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シャープ"世界の亀山"に幕? 「国内生産撤退」報道を否定 訂正は求めず

楊井人文弁護士
シャープの戴正呉社長(2016年11月1日決算発表)(写真:つのだよしお/アフロ)

朝日新聞は3月15日付朝刊1面で「シャープ 国内テレビ生産終了へ/来年にも 戴社長明言」と見出しをつけ、シャープの戴正呉社長がインタビューで2018年にも液晶テレビの国内生産から撤退する方針を示したと報じた。一方、シャープは同日、これについての見解をまとめた文書を報道関係者に配布し、国内の工場で大型液晶テレビ生産を続ける方針であると説明。しかし、シャープ側は朝日新聞社に抗議や訂正の申入れをしておらず、朝日新聞社もインタビューの内容をシャープ側に確認したうえで掲載していたことが、日本報道検証機構の調査でわかった。

記事は、朝日新聞の大阪版では「シャープ『世界の亀山』に幕/TV国内生産 来年にも撤退」との見出しで掲載され、記事中にも「亀山工場を含む国内のテレビ生産撤退」との記載があった。記事によれば、戴社長はインタビューで「国内では無理。海外生産しないと、シャープの液晶テレビが売れなくなってしまう」と話し、国内は開発や試作、アフターサービスなどに絞る方針を示したという。

戴社長=昨年8月、シャープが鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入った後に就任=は、13日、堺市内の本社で今後の経営方針について記者会見を行い、14日に朝日新聞ほか、毎日新聞、日本経済新聞の個別インタビューを受けていた。戴社長は日本語で対応したという。毎日、日経も15日付でインタビューを記事化していたが、液晶テレビの国内生産から撤退するとの方針には言及していなかった。

シャープは15日、社長室広報担当の名で「当社の国内液晶テレビ生産に関する一部報道について」と題する書面を報道関係者に配布。そこには「液晶テレビの生産に関する当社の方針」として「大型液晶テレビ(例えば80型、90型など)については、亀山工場にて生産する」「最先端の8Kテレビの生産については栃木または亀山工場にて行う」といった方針を「検討」していると記されていた。しかし、朝日新聞の記事がインタビューで答えた内容と異なるとか、将来的に国内生産から撤退する予定はないとは明言していなかった。シャープは、この見解を公式ホームページに掲載しておらず、証券取引所にも適時開示を行っていない。

シャープが報道関係者に配布した説明資料

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当機構は朝日新聞大阪本社に、記事は戴社長へのインタビュー内容を正確に反映したものだったかどうか等を質問。16日、同社の広報担当者から「当該記事は、戴社長へのインタビューにもとづき、シャープ側に内容を確認したうえ、掲載しました。シャープから抗議や訂正要求はありません。ただ、シャープが記事掲載後に別の見解を示したため、事実関係について取材しています」との回答があった。17日現在、訂正記事は出ていない。シャープの広報担当者に確認したところ、掲載前の確認があったことを否定せず、今後も抗議や訂正要求を行う予定はないと答えた。

戴社長はインタビューで報道されたような発言をしたものの、社内の方針として固まっていなかったか、発言の意図について何らかの誤解が生じた可能性が考えられる。

弁護士

慶應義塾大学卒業後、産経新聞記者を経て、2008年、弁護士登録。2012年より誤報検証サイトGoHoo運営(2019年解散)。2017年からファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)発起人、事務局長兼理事を約6年務めた。2018年『ファクトチェックとは何か』出版(共著、尾崎行雄記念財団ブックオブイヤー受賞)。2022年、衆議院憲法審査会に参考人として出席。2023年、Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット賞受賞。現在、ニュースレター「楊井人文のニュースの読み方」配信中。ベリーベスト法律事務所弁護士、日本公共利益研究所主任研究員。

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