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動物園の「余りやすい動物」とは? ペットのバースコントロール(避妊等)から考える

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:ロイター/アフロ)

日本に初めて動物園ができて、まもなく140年。動物行動展示で北海道旭川市の「旭山動物園」が話題になって、もう20年以上が経ちます。動物園の来院者数が減っていて、その上、コロナ禍で存続の危ない動物園があることは、ある程度知っていました。そんな中、ニュースを読んでいて、動物園の単語として、「余りやすい動物」「余剰動物」があるのはショックでした。そこで、犬猫の避妊・去勢手術から、動物園の「余剰動物」とは、どういうことかを見ていきましょう。

 動物園には「余りやすい動物」がいる。繁殖しやすく寿命は長め。飼育に必要なスペースが広く、プールなど特別な施設も不可欠――。代表的な存在がカバだ。動物園関係者はカバを、余剰動物になりやすい「難しい動物」だと言う。

出典:動物園「余りやすい動物」の運命 あるカバが歩んだ道

記事によりますと、カバが代表的な「余りやすい動物」「余剰動物」だそうです。

「余りやすい動物」の定義は

『世界動物大図鑑』より
『世界動物大図鑑』より

「余りやすい動物」の定義は、以下です。

・繁殖しやすい。

・寿命は長い。

・飼育に必要なスペースが広い。

・プールなど特別な施設などが必要。

などです。

カバだけでなく、ライオンもそうです。ライオンもカバと同様で、繁殖しやすい動物です。人気はあるのですが、成長すると近親交配や喧嘩などのリスクが出てきます。エサはたくさん食べます。そのためライオンは、無料で他の動物園に譲渡したり、値段がついても10万円ほどで取り引きされていると言います。人気の猫は、ペットショップでは、40万円とか50万円の値段がついている子は、珍しくありません。つまり、いまやライオンは猫より安くなっています。これが、余りやすい動物の現実なのです。

動物園は、世界的にみて動物の「種の保存」を基本に野生動物を飼育、展示している施設です。そして、そこで働く人たちは、プロフェッショナルの集まりです。そのような人たちが、余りやすい動物を作りだしていいのでしょうか。次は、そのような動物を出さないためには、どうすればいいのか? を考えてみましょう。

バースコントロール(避妊・去勢手術)を

猫は、つがいで飼っていて、避妊・去勢手術をしないと1年間で20匹までに増えてしまいます。同じ空間にいれば、猫も近親交配をします。それで、私たち獣医師は、多頭飼育崩壊にならないように、飼い主に避妊・去勢手術を促します。

犬は、発情のときに、膣から血液様成分の分泌物が出て、人にはわかりやすいです。一方、猫の発情は、犬よりわかりにくいです。もちろん、猫は、人の赤ちゃんのように鳴いたり、くねくねしたりします。もちろん、猫同士は、発情がわかります。

動物園にいる野生動物も人には、簡単に発情がわかりくい子もいます。それで、飼育員では気がつかないうちに、妊娠していたということもあるのでしょう。

それでも、人の管理下にいる動物たちは、出産したからといって、経済的、物理的に全てを飼うわけにはいかない現実があるのです。望まない命は、産み出すべきではないので、バースコントロールをしっかりする必要がありますね。

カバやライオンには罪はない

『世界動物大図鑑』より
『世界動物大図鑑』より

自然界では、カバは、アフリカのサハラ砂漠より南に、ライオンもほぼアフリカ大陸に生息します。そんな動物が日本の動物園に連れて来られて、繁殖がしやすいので、「余りやすい動物」と呼ばれていいのでしょうか。大きな野生動物を発情が来ているからと言って、隔離するのは、難しいことは理解できます。しかり、やはり犬猫と同じように、望まない命を作りだすべきではないでしょう。

まとめ

公立の動物園は、全国に84施設あります。

動物園には、「○○の赤ちゃんが産まれました!」と知らせがでるなど、ほのぼのしたイメージがありますね。しかし、現実は、自治体の財政難もあり、限られた予算やスペースで経営状態は、よくないと聞きます。これからも存続していくために、みんなで動物園の現状を知ることも大切なのでしょう。動物園の取り組みだけでは、どうしようもない状態になってきています。動物園が、変換期に来ていることを気づいて、動物園の存在意義を考える人が増えることが、解決方法のひとつなのでしょう。

参考サイト

動物たちはどこへ 変わりゆく動物園

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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