レアル・ソシエダ、久保建英のナポリ移籍はあるのか?
レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)に所属する日本代表MF久保建英に対し、セリエA、ナポリ移籍の噂が出ている。
急転直下の移籍はあるのか?
「考えられない」
あえて簡潔に答えるなら、そうなるだろう。
ラ・レアルに手放す理由がない
ナポリが久保獲得に興味を持っているのは事実だろう。
かつてASローマを率いて攻撃的サッカーで一世を風靡したリュディ・ガルシアが、新たに監督に就任した。当時、R・ガルシア監督はコートジボワール代表のジェルビーニョを覚醒させたが、今回も切り込んで崩せるサイドアタッカーは必須だと言われる。メキシコ代表の切込み役であるイルビング・ロサーノがサウジアラビアのクラブに移籍濃厚なだけに、その後釜に久保をリクエストしたという。
ナポリは約30億円を移籍金として用意したと言われる。チャンピオンズリーグ(CL)出場権も魅力。前述したように、イタリア特有の守備に汲々とする戦術でもない。R・ガルシアがマルセイユ時代に酒井宏樹の監督だったこともあり、日本人選手にも正当な評価ができるはずだが…。
久保が移籍する可能性は「ない」に等しい。
なぜなら、まずラ・レアルが久保を手放す気がないのである。
CLで躍進した方が得
ラ・レアルは、久保の移籍違約金を約90億円に設定し、それを大きく下回る額では手放さないだろう。新シーズン、ようやくつかみ取ったCLも戦えるわけで、お金より戦力維持が重要。もしベスト16に勝ち進めたら、CL賞金だけで40億円もの収入が見込めて、資金的にも潤う。加えて、入場料収入やグッズ販売でも数十億円以上の利益を出せる。
主力である久保を、ラ・レアルが30億円程度で出すはずがない(しかも、移籍に関する優先権は前所属先のレアル・マドリードが持ち、移籍金の半分近くをマドリードが受け取る契約内容になっているとも言われる)。
久保本人の本心は分からないが、移籍のメリットはない。ラ・レアルをCL出場に導くため、彼は1シーズン戦い抜いた。その目標を達成し、自らを輝かせる舞台に立つのだ。
ナポリであれ、どこであれ、ラ・レアルを去る理由がない。
何より、ラ・レアルではダビド・シルバを筆頭に、自らを引き立てるコンビネーションの中にいる。ようやく探し当てた”理想郷”に近い。スペイン語が流ちょうなだけでなく、性格的にも当地に適応し、確実に成長を遂げつつある。
「これは(マルティン・)スビメンディ(のFCバルセロナ獲得オファー)のケースに似ている。ラ・レアルは、久保もスビメンディも売却する理由がない。本人たちの『出たい』という意志があれば別だが、それも見えず」
スペイン大手スポーツ紙『マルカ』は淡々と報じているが、本質を突いている。スビメンディにはバルサからラブコールが送られているが、久保と同じ約90億円と言われる移籍違約金を払えるわけがない。そもそも、バルサはファイナンシャルフェアプレーの問題を根本的に解決することを優先させるべきで…。
久保の価値の高騰
では、移籍の可能性がないに等しいにもかかわらず、なぜこうしたニュースが世間を賑わすのか。
その理由は、久保がそれだけ力を認められたということだろう。2022-23シーズン、ラ・レアルでは9ゴールでチームを4位に導き、CL出場権をもたらした。バスクダービー、マンチェスター・ユナイテッド、レアル・マドリード、バルサで勝利の立役者になったのは、本物の証と言える。
ナポリ以外にも、こうした話は出てくるだろう。騒がれることは「ラ・レアルと久保」の価値を同時に上げる。だからこそメディアにもリークされ、地元メディアを中心にその話が世界中へ広がる。
唯一、移籍の可能性があるのは優先権を持つマドリードだが、今シーズンに限っては得策ではない。それはラ・レアル、久保、マドリードと三者の共通理解だろう。CLが、久保の実力を見極める試金石になる。
2023-24シーズン、ラ・レアルの久保のプレーが楽しみだ。