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ヴィニシウスの決定力が「爆上がり」した理由。「1秒」を勝ち取る労力に、動機を上回る確信。

森田泰史スポーツライター
大きく成長したヴィニシウス(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

彼を評価するのは、難しかった。

今季、リーガエスパニョーラで首位を快走しているレアル・マドリーで、攻撃を牽引しているのがヴィニシウス・ジュニオールだ。今季公式戦において27試合15得点とゴールを量産しており、エースの風格さえ漂い始めている。

ボールを追うヴィニシウス
ボールを追うヴィニシウス写真:なかしまだいすけ/アフロ

開幕直後から変化の兆候はあった。リーガ序盤戦の4試合で4得点。特筆すべきはヴィニシウスのシュート数(2.84本/90分毎)だった。

その時点でロベルト・レヴァンドフスキ(3.29本)、カスパー・ドルベリ(2.95本)、ラウタロ・マルティネス(2.69本)、アーリング・ハーランド(2.25本)という名だたるストライカーたちに決して劣らないスタッツを残していたのだ。

昨季終盤戦12試合で、ヴィニシウスが放ったシュートは僅か8本だった。昨季との違いは明らかだ。

■ヴィニシウスの確信

ヴィニシウスは努力家である。

ブラジル人としては珍しい、と言えば語弊があるが、いずれにせよ彼は研究熱心で向上のためにはトレーニングを惜しまないタイプだ。NBAのレブソン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ)に憧れを抱いていて、レアル・マドリーではセルヒオ・ラモス、クリスティアーノ・ロナウド、カゼミーロといった選手に影響を受けてきた。「もし、たった1秒の差で勝敗が分かれるなら、僕はその1秒を勝ち取るために働く」とはヴィニシウスの言葉だ。

一方、「ヴィニシウスはモチベーションに依存しない。確信を持って働いている。『これをやるのは好きじゃない。だけど必要だからやる』というロジックだ。彼を動かしているのは確信なんだ」と語るのはヴィニシウスのパーソナルトレーナーのチアゴ・ロボである。

また、ヴィニシウスの成長に、欠かせない人物がもう一人いる。カルロ・アンチェロッティ監督だ。

ジネディーヌ・ジダン前監督の頃から個別でシュート練習に励んでいたヴィニシウスだが、そこがさらに強化された。かつて、「ヴィニシウスはゴールを決めるために何回もボールに触る必要はない。1タッチか2タッチで良いのだ」とコメントしていたアンチェロッティ監督は、就任当初からヴィニシウスの決定力を上げられると“確信”していた。

■プレースタイルの変貌

ウィンガーの得点力がアップする。思い起こされるのは、リオネル・メッシのケースだ。メッシはバルセロナ時代にペップ・グアルディオラ監督の下で得点能力を開花させた。

ペップはメッシをファルソ・ヌエベ(偽背番号9/ゼロトップ)で起用するようになり、中盤の支配とウィングのディアゴナルランでチームの完成度を高めていった。

ヴィニシウスの場合、重要だったのはカリム・ベンゼマとの関係性だ。

マドリーの攻撃の全権を担うベンゼマと、如何にしてコンビネーションを築くか。それがヴィニシウス の課題になっていた。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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