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永瀬拓矢九段と西田拓也五段が5勝1敗でプレーオフ進出 王将リーグ最終7回戦終了

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 11月20日。東京・将棋会館においてALSOK杯第74期王将戦・挑戦者決定リーグ最終7回戦がおこなわれました。結果は以下の通りです。

永瀬 拓矢九段(5勝1敗)○-●近藤 誠也七段(3勝3敗)

西田 拓也五段(5勝1敗)○-●広瀬 章人九段(3勝3敗)

羽生 善治九段(1勝5敗)●-○佐々木勇気八段(1勝5敗)

※菅井竜也八段(3勝3敗)空き番

※西田-広瀬戦は千日手指し直し

 5勝1敗で並んだ永瀬九段と西田五段がプレーオフ進出を決めました。11月25日におこなわれる対局の勝者が、藤井聡太王将への挑戦権を獲得します。

 リーグ陥落は1勝5敗の羽生九段と佐々木八段。そして3勝3敗中で順位最下位の広瀬九段となりました。

永瀬九段-近藤七段戦


 ▲永瀬九段-△近藤七段戦は永瀬九段先手で角換わり腰掛け銀に。後手の近藤七段が6一金を動かさずに飛車を4筋に回る、工夫した駒組で臨みました。対して永瀬九段が仕掛け、戦いが始まります。


 互いに相手陣に角を打ち込んで馬を作り合う、難しい中盤戦。68手目、近藤七段が歩を打ち、永瀬九段が香、近藤七段が桂を取り合ったあたりから、形勢は少しずつ永瀬九段ペースとなります。近藤陣は、余儀なくされた壁銀がたたる形となりました。


 終盤、永瀬九段は誤ることなく押し切って、18時32分、111手で終局となりました。


永瀬「結果としては、5勝1敗はとてもいい結果だなというふうに思いますし。一局一局、課題も多く見つかったので。よいリーグだったかなというふうに思います」


近藤「最後、2連敗っていう形は残念だったですけど。全体的にやっぱり苦しい将棋が多くて。課題が残るリーグになりました」


西田五段-広瀬九段戦


 10時に始まった▲西田五段-△広瀬九段戦は、西田五段先手で三間飛車に。対して広瀬九段は居飛車穴熊に組みました。


 西田五段は、積極的に動いていくタイプの振り飛車党。本局も棋風通り積極的に攻めていきます。


 途中、広瀬九段はかなり形勢を悲観していたようですが、評価値の上ではそれほど差がつくことなく、中盤から終盤に入ります。最後は西田玉の周辺で互いに金を打ち続ける妥協できない順が続き、15時28分、98手で千日手が成立しました。


西田「むしろわるくなってるかもしれないぐらいだったので。すでに千日手はやむを得ないかなと思いました」


 指し直し局は先後を入れ替えて、15時58分に開始。後手になった西田五段は、こんどは四間飛車を採用しました。広瀬九段は今度も居飛車穴熊です。


 西田五段は時間が少ない中、豊富な実戦経験をいかして、本局も積極的に攻めていき、リードを奪います。


 終盤に入っての90手目。西田五段は中段に玉を逃げ出します。これが落ち着いた好手。以後も着実にゴールに近づき、19時25分、112手で勝利を収めました。


 リーグ初参加の西田五段。並み居る強敵を降して5勝1敗という好成績をあげました。


西田「まさかそんな成績が取れるとは思ってなかったんですけど。自分の将棋がけっこう噛み合ったというか。将棋が噛み合って。自分が実力がついたような気持ちは特になかったんですけど。今回、全体的にいい内容の将棋が指せたのかなと思っています」


 広瀬九段は3勝3敗。菅井八段、近藤七段に並ぶ星ながら、二次予選から勝ち上がってのリーグ参加で順位最下位のため、規定により陥落となりました。


広瀬「最初2連勝してたんですけど。中盤で2連敗してしまったので、まあ、こんなもんかなっていうとこですね」

プレーオフは25日

 西田五段は永瀬九段と並ぶ星でプレーオフに進出。対局は11月25日におこなわれます。


西田「間隔も近いので(準備は)ちょっと難しいですけれども。体調に気をつけて一生懸命がんばりたいと思います」


将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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