じつは盛況だった正月三が日のマンションモデルルーム見学。2024年に復活する?
新型コロナウイルス感染症の5類移行後初めての年末年始、世の中の動きは一気に元に戻りだした。
国内旅行者数が感染拡大前の2019年末とほぼ同じ水準に回復したことで、新幹線も飛行機も、そしてレンタカーも予約を取るのが一苦労と報じられている。2024年正月は、久しぶりに里帰りして、孫を祖父母に会わせるという家庭も多くなりそうだ。
コロナ禍が起きる前の正月風景が復活する……そこで、不動産業界でささやかれ始めたことがある。
「2024年の正月は、以前のようにモデルルーム見学希望者が増えるかもしれない」
かつて、お正月の三が日、神社が初詣の人で賑わうようにマンションのモデルルームにも見学者が大勢押しかけたことがある。そのような状況が復活するかもしれない、というわけだ。
といっても、喜んでいるわけではない。それは困ったなあ、というため息交じりの予測なのである。
旅行業者であれば、一気に増える旅行客を喜んで受け入れるだろう。買い物施設も三が日のうちに営業を開始する。しかし、マンションの販売センターは、それが不可能。以前は大歓迎だったが、今は歓迎したくても、できないのだ。
なぜ、以前は正月三が日にマンションモデルルームの見学者が増えていたのか。2024年正月は見学できるマンションモデルルームがない理由も含めて説明したい。
かつては、三が日から営業の販売センターも
コロナ禍が起きる前までマンションの販売センターは正月早々から営業を開始していた。1月3日から、いやウチは1月2日から、と三が日から営業を開始した販売センターが少なくなかったのである。
それは、正月早々からモデルルームを見たい、という人が多かったからだ。
理由は、「正月は、親とマイホーム購入を話し合う絶好のチャンス」であるからだ。
正月、久しぶりに家族が顔を合わせたときにふさわしいのは「前向きな話」。「結婚を考えている」とか「そろそろ子供を」といった話が出やすい。そして、子世帯のほうから親に「家を買おうと思っている」という話を切り出しやすいのも正月だ。
親とマイホーム購入の話をするときは資金援助を頼むことが多く、そうなると、電話やメールなどでは話がしにくい。
親子が面と向かって話し合うとなると、正月が絶好のチャンスとなる。その「親と話し合うチャンス」が、2024年、久しぶりに訪れるわけだ。マイホームを買おうとする人は、このチャンスを逃さないだろう。
話し合いの結果、ゴーサインが出れば、早速、目当てのモデルルームを見に行きたい。そのように購入意欲満々の人が来るため、以前の不動産会社は三が日からマンションの販売センターを開けていたのである。
三が日は初詣も福袋の買い物も混雑している。その点、マンションの販売センターなら空いているだろう、と考えがち。駐車場に入るのも苦労しない。だから、正月のマンション販売センターには意外なほど多くの人が押し寄せたのである。
コロナ禍と働き方改革で、今は長期間休業に
新型コロナウイルス感染症の5類移行後初めての正月となる2024年1月、以前のように「三が日からモデルルームを見学したい」という人が出てくる可能性がある。
では、実際にモデルルームの見学はできるのだろうか。
残念ながら、2024年正月、モデルルームの見学はできそうもない。というのも、可能な限り多くの販売センターに聞き取り調査したところ、三が日から開けているマンション販売センターはひとつもなかったからだ。
調べた範囲では4日も5日も休みというところが多く、1月第2週から営業開始、というところもあった。現在のマンション販売センターは、「最初はオンライン商談で、モデルルーム見学はその後」となるパターンが多いため、モデルルームをみることができるのは1月中旬以降になりかねない。
コロナ禍が起きる前まで、三が日でもモデルルーム見学ができたことからすると、状況が大きく変わったことになる。
ちなみに、年末の休みも早く、遅くまで開いているところでも2023年は12月24日の日曜日が最終営業日だった。翌25日から休みだとすると、1月7日か8日まで丸2週間販売センターが閉まることになる。
それほど年末年始の休みが長くなったのは、働き方改革の影響もありそうだ。
土日祝日の勤務が当たり前のマンション販売センターは、今の若い層にとって、決して人気の高い職場ではない。小さな子供がいる年代であれば、「子供の学校がない日に休めない」勤務形態をなおさら嫌う。
だから、年末年始とお盆は長期間販売センターを閉めて、社員を休ませるのが今の主流。そのため、この先、「三が日の見学希望者」が増えたとしても、正月早々から販売センターを開くマンションは出現しにくい。
正月の三が日にモデルルームが開いていた、というのはもはや昔話か。もっとも、他社が休業するなら……と、やる気満々の不動産会社が販売センターを開く可能性はある。が、それはそれで、ちょっと怖い感じがしてしまうのである。