石川ミリオンスターズ10周年記念試合 横山が5回パーフェクトも結果は惜敗《阪神ファーム》
今季の公式戦は25日のソフトバンク戦(タマスタ筑後)で、また28日に行われたオリックスとの練習試合をもって鳴尾浜での今季実戦も終わった阪神ファーム。例年なら次はフェニックス・リーグというところですが、29日は石川県金沢市に遠征してルートインBCリーグの石川と対戦しました。これは、石川ミリオンスターズの10周年を記念した特別試合。試合前練習の見学や、試合後の両チーム記念撮影に参加、大抽選会など大いに盛り上がったようです。
そうそう、実際のリリーフカーが試合前はスタンド入口に展示されていて、実際に乗れます。石川県野々市市から来られた阪神ファンのご家族にご協力いただきました。乗ってくれたのは拓真くん(8歳)と、ゴメスファンの真歩ちゃん(6歳)。お父さんの高広さんは「バックスリーン3連発の時代が忘れられない」とのことで「バースさんには会えて、きょうは掛布さん。あと岡田さんに会えたら」と話しておられました。
なお、球場に着いて石川ミリオンスターズの代表取締役・端保氏とお会いした際、直前までの雨で開催できるか心配だったと言ったら「きょうはできますよ!3度目の正直です」とニッコリ。そういえば…BCリーグとの試合は結構あるのに、金沢へ来ての石川戦ができるのは初めてなんですね。2009年、2012年とどちらも石川戦だけ中止で、翌日の富山戦は行われたり。最近の福井、富山との2連戦は雨が降らなかったり。ことし鳴尾浜での石川戦は無事にできていますしね。
昨年4月、BCリーグの開幕戦に阪神ファームが参戦した際のもので、ここに過去の“雨天中止”についても詳しく書いています。<北陸遠征こぼれ話 福井で奮闘中の田面巧二郎投手>
リーグ優勝は逃すも前後期で3人のMVP
さてルートインBCリーグは、ことし石川ミリオンスターズが前期と後期の両方を制して、9月16日から通期2位の福井ミラクルエレファンツとの『地区チャンピオンシップ』でADVANCE-Westの地区優勝を決めたのですが、9月21日からFUTURE-Eastの群馬ダイヤモンドペガサスと戦った『ルートインBCリーグ・チャンピオンシップ』で敗れ、四国アイランドリーグplus・愛媛マンダリンパイレーツとの『日本独立リーグ・グランドチャンピオンシップ』には進めませんでした。
それでも、ちょうど阪神の練習中にルートインBCリーグの2016年後期MVPが発表され、投手部門で石川の安江嘉純投手が選ばれています。後期は11試合(70回2/3)に投げて8勝0敗、うち完投が2試合。防御率は1.78で奪三振65という成績。前期、後期通して安定したピッチングだったようでね。なお前期のMVPはシリアコ選手と寺田投手で、石川が独占しています。
シーズンの個人タイトルも、安江投手が最多勝利(16勝、2位は11勝)と、最多奪三振(131個、2位は113個)の二冠を獲得。防御率も2位の1.79です。前後期合わせて22試合、146イニングを投げてこの数字は素晴らしいですね。1位の投手は1.71でしたが、登板は前期のみの13試合で63イニングですから。
そんな安江投手が先発と聞き、ことし4月に石川へ派遣中だった一二三選手を取材しに行った時も先発で、なぜか4回から大きく崩れてしまったのも思い出しました。安江投手もそれを覚えていて「今回はリベンジしますよ!ぜったい」と試合前に宣言。結果とコメントはのちほどご紹介します。
なお安江投手と一二三選手の関係や4月の試合については、こちらでご覧ください。<一二三慎太選手がBCリーグで全試合出場、打率3割超えと奮闘中!>
石川MS 10周年記念特別試合
石川-阪神 (9/29 金沢市民)
阪神 000 000 010 = 1
石川 000 000 11X = 2
◆バッテリー
【阪神】横山-伊藤和-守屋 / 小豆畑-小宮山(6回~)
【石川】安江(3回)-レオ(1回)-栗野(1回)-ベンジャミン(1回)-矢部(1回)-上條(1回)-寺田(1回) / 大村
◆本塁打 シリアコ ソロ(伊藤和)、大村ソロ(守屋)
◆二塁打 中畑
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策)
1]左右:緒方 ( 2-0-0 / 1-2 / 0 / 0 )
2]遊:森越 ( 3-0-1 / 1-0 / 0 / 0 )
3]三:今成 ( 4-0-0 / 1-0 / 0 / 0 )
4]中:横田 ( 4-1-0 / 2-0 / 1 / 0 )
5]右:伊藤隼 ( 2-0-0 / 1-0 / 0 / 0 )
〃左:一二三 ( 2-0-0 / 0-0 / 0 / 0 )
6]一:西田 ( 2-0-0 / 2-2 / 0 / 0 )
7]二:坂 ( 4-0-0 / 3-0 / 0 / 0 )
8]捕:小豆畑 ( 2-0-0 / 1-0 / 0 / 0 )
〃捕:小宮山 ( 1-1-0 / 0-0 / 0 / 0 )
9]指:柴田 ( 3-1-0 / 0-0 / 0 / 0 )
◆投手(打-振-球/失点-自責) 最速キロ
横山 5回 66球 (0-7-0 / 0-0) 143
伊藤和 2回 32球 (2-2-0 / 1-1) 142
守屋 1回 17球 (2-1-0 / 1-1) 145
<試合経過>
まず打線は1回、安江の前に三者連続三振。2回は先頭の横田がいい当たりの右前打を放ち、盗塁を決めます。さらに伊藤隼の右飛でタッチアップして1死三塁とするも、西田と坂が三振で無得点。3回は内野ゴロ3つでまた三者凡退でした。4回はレオに対して、やはり三者凡退。5回は栗野から西田が四球を選んだものの、他はすべて三振。ここまで1安打9三振で無得点です。一方、阪神先発の横山も5回までパーフェクトピッチング!7三振を奪って完ぺきに抑えました。
後半に入っても6回はベンジャミン、7回は矢部からヒットは打てず。6回に緒方の四球があっただけ。阪神の投手は6回から2人目の伊藤和が登板して6回は三者凡退に。しかし7回2死から、リーグ前期MVP打者の3番・シリアコに許した初ヒットがレフトへのホームラン。続く宮澤にショート内野安打(森越はよく止めて送球)されましたが、宮沢の二盗を小宮山が阻止。
すると打線は8回、石川6人目の上條から小宮山が右前打、柴田は中前打と初めて連打が出て、緒方の死球で1死満塁のチャンスに、森越が左犠飛を放って追いつきます。でも1点止まりで、その裏に登板した守屋が先頭・大村にライトへ勝ち越しのホームランを打たれました。1死後に中畑の二塁打があったものの後続は連続三振です。
1点差で迎えた9回は、前期MVP投手の寺田に対して、2死から西田が11球粘って四球を選んだだけ。この回も2三振を喫して無得点。終わってみれば、阪神投手陣は11奪三振で無四球ながら、4安打のうち2本がホームランで2失点。打線は3安打1点、奪われた三振は12個という内容でした。
掛布監督 試合回顧と次への課題
掛布監督は、相手の先発・安江投手について「もうちょっとストレートは150キロ近いのを投げてくるんじゃないかな、シーズン中は。久しぶりのナイターってのもあるし、言い訳じゃなくて簡単に打てるピッチャーではないですね」と話しています。「きょうは(石川の10周年)記念だから、恥ずかしい試合はしないように言った。そういう意味ではいいゲームだったんじゃない?」
真っすぐに対応することをやってきた今季。「それは1軍もずっと持っている課題。今日だけのことじゃない。継続してやらないと。フェニックスでは若い子も含め、明確な目的意識を持たせてプランを立てていく。バッティングの中で、ティーバッティングとかで考えてやることで、真っすぐでも早く打つタイミングができたり。まあ(フェニックスに)行ってからです」。気持ちはもう宮崎、かもしれませんね。
投手陣3人と高橋コーチの話
投手陣のコメントです。まず先発して5回パーフェクトの横山投手は、真っすぐで空振りやファウルを取れていたことに関して手応えを聞かれ「ベース付近で強い球を投げることができたと思う」と回答。久しぶりのナイターでも「そこは意識することなく、しっかり投げられた」と言います。この日、決まっていたチェンジアップに「今後も使っていきたい」とのことでした。
高橋投手コーチは「こういう相手にこういうピッチングを見せてほしいと思ったら、それを見せてくれた。投げっぷりがよかったので、忘れずにやってほしいと思いますね。きょうは、前回の反省点(21日のオリックス戦で6四球)を修正してきた本人がいました。もう来年になりますが、彼はできるはずですから頑張ってほしい。きょうのパーフェクトは素晴らしかったですね」と振り返っています。
また、ホームランを打たれた伊藤和投手と守屋投手に「高かったですねえ。向こうの打者が思いきり振ってきていたし、狙っていた。強いスイングを心がけて。その中で、もしかしたら投げてはいけない球だったかも…」と言いながらも「きょうは3人ともフォアボールを1つも出していない。そこは相手が誰であれ、素晴らしいこと。忘れずに継続してほしい」と高橋コーチは続けました。
伊藤和投手がシリアコ選手に打たれたのは、本人いわく134キロの「ツーシーム」だそうです。「練習するように言われてやっているんですが、なかなかうまくいかない。オリックスとの練習試合でも投げたんですけど…。難しいですね。練習して使える球にしたい」。この日は1イニング目が三者凡退で、2イニング目も2死を取ってからの被弾でした。「そうですね。ホームラン以外はしっかり投げられたと思います」
一方、代わりっぱなに大村選手のホームランを浴びた守屋投手は「真っすぐ(141キロ)です。置きにいってしまいました…。すみません。負け投手です」と、反省の言葉を一気に述べてバスへ向かいました。悔しかったでしょうね。このリベンジは宮崎で。
横田、森越、一二三のコメント
打者は、この試合で第1安打を放った横田選手から (そういえば両チームとも、7回のシリアコ選手のホームランまでヒットがないんですよね)。2回の右前打、ナイスバッティングでした。「内容はよかったです。それに塁に出ると盗塁もできますし。フェニックスまでに、いかに結果を残すか。オリックスの練習試合の反省も踏まえて、きょうやったんですけど、練習でできても試合では課題が出ました。フェニックスまでに修正したいです」
森越選手は8回に同点の犠飛。初球の真っすぐを狙って?「はい。狙いました!前のバッターがデッドボールで出ていたから、初球はストライクを取りに取りにくると思ったので。点につながってよかったです」。
そして一二三選手。5回の守備交代で「レフト一二三」とアナウンスされると大きな拍手が起き、7回の初打席ではハッピーバースデー♪の演奏と「おめでとう!」の声も上がりました。ちょうど9月29日は24歳の誕生日だったんですね。2打席に立って右飛と三ゴロでヒットは出なかったものの、久しぶりの金沢で“元チームメイト”とも再会。「楽しかったですっ!」と笑顔いっぱいでしたよ。
吉報を待つ石川のエース
最後に、石川の安江投手の話もご紹介します。同い年の一二三選手には「試合前に、誕生日おめでとう!って言いました」とのこと。前回、私が観戦されてもらった時とは、まったく違うところを見せていただきました。「よかったです(笑)」。横田選手の1安打のみですが、あれはしっかり捉えられた?「はい。僕が“捉えるとこ”へ投げてしまったんですよね。ストライク、ボールにすべきところをストライク、ストライクになったので…」
確かに、三振を奪った打者はすべて1-1としていますね。それだけに悔しかったかも。1回の3者連続三振は狙い通り?と聞くと「先頭は狙いました。あとはカウントを見ながら」だったそうです。
この日は気温が低かったのもあったのか、最速は146キロ。自身の最速は昨年の151キロで、今季は149キロだと言います。「もっといい球を、もっと速い球を投げてやろうとして、これまで打たれていました。でも、こだわりはコントロールとキレですかね。いかに見逃しやファウルが取れるか。スピードも出したいとは思いますが、それよりはキレ」と安江投手。
29日をもってチームの全体練習は終了。「ドラフトまで気を緩めずにいきたい。やれることはやってきたので、あまり気にすることなく。ダメなら、それは僕の力不足だと思います。とにかくシーズン通してケガなく終われたのが一番ですね」と、納得の表情でした。10月20日のドラフト会議、吉報が届くことを祈っています。