【ロードキル】猫が路上で死亡という闇 殺処分数だけでは測れない現実
最近、ロードキル(道路上で起こる野生動物などの死亡事故)が増えて問題になっています。WEB CARTOPは、高速道路でのロードキル発生件数は、2002年には約3万6,000件だったのに対し、2018年には約4万7,400件まで増え、一般道も合わせると1年間で最大34万頭が犠牲になっていると報告しています。
今回は、野生動物ではなく猫のロードキルについて焦点を当てて見ていきましょう。
なぜ、猫のロードキルか?
猫の殺処分数はここ10年間で減少傾向になっています。
具体的に見ますと、猫の殺処分数は、平成21年(2009年)度16万5,771匹、令和元年(2019年)度が2万1,107匹ですから、すいぶん減っています。それは、喜ばしいことです。まだまだ猫の殺処分数は多いです。
これで、猫の死亡数が減っていると単純にはいえないのです。
その理由は、野良猫はロードキルという交通事故である轢死(れきし)で命を落としていることがあるのです。
もちろん飼い猫も外に出していればロードキルに遭うのですが、多くは野良猫が交通事故で、路上で死亡しているのです。
推計の数字ですが、人と動物の共生センターによりますと、2019年に野外で死亡した猫の数について、推計で28万9,572匹※であったことを報告しています。
この年は、猫殺処分が2万1,107匹なので、約10倍以上の猫が、ロードキルで命を落としているのです。
※推計値の計算方法は、
人と動物の共生センターが質問を送り、その有効回答を得られた41都市の人口10万人あたり遺体回収数を求め、平均化し日本総人口(1億2,623万人)で換算したものです。
全国の猫のロードキルは、測定されていないので、あくまで推計値であり、そこまで高くない可能性があるかもしれません。しかし、多くの猫が路上で交通事故に遭っているのです。
なぜ、猫はロードキルに遭いやすいか?
猫は、車と交通事故に遭いやすい動物なのです。
それは、猫の生態が深く関わっています。
□猫は「薄明薄暮性」の動物
猫は、夜行性の動物と思われがちですが、薄明(明け方)と薄暮(日暮れ)の時間帯に、活発に行動する動物です。
猫が捕食するウサギ、ネズミなどがこの時間に活動するため、それに合わせて薄明薄暮に行動するようになったのです。
このため、通勤ラッシュ時の交通量が増加する時間帯に、薄明薄暮の時間帯になるので、猫は交通事故に遭いやすいのです。
□猫は狩猟本能から獲物を追いかける動物
猫は、夢中で獲物を追いかけていると、交通量が多い道路であっても車を気にせずに道路を渡ってしまいます。その上、猫は小さく車から見えにくいので、交通事故に遭ってしまうのです。
□猫はハイビームに恐怖
猫は人間にはないタペタム※2というものがあります。暗いところで狩りをするためにこのようなタペタムがあるのです。人間がものを見るのに必要な明るさの6分の1でも大丈夫といわれています。
そのため、猫はハイビームに驚き、恐怖で動けなくなってしまうこともあります。
猫は車が多く走っているところを生活圏内にしていると、ロードキルが増えてしまうのです。
※2タペタム
猫の目と人の目で異なる点のひとつが、網膜の後ろにタペタム(輝板)という反射板があることです。このタペタムは猫の目の中で光をたくさん反射させる鏡のような役割をしています
ロードキルは減らせるのか?
どのようにしたら、ロードキルを減らすことができるのでしょうか。
上のグラフや表は、名古屋市の例です。やはり野良猫の不妊去勢手術をするとロードキルも減っているようです。それに加えて、市民の猫の苦情件数も減少傾向にあります。
名古屋市では、TNR活動※3をしています。名古屋市内にいる野良猫にTNR活動を行う場合は、一律の金額で不妊去勢手術を行えるよう支援します。(実施者の自己負担額 避妊手術(めす)4,000円 去勢手術(おす)2,000円)
※3 TNR活動は、野良猫を捕獲(Trap)し、不妊去勢手術を実施(Neuter)したのちに元の場所に戻す(Return)活動のことです。
猫と人間が、共存できる世の中になることを切に望んでいます。
行政が行っている猫の殺処分数を知ることと合わせて猫のロードキルについて知っていると、野良猫の実際がわかります。
野良猫の不妊去勢手術の支援金は、税金なので、TNR活動は猫や市民のためにちゃんと役立っているのです。