オートバイのあれこれ『気分はマモラ?それともウンチーニ?RG500Γ』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今日は『』をテーマにお話ししようと思います。
「レーサーレプリカ」。
このワードを聞いてまず思い起こすのは、『NSR250R』や『TZR250』といった2スト250ccモデルか、『VFR400R』や『FZ400R』等の4スト400ccモデルなのではないでしょうか。
ただ、レーサーレプリカ群の中には、WGP(世界グランプリ)の最高峰クラス・GP500のマシンに倣った500ccのモデルもわずかながら存在していました。
今回はそのうちの一つ、スズキの『RG500ガンマ』をピックアップしましょう。
500ccのレプリカモデル(GP500レプリカ)カテゴリーには、今回取り上げる500ガンマ以外に、ヤマハ『RZV500R』とホンダ『NS400R』がありました。
RZVもNSも、GP500マシン由来のエッセンスがふんだんに注ぎ込まれたプレミアムなオートバイだったわけですが、結論から言うと、最も“レプリカ度”が高かった(=最もGPマシンに近似していた)のは、500ガンマでした。
500ガンマのレプリカ度の高さを裏付けるイチバンのポイントが、エンジン。
500ガンマのエンジンは、スズキの1983年型ワークスマシン『RGΓ500(XR45)』のエンジンがそのままコピーされたような設計となっていました。
2スト水冷スクエア4気筒という形式が一緒なのは言うまでもなく、ボア×ストロークといった数値の設定までXR45とほぼ同じだったのです。
参考までに、2車のボア×ストロークの値を記しておくと、
XR45:ボア56 × ストローク50(mm)
500ガンマ:ボア56 × ストローク50.6(mm)
となっていました。
RZVやNSは、レプリカと謳いながらも実際のワークスマシンのエンジンと異なっていた箇所が少なくなく、この点で500ガンマは“レプリカ”としては一歩優位だったといえるかもしれません。
また、XR45で実験的に使われた排気デバイス『SAEC』(SUZUKI Automatic Exhaust Control)を装備していたこともポイントです。
このSAECを備えたことで、500ガンマはクラス最強の95ps(国内仕様は64ps)を発揮しながら頼りがいのある低速トルクも確保していました。
(ちなみに、RZV500Rのピークパワーは88ps、NS400Rは59psでした)
フレームは、当時のスズキの最新作『MR-ALBOX』(マルチリブ・アルボックス)を採用。
このフレームは『RG250ガンマ』や『GSX-R750』にも用いられていましたが、500ガンマへ使うにあたって、スズキの開発陣は見た目の美しさにも磨きをかけます。
まず、アルミフレームのスマートな造形美が溶接痕で台無しにならないよう溶接箇所を減らし、さらにステアリングヘッドまわりの成形には手間のかかる砂型鋳造を用いたのでした。
その他、『フルフローターサスペンション』など、要所要所にGPマシンの技術が落とし込まれ、500ガンマはRZV、NSを凌駕するレプリカ度の高さとそれを裏切らない性能の高さを獲得。
80年代のスズキというと、『GSX1100Sカタナ』に始まり、『RG250ガンマ』『GSX-R(400)』『GSX-R750』がやはり主役だったのでしょうが、スズキの“力の入れ具合”という点においては、この500ガンマも全然負けてはいなかったのです。
画像引用元:スズキ/ヤマハ発動機/本田技研工業