11位から20位までには、中央区月島や台東区蔵前、足立区東綾瀬といった下町エリアがランクインしていること、世田谷区内の2地区がランクインしていることも特徴。いずれも便利なのに価格が割安であったことが価格上昇の理由だろう。
品川区小山は、東急目黒線武蔵小山駅を中心にした場所。武蔵小山駅周辺では再開発が進み、複数の超高層マンションが出現している。それらにより中古マンション価格相場が上昇したわけだ。
21位から30位でも目立つ、中古マンションが安い穴場
これまで中古マンション価格相場が抑えられていた場所が価格上昇の上位にランクインするーーこの傾向は、コロナ禍の前と比べて中古マンション価格が最も大きく上昇した町の21位から30位にもみられる。
21位の新宿区若葉は、四ツ谷駅に近い住宅エリアで、鯛焼きの有名店があることでご存じの方も多いだろう。
22位の渋谷区神宮前は、表参道の両脇に位置するが、意外なほど一戸建てが多い場所。超高層マンションはもちろん、大規模マンションもなく、マンションは古く、小規模のものが中心となる。だから、中古価格が抑えられていたのだが、再評価の動きが出ている。
25位の目黒区鷹番は、東急東横線の学芸大学駅を中心とする場所だが、一部目黒通りに近いエリアも含まれる。この目黒通り沿いエリアはマンション価格が抑えられているのだが、近年、その人気が上昇している。
理由は、目黒通りのバス路線が便利であるからだ。本数が多いし、通勤時間帯はバス専用路線が設定されるため、運行がスムーズ。23区内の隠れた人気スポットになっている。中古価格上昇は、その影響もありそうだ。
以上、コロナ禍で中古マンション価格が大きく上がった30地点には、都心と準都心の町名が多かった。
やはり、コロナ禍にあっても、都心への通勤便利な場所が強いということだろう。
その通勤便利な都心・準都心部では、これまで中古マンション価格が抑えられていた地点で価格の急上昇が起きている。
つまり、マイホームを購入しようとする人たちが、安く中古マンションを購入できる“穴場”を探している様子が彷彿とされるのである。