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青嶋未来六段、朝日杯二次予選を通過 佐藤天彦九段、ボタンを押し忘れて時間切れ負け

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 11月10日。東京・将棋会館において、第18回朝日杯将棋オープン戦・二次予選がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 結果は以下の通りです。

【1回戦】10時~

及川拓馬七段●-○青嶋未来六段

佐藤天彦九段○-●井出隼平五段

【決勝】14時~

佐藤天彦九段●-○青嶋未来六段

 決勝では青嶋六段勝勢の終盤で、佐藤九段は74手目を指したあと、対局時計のボタンを押し忘れてしまい、時間切れ負けとなりました。

 二次予選を勝ち上がった青嶋六段は本戦トーナメント(ベスト16)に進みました。

佐藤九段、ボタンを押すのをうっかり


 朝日杯の持ち時間は40分。二次予選では指したあと、対局者自身が時計のボタンを押す方式です。昨年の佐藤康光九段-西山朋佳女流四冠(現女流三冠)戦では、佐藤康光九段が危うく時間切れになりそうな場面も見られました。

 本日午前に始まった1回戦を勝ち上がり、午後からの決勝で対戦した佐藤天彦九段と青嶋未来六段。後手の佐藤九段は最近得意としている四間飛車に振りました。

 青嶋六段優勢で迎えた終盤。72手目、佐藤九段は歩を打って王手をかけます。この瞬間、本局2度目の駒柱ができていました。

 青嶋六段は持ち時間を使い切っていて、一手60秒未満で指す一分将棋。

「50秒、1、2、3、4、5」

 文字通り機械的な秒読みの中、青嶋六段は玉を一つ右に寄って逃げたあと、ボタンを押します。

 対して4分を残していた佐藤九段。ここですべての持ち時間を使い切ったあと、一分将棋に入ります。

「50秒、1、2、3、4、5、6、7、8、9」

 そこまで読まれて74手目、佐藤九段は相手陣一段目の龍を、三段目に引きます。そして指したあと、その右手はボタンの方に伸びず、ひざの上に置かれました。ボタンの押し忘れです。

「10」

 その音声に驚いた様子の佐藤九段。

「あっ」

 と言ったあと、ボタンを押しましたが、時すでに遅し。無念の時間切れ負けとなりました。

 佐藤九段は潔く、すぐに負けを受け入れます。

佐藤「負けました」

青嶋「ありがとうございました」

 両対局者は一礼し、思わぬ形での終局となりました。

佐藤「いや、そうか・・・。失礼しました」

 最後はハプニングもありましたが、青嶋六段は堂々たる内容での本戦進出といえそうです。

 本戦では二次予選通過者と、前回優勝・永瀬拓矢九段、準優勝・藤井聡太七冠らシード勢が加わった16人のトーナメントで優勝が争われます。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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