濃厚接触者の自宅待機期間が検査によりさらに短縮化 現時点の考え方まとめ
★注意点:2022年9月8日に記事を改訂しました(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20220908-00313794)
オミクロン株による第6波が次第に落ち着いてきましたが、「下げ止まり感」を感じており、このまま下位系統BA.2が主体の第7波に突入するのではないかと懸念しています。
デルタ株の頃より新型コロナの重症度は低下したものの、感染者数が多いことから、すでに濃厚接触者の同定は困難となりつつあります。このたび、濃厚接触者の同定や自宅待機期間に関して新たな方針が提示されました。
濃厚接触者の定義
さて、オミクロン株であってもBA.2であっても、濃厚接触者の定義はこれまでと特に変わりません。自治体によって表記が異なりますが、概ね以下の通りとなります(図1)(2022年3月31日追記:航空機内の定義変更)。
陽性者と同居していると濃厚接触者になります。それ以外では「1m以内・15分以内」というのが原則です。
これまでは保健所が濃厚接触者を認定していましたが、業務逼迫もあり、現在は医療機関や高齢者施設の発生例やクラスター発生などを除いて保健所の介入は行われていません。
濃厚接触者の同定は「限られた場面」へ
オミクロン株については、陽性者から別の人に感染する期間は約2日とデルタ株の半分程度で、潜伏期間も約3日と短いため、保健所が介入してもすでに感染が広がった後という可能性が高いです。
そのため、濃厚接触者の同定は「限られた場面」に集中されることになりました(1)。同一世帯内、重症化リスクが高い患者さんが集まる医療機関や高齢者施設における同定を原則とし、事業所内では不要とされました。5人以上のクラスター発生などがなければ、感染者が1人出ても、事業所内で濃厚接触者を同定することは求めません。
同一世帯で発生した場合においても、保健所が毎回介入するわけではなく、陽性者に対して「同一世帯内は濃厚接触者に該当する」という周知をおこなえば濃厚接触者を細かく同定しない方針となりました。
これにより、濃厚接触者の同定に多くの時間を割いていた保健所の業務負担がかなり軽減することになります。
濃厚接触者の自宅待機期間の考え方
濃厚接触者の自宅待機期間は、「7日間」です。非同居の場合は最終接触日を0日目、同居の場合は感染対策を講じた日を0日目とし、8日目に解除となります(図2,3)。
さて、同一世帯内で濃厚接触者が次々に新型コロナを発症した場合はどうでしょう。感染しなかった濃厚接触者はいつまで自宅待機すべきでしょうか?
自治体への通知(1)では、「同一世帯等の中で別の同居者が発症した場合は、改めてその発症日(同居者が無症状の場合は検体採取日)を0日目として起算する」と記載されているため、自宅待機期間は原則延長となります(図4)。
ただ、当初から厳格な対策ができておれば、最初の陽性者に対して感染対策を講じた日を起算として8日目の解除でよいとする自治体もあります。
自治体のウェブサイトには濃厚接触者の自宅待機期間の考え方が書かれていることが多いですが、直接問い合わせないと分からないこともあります。
いずれにしても、濃厚接触者の同定そのものが緩和されていることから、こうした規定は骨抜きになりつつあります。雇用者や濃厚接触自身の判断に委ねられている部分が多いです。
検査を行うことで自宅待機期間が短縮
さて、濃厚接触者であっても、これまで医療従事者に関しては毎日検査を行えば就業可能とされていました。これが、医療従事者だけでなく、介護従事者、保育所・幼稚園・小学校等の職員、障害者支援施設等の従事者にまで拡大されました(2-5)。ただし、他の職員による代替が困難な人や新型コロナワクチンを接種している人に限られます(図5)。
これまでは、4日目と5日目に抗原定性検査(5日目のみにPCR検査または抗原定量検査でも可)をおこなうことで自宅待機期間を短縮することができたのはエッセンシャルワーカーのみでしたが、この制限が撤廃されました。つまり、一般の方も、抗原定性検査などを用いれば、自宅待機期間を5日に短縮することが可能です(図6)。
あくまで「毎日勤務することが可能」というだけであって、決して「毎日勤務しなければならない」というわけではありません。
そのため、実は医療機関においてもこの「毎日検査・毎日勤務」の制度を積極的に導入している施設は一部に過ぎません。
まとめ
濃厚接触者となった場合、以前は行政でPCR検査等が行われていましたが、現在はクラスター発生などでない限り、濃厚接触者の同定は行われていません。
濃厚接触者は、陽性者との最終接触日から一定期間、以下のことを遵守していただく必要があります。
・発熱(1日2回の体温測定)、咳の悪化、呼吸が苦しくなるなどの健康状態の自己観察
・不要不急の外出を自粛する(食料などの買い出しは除く)
・外出する際は、マスクの着用と手指衛生などの感染予防策をしっかりとする
・公共交通機関の利用は控える
・出勤・登校・登園、およびデイサービス・福祉施設等の利用は控える
保健所の介入が減ったため、濃厚接触者の考え方をどう適用するかは、雇用者や濃厚接触者自身に委ねられている部分もあります。
しかし、新たな変異によってウイルスの毒性が増すと、再びこの基準が変更になる可能性もあるため注意してください。
(参考)
(1) B.1.1.529 系統(オミクロン株)が主流である間の当該株の特徴を踏まえた感染者の発生場所毎の濃厚接触者の特定及び行動制限並びに積極的疫学調査の実施について(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000913725.pdf)
(2) 介護従事者である濃厚接触者に対する外出自粛要請への対応について(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000914003.pdf)
(3) 保育所、幼稚園、小学校等の職員である濃厚接触者に対する外出自粛要請への対応について(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000913993.pdf)
(4) 医療従事者である濃厚接触者に対する外出自粛要請への対応について(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000913724.pdf)
(5) 障害者支援施設等の従事者である濃厚接触者に対する外出自粛要請への対応について(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000913995.pdf)