Yahoo!ニュース

台風1号は5月以降の発生へ、年間の台風発生数への影響は?ラニーニャ現象が発生すると?

杉江勇次気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
雲の様子(ウェザーマップ)

おとなしい太平洋

5月1日21時の予想天気図(気象庁より)
5月1日21時の予想天気図(気象庁より)

5月に入ろうとしていますが、今年はまだ台風1号が発生していません。タイトル画像にある雲の様子をみると、フィリピンの南方海上、赤道付近に積乱雲が発生している様子がうかがえますが、すぐに熱帯低気圧にまとまる感じではなく、あす5月1日(水)午後9時の予想天気図をみても、太平洋には目立った擾乱(じょうらん)は発生していない予想です。

このまま台風1号が発生することなく5月を迎えそうですが、そこで台風1号の発生が5月以降へずれ込んだ年の年間の台風発生数にはどのような傾向があるのか簡単に調べてみました。

台風1号の遅い発生に関して

台風1号の遅い発生順位と台風発生数(筆者作成)
台風1号の遅い発生順位と台風発生数(筆者作成)

台風の発生数の統計があるのは、1951年から昨年(2023年)までの73年間で、これを平均すると台風1号が発生するのは3月上旬から中旬頃になります。では過去73年間で、台風1号の遅い発生順位はどうなのか、それを調べたものが上図となります。

7月に入ってから台風1号が発生した年は3回あり、最も遅かったのは1998年の7月9日となっています。5月以降にずれ込んだ年は計13回ありますので、5月以降にずれ込んだとしても、すぐにすごく遅い発生になるというわけではありません。ただもし5月の後半以降にずれ込むようならば、遅い方から7位以内に入ってきますので、10年に1度程度の遅い発生ということになります。

ちなみに台風1号の発生が5月以降にずれ込んだ計13回の年間の台風発生数の平均は24.0個で、今の平年の年間の発生数は25.1個ですから、台風1号の発生が5月以降にずれ込んだとしても、年間の台風発生数には、大きく影響することはないといえそうです。

また逆に4月までに台風発生数が記録的に多かった年、5個発生(2015年、2014年、1971年、1965年)あるいは、4個発生(1976年、1967年、1955年、1951年)した年の年間の台風発生数の平均は、28.9個で、一見多いように感じられますが、これらの年でも5月以降の発生数に限れば、24個から25個程度となりますので、4月までに台風が発生しなくとも、逆にたくさん発生していたとしても、5月以降の発生数にはあまり大きく影響しないということがいえるでしょう。

エルニーニョ現象からラニーニャ現象へ?

エルニーニョとラニーニャ現象の経過と予測(気象庁より)
エルニーニョとラニーニャ現象の経過と予測(気象庁より)

ところで、気象庁が発表しているエルニーニョ監視速報によると、昨年の春から続いているエルニーニョ現象は終息に向かっていて、この夏の間にラニーニャ現象が発生する可能性が今度は50%と見込まれています。

上述した通り、台風1号の発生が5月以降にずれ込んだとしても、年間の台風発生数には大きな影響はほとんどない状況ではありますが、もしラニーニャ現象が発生した場合は、それに見合った台風の傾向が表れる可能性があります。

エルニーニョ現象とラニーニャ現象との台風の関係は?

エルニーニョ現象やラニーニャ現象と台風の関係(気象庁より)
エルニーニョ現象やラニーニャ現象と台風の関係(気象庁より)

上表は、気象庁がエルニーニョ現象発生時とラニーニャ現象発生時の台風の傾向をまとめたものです。エルニーニョ現象が発生していた昨年は、台風の発生数が17個で、傾向にある「台風の発生数が平常時より少なくなる傾向」と合致していますが、気象庁が発表した昨年の台風のまとめでは、エルニーニョ現象との関係は言及されていません。

今夏、今のところ、50%の確率で発生が予想されているラニーニャ現象発生時の台風の傾向としては、台風の発生数には、その傾向がみられないものの、台風の発生位置が平常時に比べて、北や西にずれる傾向があるということで、日本の近い所で台風が発生しやすい傾向があるともいえます。

台風1号の発生が5月以降にずれ込んだとしても、年間の発生数にはあまり大きな特徴がみられない傾向がありますが、今夏にかけて、昨年とは一転し、ラニーニャ現象が発生する可能性がありますので、これは注目すべきポイントだと思われます。次のエルニーニョ監視速報は、5月10日(金)に気象庁から発表されます。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

人の生活と気象情報というのは切っても切れない関係にあると思います。特に近年は突発的な大雨が増えるなど、気象情報の重要性が更に増してきているのではないでしょうか? 私は1995年に気象予報士を取得しましたが、その後培った経験や知識を交えながら、よりためになる気象情報を発信していきたいと思います。災害につながるような荒天情報はもちろん、桜や紅葉など、レジャーに関わる情報もお伝えしたいと思っています。

杉江勇次の最近の記事