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「夏休み、なくてよい」物価高で子供がお腹をすかせて…電気代も怖い!親たちの叫び

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
(写真:アフロ)

 物価高が続く中、困窮子育て世帯の支援をする認定NPO法人キッズドアは「2024夏 子育て家庭アンケート」を実施した。

対象:キッズドア・ファミリーサポート登録世帯(2020 年にコロナ禍に対する緊急支援のため発足。現在は困窮子育て家庭を対象に物資・情報・就労支援)
調査期間:2024年5月27日~年6月3日
回答数:1,821件

 夏になり、子どもは暑いという。だが電気代が気になり、エアコンの使用も躊躇する。夏休みは、図書館に行ってもらおうか。物価高で三食の用意も大変だし、旅行も行きにくい。近場でといっても、テーマパークのチケットも、映画も、高い。子どもの居場所をどうしよう…。「夏休みにワクワク」ではなく、このように心配する家庭は少なくない。

夏休みの実態

 このたびキッズドアは、支援している困窮家庭に小学生・中学生の夏休みの実態を調査した。6割の保護者が、夏休みについて「今より短い方がよい」(47%)、または「なくてよい」(13%)と考えているという驚きの結果だ。「生活費の増加、昼食準備の手間、経済的理由による夏休みの体験活動の不足、給食がなく子どもの栄養状態が気になる」などが、主な背景だ。確かに、何をするにもお金がかかる。子どもは学習、親は仕事もしなければならない。

 のんびり田舎に行って、プールに入って、友達と遊んで、そんな楽しい夏休みは、過去のものなのかもしれない。地球温暖化が進み、学校のプールも暑すぎて入れない日が多いし、学童保育は満員、夏の行事もコロナ禍で変わった。何より物価高が進んでいて、食費も交通費も気軽に出せない。

 アンケートによると、夏休みのアクティビティについて「特に予定しているものはない」との回答が過半数。海水浴や家族旅行等の多くのアクティビティについて、予定している家庭は1割未満だった。

【夏休みに関する自由記述】
 学校の長期休みは給食がないので、毎年恐怖です。電気代も高いし、食費もかかるし夏休みは辛いです。

 小学 2 年生の息子がいます。今年度の学童に落ちてしまったので、今は私が帰ってくるまで 4時間ほどお留守番をしてもらっていますが、夏休みは完全に毎日お留守番となってしまうためどうしようか悩んでいます。

 長期休みが明けると、家族で旅行に行った友達とかの話を聞いてきて羨ましそうにしているので格差を感じる。

物価高騰の影響

 昨年同時期と比べた家計の変化として「とても厳しくなった」が最多の約8割。「やや厳しくなった」も合わせると、98%の家庭が家計の悪化を実感している。

風邪などにかかりやすい、体重が増えない、身長が伸びないといった子どもの成長や健康の問題も、低所得の家庭ほど深刻な状況だ。所得100 万円未満では「子どもが健康診断で栄養不良や肥満・やせ傾向を指摘された」との回答が18%に。

【物価高騰の家計や生活への影響に関する自由記述】
衣食住に対してお金の心配ばかりで、おびやかされています。

 物価上昇に賃金がついていかず、電気やガス代も高くなったので仕事が休みの日などはお風呂をやめている

 何もかもが高くなった上に、賃金が上がらず生活が苦しくなっている。コロナになっても今までのように補助や補償もない。小学3年生の長男も、熱があっても身体がきつくても我慢して隠すようになってしまった。私が仕事を休む事になると給与が減る・生活が大変になると遠慮して言えないと言われてしまい、辛い。

電気代も食費も衣類も学用品も全部高くなり、本当に苦しいです。会社ではひとり親の多子世帯のため休む事も増え、周りの目が有るから何とかしてくれと言われ、来月退職する事になりました。子ども達の頑張っていて意欲的だった習い事も諦めました。

 食べ盛りの子供3人いますが、一番下の小学生は学校内の内科検診で、体重の減少でひっかかりました。満足な量を食べさせてあげられていないので申し訳ないと思っています。

食材が欲しい時に欲しい量を買えず、おかず一品の日が増え、子供が常にお腹を空かせている。コロナが落ち着いてきたら食料支援も減ってしまった。

有料の学習塾の利用

 夏休みは、子どもの学習についても気になる。有料の学習塾を利用している割合は、アンケートによると小学生15%、中学生26%、高校生12%。いずれの年代でも文部科学省「子供の学習費調査」で報告された利用割合を大きく下回っているという。

 有料の学習塾に通っていない理由で一番多いのは、「塾費用の経済的負担が大きい」(89%)。現在の収入では塾に行けない、塾代が払えず辞めることになったという声、無料や安価な学習支援を求める声がある。

【塾に関する自由記述】
 子供が小学 4 年生で、学習内容も難しくなりつつあるので塾に行かせたいのですが、今の収入ではとても行かせることはできません。これからどんどん学習内容も難しくなっていくので、私が見られるのも限界があります。

 物価が上がり、塾や習い事の費用も高く、子どもたちが希望するもののさせてあげられないのが現状です。居場所にもなると思いますが、近くに学習支援の場があればありがたいと思っています。

 塾へ通いたいと言われ4月5月はどうにか塾代を捻出したが6月は払えない為辞める事になった。県が無料塾を開いているが車の運転が出来ない為送迎も出来ない。勉強はできるほうなので大学へ進学させてあげたい。せめてオンラインで塾と同等の勉強を無料で受けられるような仕組みがあればと思います

 親の就労

 仕事を増やし、継続するためには、子どもの病気や不登校時のサポートが必要だという。スキルを得ることも、求められている。

【就労に関する自由記述】
 シングルマザーでも積極的に採用(非正規ではなく正規社員)してくれる企業が増えると嬉しいです。

  小学生の子供は病児保育がなく、仕事を休むことになってしまう。有給はすぐなくなり、欠勤になりお給料が減ってしまう。

不登校の子供の対応をしたいのにその為には仕事を休まなければならない。そうすると収入が下がる。不登校の現状が変わらないと、状況を変えることができない。

 仕事に活かせる色んなジャンルの資格支援を増やしてほしいです。現在でも資格支援はありますが、日程が土日に絞られていることがほとんどです。

スキルを身につける為に学校に通いたくても、資金すら用意できない状態です。学ぶ為の支援制度があっても、一旦自己資金で支払い、後から支援金を受けるなどになる為、結局学ぶことすら出来ないでいます。

 困窮子育て家庭に必要な支援

 アンケートでは、物価高騰の中、働いて収入を増やそうにも、所得上限を超えると非課税や児童扶養手当等の対象から外れ、かえって生活が苦しくなるという声が寄せられた。

 高校生や大学生等のいる家庭からは、学費や進学費用、昼食代、交通費等の様々な費用がかかるが、中学生までと比べて支援は少なく、苦しいとの回答が多くあった。

 他に、パソコンやインターネット等のデジタル環境の格差も明らかになった。

 家に Wi-Fi 環境、パソコンなどなく携帯も最小限のギガだけで、高校生になるまでは携帯を持たせていないので、パソコンや、Wi-Fi 環境などの支援があれば嬉しいです。

小中学校で使うタブレットの家庭学習が当たり前になっておりますが、インターネット通信費の負担が大きく感じます。

 キッズドアは、こうした声を受け、以下の四つの提言を発表した。

①夏休みを迎える困窮子育て家庭に現金給付を

② 困窮子育て家庭の体験格差を埋める支援を

③年収300万円未満の困窮子育て家庭へ緊急支援を

④困窮子育て家庭にも賃上げを

支援や寄付の情報は、キッズドアサイトへ

 ◇

 筆者も、長期休みの子どもの居場所に苦心してきた。安全の確保だけでなく、休み中は三食が必要だ。ある高校生ママは、「いまどきお弁当は一食400円の材料費ではできない。学校のカフェテリアで割安なご飯を食べた方がいい」というが、夏休みはそれもなくなる。また、「塾の夏期講習に行くのは勉強のためというより、居場所が得られるし、レジャーより安いから」という声もある。

 続く物価高により、独身の女性も、子育て家庭も、シニアの夫婦も、それぞれの立場の人が不安な生活を強いられている。最近では「子持ち様」というワードが生まれ、分断が強まっている。だが、アンケートで明らかになった現状を知ってもらい、お互いにプラスになる行動もできると思う。

 例えば、フードドライブに寄付して、必要な人が分かち合う。子育て支援の現場で、シニアや若者、短時間労働をしたい人に、有償で活躍してもらう。制服、学用品、洋服のリユースを進める。立ち寄りやすい公共施設や地域の居場所を増やす。子どもカフェや無料塾の情報を広める。地域や自治体によっては、既に行われているところもある。まずは既存の仕組みを活用し、充実させてほしい。

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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