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ラグビー日本選手権見直しの効果は。

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)

50回の節目を過ぎたラグビーの日本選手権の大会方式が今年度から、再び、変更されることになった。全国クラブ大会覇者とトップチャレンジ1位の枠が消え、大学チームの出場枠が「2」から「4」に増える。「普及」より「強化」ということか。

参加チームの実力差が広がり、日本選手権の見直しは必然だった。ことしの大会ではクラブ王者の六甲ファイティングブルが大学王者の帝京大に5-115で敗れた。その帝京大は次の準々決勝でトップリーグのパナソニックに完敗した。帝京大の岩出雅之監督は漏らしていたものだ。大学選手権優勝チームにとっては、クラブ覇者やトップリーグベスト4の戦いはミスマッチではないか、と。

少し歴史を振り返れば、日本選手権はトップリーグが発足した2003年度、大きく変わった。参加チームを「8」から「22」に大幅に増やし、クラブ覇者にも枠が与えられた。翌04年度、参加チームが「8」に戻っても、クラブ覇者の枠は残った(2008年度からは10チーム参加)。だが練習環境の違いもあって力不足は否めず、クラブ代表は日本選手権で1勝も挙げられず、大敗が続いた。

確かに力関係でいくと除外はやむをえないかもしれない。だがクラブチームの門戸が閉ざされることには一抹の寂しさを感じる。ワイルドカード枠の予選方式を導入して、日本選手権への挑戦権を残すような措置がとられてもよかったのでは、と思う。

これで出場枠はトップリーグの6チームと大学選手権のベスト4の「10」となる。日本選手権のレベルアップにこだわるなら、トップリーグの参加枠を2つ、増やす選択肢もあった。ただ、それではトップリーグと同じよう対戦が多くなることになる。

大学チームが増えることで、大会の人気(価値)は上がるだろう。でも現状のスケジュールでいくと、チーム数拡大が大学強化に直結するかどうかはわからない。1月下旬~2月上旬は試験があって、チームが練習に集中できる環境にはない。大学のレベルアップや試合の魅力アップを狙うなら、大学チームのコンディショニング、準備が十全でなければ効果は薄いだろう。

つまりは、日本選手権の時期が検討されてもいい。例えば、日本選手権とトップリーグプレーオフの順番を替える。大学選手権とトップリーグのリーグ戦が終わった後、日本選手権を開き、そのあとトップリーグのプレーオフを実施するといったカタチである。

ついでにいえば、日本ラグビーの強化を考えた場合、やはりトップリーグのレベルアップが一番である。日本選手権に出場する6チームと、それ以外のチームの実力差、試合数やシーズンの長さの差をどうするか。

いずれにしろ、これがベストという日本選手権の大会方式はなかろう。国内外の環境の変化の中、試行錯誤がつづく。大事なことは、国内のシーズン全体の中で同選手権のあり様を考え、方式変更の理由と狙いを現場のチームとファンに明確に示すことである。 

【「スポーツ屋台村」(五輪&ラグビー)より】

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2024年パリ大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。酒と平和をこよなく愛する人道主義者。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『まっちゃん部長ワクワク日記』(論創社)ほか『荒ぶるタックルマンの青春ノート』『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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