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藤井聡太王将への挑戦権を獲得するのは誰か? 11月20日、王将リーグ最終7回戦

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 11月20日。東京・将棋会館においてALSOK杯第74期王将戦・挑戦者決定リーグ最終7回戦がおこなわれます。対戦カードは以下の通りです。

▲永瀬 拓矢九段(4勝1敗)-△近藤 誠也七段(3勝2敗)

▲西田 拓也五段(4勝1敗)-△広瀬 章人九段(3勝2敗)

△羽生 善治九段(1勝4敗)-▲佐々木勇気八段(0勝5敗)

※菅井 竜也八段(3勝3敗)=全局終了

挑戦の可能性があるのは3人


 永瀬九段(4勝1敗・3位)と西田五段(4勝1敗、5位)は勝てば5勝1敗となり、プレーオフ以上は確定です。5勝1敗が1人だけになれば、プレーオフもなく、挑戦権獲得が決まります。

 近藤七段(3勝2敗・4位)は自身が永瀬九段に勝ち、西田五段が広瀬九段(3勝2敗・5位)に敗れれば4勝2敗で4者が並びます。

 順位上、永瀬九段と近藤七段が上位2人となり、プレーオフを戦うことになります。


残留争い


 リーグ陥落は成績下位(同成績ならば順位順)の3人。羽生九段(1勝4敗・2位)と佐々木八段(0勝5敗・5位)はすでに陥落が決まっています。


 挑戦の可能性も残す近藤七段は、勝てば残留以上が決まります。負けると残留できるかどうかは、広瀬九段の結果次第となります。

 広瀬九段(3勝2敗・5位)は順位の関係上、プレーオフ進出の条件である上位2人に入る可能性がなく、残留を目指しての戦い。自身が勝ち、近藤七段が敗れると残留が決まります。

 前期挑戦者・菅井八段(3勝3敗・1位)は一足早く全局を終えています。近藤七段か広瀬九段が敗れると、残留が決まります。


永瀬-近藤戦


 永瀬九段は今年度、王座戦五番勝負で藤井王座に挑戦しています。もし今期王将戦で挑戦権を獲得すると、藤井-永瀬のタイトル戦番勝負は4回目となります。


 近藤七段は棋王戦で勝者組決勝に進んでいます。


 近藤七段はまだタイトル挑戦の経験はありません。この冬、一気に王将と棋王、ダブル挑戦を果たす可能性もあります。

 永瀬九段と近藤七段は公式戦で9回対戦し、永瀬6勝、近藤3勝。昨年の王将リーグでは永瀬九段先手で角換わり腰掛け銀となり、永瀬九段が勝っています。

 今期も永瀬九段先手。相居飛車の現代最新形が見られそうです。

西田五段-広瀬九段戦

 一次予選から快進撃を続けてきた西田五段。もし挑戦権を獲得すると、一次予選からの参加者では、史上4人目の例となります。

 広瀬九段は前節、菅井八段との対戦で苦しい場面をしのぎ、千日手に持ち込んでいます。そして指し直し局を制し、大きな白星をあげました。

 西田五段と広瀬九段は過去に対戦がなく、今回が初手合となります。振り飛車党の西田五段が、先手でどこに飛車を振るのかが、まず注目されるところです。

羽生九段-佐々木八段


 王将位通算12期のレジェンド羽生九段と、現在竜王挑戦中の佐々木八段。この両者が最終局を前に陥落が決まってしまうあたり、王将リーグの厳しさが表れています。とはいえ、今回の対戦もまた、好カードには違いありません。

 両者の過去の対戦成績は羽生3勝、佐々木2勝。昨年の本リーグでは後手の羽生九段が横歩を取らせて勝っています。

 基本的に居飛車党ながら、なんでも指しこなせる羽生九段。後手でどのような作戦を見せるでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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