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三菱重工Eastは打撃戦を辛くも制する【第46回社会人野球日本選手権大会デイリー・リポート2】

横尾弘一野球ジャーナリスト
9回表一死一、三塁から逆転打を放った三菱重工Eastの安田亮太はガッツポーズ。

 第46回社会人野球日本選手権大会は、開幕した昨日が3試合とも僅差の好試合だったが、今日は投手戦も打撃戦も1点差で決着。チームの統合・再編で再出発した三菱重工Eastは、第2試合で伯和ビクトリーズにたっぷりと冷や汗をかかされた。

 三菱重工Eastの打線は、伯和ビクトリーズの先発を任された左腕の平岡 航に初回から襲いかかる。一死からの3連打で2点を挙げると、さらに二死満塁から押し出し四球で3点目を得る。しかし、エースの大野亨輔が、その裏に四番・中山竜秀に一発を食らうなど伯和に2点を返される。それでも、5回までに3点を追加して6対2とリードを広げ、大野は5回でマウンドを譲る。

 ところが、7回裏に連打と犠打で一死二、三塁とされ、橋本昂稀の左前安打で2点差に迫られると、三番手に左腕の本間大暉を投入する。本間は二死二、三塁まで漕ぎ着けたが、池田侑矢に三遊間を割られて同点とされ、返球ミスも重なって打者走者も三塁へ進めてしまう。そして、藤澤直樹の右前安打でとうとう6対7と逆転を許す。

 4回途中からリリーフした伯和の二番手・三宅海夢は2安打と打ちあぐねており、8回表の攻撃も無死一塁から一ゴロ併殺と、三菱重工Eastのベンチには焦りの色がうかがえた。だが、9回表一死から四番の小栁卓也が四球を選ぶと、続く代打・二橋大地の二ゴロが敵失を誘い、久木田雄介と代打・安田亮太の連打で8対7と逆転。何とか二回戦へ駒を進めた。三菱重工Eastの佐伯 功監督は、あくまでチームを成長途上と位置づけ、苦しみながらの逆転勝利を勢いに変えようと目論んでいるようだ。

 また、2015年にはベスト4進出も果たしている伯和ビクトリーズは、持ち味である思い切りのいい攻撃は存分に発揮することができた。その一方で、3回裏には3連打しながらも、その3人すべてが走塁死。守りでも失策がことごとく失点につながるなど、正確性をやや欠いた試合運びで手にしかけた白星を逃がしたのは残念だった。

初出場の北海道ガスは“大先輩”を相手に善戦

 第1試合では、創部4年目で初出場の北海道ガスが、同業の“大先輩”東邦ガスと対戦した。北海道ガスの先発・大城祐樹は、伸びのある速球を軸に東邦ガスの打線に真っ向勝負挑み、3回までを危なげなく抑える。4回表一死から上内辰哉に右前安打を許し、四番・若林俊充の痛烈な打球が左足を直撃。ボールが大きく弾む間に一、三塁となり、続く柴田圭輝の詰まった二ゴロの間に先制される。

 2回裏に一死満塁の先制機を逃したあとは、チャンスらしいチャンスもなかった北海道ガスだが、6回裏二死から四番の寺田和史が豪快なスイングでライトスタンドに着弾する同点アーチを放つ。全国の舞台で初得点を挙げ、一気にベンチのボルテージも高まる。

ともに9回を投げ抜いた東邦ガスの辻本宙夢(左)と北海道ガスの大城祐樹(右)。
ともに9回を投げ抜いた東邦ガスの辻本宙夢(左)と北海道ガスの大城祐樹(右)。

 しかし、最後は“大先輩”が勝負の厳しさを教える。8回表の東邦ガスは、代打の小林満平が二塁打を放つと犠打で三塁へ進め、氷見泰介の強い二ゴロを弾く間に小林がスタートよく生還。このリードを、エースの辻本宙夢が117球の完投で守り切った。北海道ガスは善戦したが、選手たちの表情を見れば満足していないのは明らかだ。さらに勝負強さを磨き上げ、今度は都市対抗への初出場を目指してもらいたい。

主砲の一発が極上の投手戦にピリオドを打つ

 第3試合の先発投手は、王子が近藤 均で日本通運は相馬和磨。投手戦になるだろうという見立て以上に、緊迫した展開となった。ともに安定した制球と緩急を駆使したピッチングで、相手打線に自分のスイングをさせない。

 それでも、3回裏に先頭の大谷昇吾がセカンドの左をゴロで破る当たりで二塁まで進むと、木南 了がきっちり送り、髙橋 俊の右犠飛で日本通運が先手を取る。すると、直後の4回表にすかさず王子が反撃する。前田滉平と伊礼 翼の連打で無死一、二塁とし、四番の吉岡郁哉が送って一死二、三塁。続く亀山一平はゴロで一、二塁間を破る。前田が還って同点となったが、逆転のホームを狙った伊礼は髙橋の好返球でアウトに。互いに僅かなコントロール・ミスを逃さずに1点を取り合ったが、これで近藤も相馬もより慎重な投球に徹し、スコアボードにはゼロが並んでいく。

打った瞬間にそれとわかるサヨナラ本塁打を放った日本通運の主砲・北川利生。
打った瞬間にそれとわかるサヨナラ本塁打を放った日本通運の主砲・北川利生。

 勝敗が決するのは、両先発が降板したあとだろうと思いながら見ていた9回裏二死だった。日本通運の四番・北川利生が外角の変化球を見送った1ボールからの2球目、インコース寄りを振り抜くと、打球の行方を追うのと同時に両腕を突き上げる。美しい放物線を描いた打球はレフトスタンドで弾み、社会人野球のレベルの高さを物語る緊迫した投手戦は突然の終わりを迎えた。

(写真提供/小学館グランドスラム)

【7月1日の対戦カード】

9:00 東芝×バイタルネット

12:30 カナフレックス×東海理化

16:00 Honda×パナソニック

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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