Yahoo!ニュース

西山朋佳女流四冠、剛腕及ばず 朝日杯二次予選で佐藤康光九段に敗れる

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 12月8日。東京・将棋会館において第17回朝日杯将棋オープン戦二次予選1回戦▲西山朋佳女流四冠-△佐藤康光九段戦がおこなわれました。

 この対戦カードが決まってから、本局は大変注目されていました。

佐藤「いま本当に、里見さん(香奈女流四冠)と並んで女流棋界の第一人者で、長く引っ張ってらっしゃる方ですので。そういう意味では、そういうところでいつも敬意を持ってますので。しっかり自分の方が戦わなきゃいけないなというふうに思ってました」

西山「やっぱり注目していただいてる一番だと思ったので。自分らしい将棋が指せればいいなとは思っていました。佐藤先生にはいままでお世話になって。言うまでもなく偉大な先生ですので。今回、教われることがすごく光栄なことだと思うので、いい将棋を指したいなと思っていました」

 10時、対局開始。先手となった西山女流四冠は、初手で三間飛車に振りました。

西山「積極的にということを意識して指していました」

 佐藤九段が居玉のまま中央に銀を2枚並べると、西山女流四冠は中段に大駒の飛車角を飛び出して動きます。佐藤九段は玉を中住居にかまえ、金を繰り出して押さえ込みに。序盤早々から定跡形をはずれ、剛腕の両者らしい指し回しが見られました。

佐藤「もともと右玉を指すつもりでいたので。いきなり仕掛けられたのはちょっとあんまり考えてなかったんで。ちょっと臨機応変的な感じにはなったなと思いますけど」

 中盤、西山女流四冠は駒損をいとわず、豪快にさばきに出ます。薄い佐藤玉に先に迫る形を作り、西山女流四冠が少しペースをにぎったのではないかという場面も見られました。

佐藤「うまく戦機をとらえられて、ちょっと勝ちにくい将棋になったかなとは思ってたんで。飛車取れたんでなんとか、うまく指せばなんとか、ギリギリの将棋になるのかなとは思っていたんですけど」「うまくさばかれてしまったなっていうような感じはしてました。さすがだなという感じで。ちょっと苦しい戦いだったなと思ってました」

西山「本譜のようにけっこう大雑把な感じで指していく将棋なのかなとは思っていて。でも、途中はやっぱり大きな駒損にはなってるんですけど、駒の効率の差でなんとか勝負になってればいいなと思っていて。ただ、そうですね。終始やっぱりいやな手を指されていたので、一手一手難しいなと思っていました」

 72手目。受けるか攻めるか難しいところで、西山女流四冠は飛車を打ち込んで王手をかけました。

西山「なんとなく模様はよさそうな瞬間はあったんですけれど、そうですね。やっぱり▲8一飛車のタイミングだったりがちょっと形勢を損ねてしまったかなっていう感じかなと思います」

佐藤「あそこの局面はあまり自信がまだ持ててなかったです」

 佐藤九段は底力を発揮。反撃の形を得て、自玉は追われながら安全地帯に逃して、優位に立ちました。

佐藤「いやでも最後までちょっと全然わかってなかったので。寄せの形が見えて、勝ちになったかなと思いました」

 最後は佐藤九段が西山玉を受けなしに追い込んで11時53分に終局。112手で佐藤九段の勝ちとなりました。

 佐藤九段は14時から本戦進出をかけて、阿久津主税八段と対戦します。

 女流棋士として朝日杯初の一次予選突破を果たした西山女流四冠。今期朝日杯での快進撃はここまでとなりました。

 西山女流四冠の一般公式戦での成績は8勝4敗となりました。

 トータルでは依然好成績の西山女流四冠。ここから最短あと2勝(1敗以内)で、棋士編入試験の受験資格を取得できます。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

松本博文の最近の記事