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【災害救助犬】能登半島地震で大活躍 有事のときにワンコが発揮する2つの能力

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
認定NPO法人災害救助犬静岡@drdshizuokaさんより

1月1日に能登半島地震発生で多数の行方不明者が出ました。その捜索のために、多くの災害救助犬が全国各地から被災現場に派遣されました。

その中には、自衛隊や警察庁に所属していない多くの災害救助犬団体から派遣された災害救助犬たちとハンドラーの方々がいました。その災害救助犬たちは、現地で懸命な捜索救助活動を行いました。

認定NPO法人災害救助犬静岡(@drdshizuoka)さんは、災害救助犬の様子をX(旧Twitter)に以下のようにポストしました。

「令和6年能登半島地震発災を受け、災害救助犬静岡は昨夜未明、6名4頭で能登へ向けて静岡を出発しました。現地では静岡県警と同行して活動を行います」

今回は、Xで話題になった認定NPO法人災害救助犬静岡さんから、災害救助犬の2つの役割と、その現状を見ていきましょう。

災害救助犬にはウェルシュコーギーも活躍

認定NPO法人災害救助犬静岡@drdshizuokaさんより

災害救助犬の一つ目の役割は、当然ですが行方不明者の捜索です。

犬好きな人は、災害救助犬がいることを知っている人もいると思いますが、あまり詳しく知らない人も多いと思います。一般的にテレビのニュース映像で、警察官や自衛隊などと一緒に活動している犬を観た時、シェパードなどが多いと思います。

その一方で、認定NPO法人災害救助犬静岡さんで、活躍した犬はウェルシュコーギーとラブラドールレトリバーです。

ウェルシュコーギーは、このような現場で活躍することが珍しく思われるかもしれません。ウェルシュコーギーは、体高が約25~30cmで、体重は約7kg~15kgで、もともと牧羊犬で羊や牛を追うために開発されており、活発で頭がいいし、体高がラブラドールレトリバーより低いので、狭いところにも入っていきやすいのです。そのため、大型犬だけでなく、このようなウェルシュコーギーも災害現場に行くこともあります。

警察犬と災害救助犬はその役目が違うのです。それを見ていきましょう。

警察犬と災害救助犬の違い

認定NPO法人災害救助犬静岡@drdshizuokaさんより

警察犬は、犯人などを探す際に特定の臭いを追跡するのが目的です。

一方、災害救助犬はどこに誰がいるかわからない状況で、特定されていない人を探すのが目的です。つまり、がれきや雪崩、土砂などに生き埋めになった不明者の捜索をしています。そのうえ、災害救助犬の活動が難しい点は、周りに警察や自衛隊の人たちが数多くいますが、その人たちとは区別して探さなければいけないことです。

災害救助犬は、見えない場所から流れてくる「人の臭い(浮遊臭)」を追って行方不明者を探します。

捜索は通常、災害発生から5日~1週間ほど行われます。

懸命に捜索している様子をXで見て、心を打たされた人が多く打ち上の投稿は10万いいね(1月11日)があり、話題になっています。

災害時の救助犬の二つ目の役割

認定NPO法人災害救助犬静岡@drdshizuokaさんより
認定NPO法人災害救助犬静岡@drdshizuokaさんより

災害現場に入って捜索活動をしている人は、人命がかかっているので張り詰めた気持ちになっています。地震の威力脅威を感じているところに、このような災害救助犬がいることで、隊員さんの気持ちを癒やします。

そして、犬は人間より体温が高い(平熱は約38度)ので、災害救助犬に触れることで、心も体も温まるのです(もちろん、犬が苦手な隊員さんもいらっしゃると思いますが、その人には、救助犬たちは察して近づいていかないと思います)。

災害救助犬が抱える問題

「令和6年能登半島地震」の捜索救助にあたり、「救助犬が足りない」という声もあがっていたといいます。今回現地に派遣された救助犬団体のほとんどが、寄付や支援で活動を行うボランティアなのです。災害派遣出動時のガソリン代や高速道路代、捜索のための装備や日常の捜索救助訓練にかかる費用など、活動のための資金は決して小さくないと、まいどなニュースが報道しています。

Xで話題になった認定NPO法人災害救助犬静岡が寄附を募っています。サイトを見ると仕方がわかります。

災害救助犬は無事に帰還

認定NPO法人災害救助犬静岡@drdshizuokaさんより

まいどなニュースによりますと、認定NPO法人災害救助犬静岡さんから被災地に派遣されたのは、6歳になるウェルシュコーギーの女の子・エマちゃん、10歳になるチョコレート色のラブラドールレトリバーの女の子・結夏(ゆいか)ちゃん、7歳になるイエローカラーのラブラドールレトリバーの男の子・ウィルくん、9歳になるイエローラブの男の子・アドくんの計4頭と、ハンドラーさん6名だそうです。

災害救助犬もハンドラーの方も過酷な災害現場から無事に帰還することは大切なことです。災害救助犬は、知的な犬なのでつらい現場のときもあるので、いまは飼い主と一緒に過ごして肉体的精神的なストレス解消をしていただきたいです。

犬は、人が持っていない鋭い嗅覚や温かみを持っています。それで、このような有事のときに、行方不明者の捜索や人に癒やしを与えるなどの役に立っているのです。

今回のことでより多くの人に災害救助犬のすばらしさとボランティアで成り立っていることもあることを知ってもらって、有事に備えて災害救助犬が増え、そしてその子たちの環境がよりよくなりますように。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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