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20,312名の観衆を集めた統一スーパーミドル級チャンプ、カネロ・アルバレス

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Rey Del Rio/Premier Boxing Champions

 現地時間9月14日に行われたWBA/WBC/IBFスーパーミドル級タイトルマッチ。会場であるT-Mobile Arenaを訪れたファンの数は20,312名。主催者は「SOLD OUT」と発表したが、確かにフルハウスだった。

 筆者が会場入りしたのは、16時。スティーブン・フルトンvs.カルロス・カストロ戦の少し前だった。この時の客の入りは1割程度。PPVスタート前はいつもこんな調子だが、閑散とするアリーナにセコンドの声が木霊する様が、現実を突き付ける。

Rey Del Rio/Premier Boxing Champions
Rey Del Rio/Premier Boxing Champions

 それが、およそ4時間後のメインイベント開始時刻に満員となるのだから、やはり千両役者は違う。61勝(39KO)2敗2分のチャンピオン、サウル・"カネロ"・アルバレスは今回、22戦全勝17KOの挑戦者、エドガー・ベルランガを迎えた。

 第3ラウンドに左フックを見舞い、ダウンを奪ったカネロだが、挑戦者の粘りもあり、判定までもつれた。とはいえ、終わってみればスコアは118-109が2名と117-110で、チャンピオンが危な気なくタイトルを防衛。2021年11月を最後に、KO勝ちから遠ざかっているカネロのファンからは、「倒せ!!」という叫び声も飛んでいたが、巧みにリングをコントロールした。

Rey Del Rio/Premier Boxing Champions
Rey Del Rio/Premier Boxing Champions

 9月16日はメキシコがスペインから独立した日であり、メキシコの血が流れる人々にとっては記念日だ。同国の英雄である統一スーパーミドル級王者が、9月のリングに上がるのは3年連続。GGGこと、ゲンナジー・ゲンナジーヴィッチ・ゴロフキンとの3試合も、2017年、2018年、2022年と、全てこの時期にT-Mobile Arenaで催された。

 つまり、カネロにとってラスベガスは紛れもない"ホーム"で、ベルランガは敵役。22歳のチャレンジャーは、ブーイングと共にリングインしなければならなかった。

Rey Del Rio/Premier Boxing Champions
Rey Del Rio/Premier Boxing Champions

 「『若い選手との試合はしない』なんていう非難もあったが、どうだ? ゴチャゴチャ言う人間がいても、世界中でベストファイターは私なんだ。彼(ベルランガ)の戦い方に多少憤りも感じたが、私はメキシカンさ。今夜は、自分の完成度を示せた。祖国にとって重要な日に戦えたことを誇りに思う。

 献身的なファイトと知性ーー常にこの2つを持たねば。私の経験、才能は彼と差がある。才能に恵まれているのなら、それを十二分に発揮するべく己を律しなければね。

 多くの人間が、『お前は成功しない』と発言したが、我々は成し遂げた。ラスベガスはメキシカンにとって第2の故郷。私たちは戦士だ。そして決して諦めない。少し休んで、次を考えるよ」

 試合後、カネロはそう語りファンは恍惚として帰路に就いた。

Rey Del Rio/Premier Boxing Champions
Rey Del Rio/Premier Boxing Champions

 チャンピオンのセリフ通り、両者は格が違った。最も大きな差はディフェンス力だ。カネロが被弾するシーンもあったが、芯は外した。常に頭を動かし、的を絞らせなかった。

 今後は、老いとも戦うことになる34歳のWBA/WBC/IBFスーパーミドル級チャンピオン。そのボクシングIQで、加齢をいかに抗うのかーー。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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