間違いだらけの共働きの「お金の教科書」5つの誤解を解いてみよう
共働きがスタンダードな時代に「マニュアル」はまだ未整備
「共働き夫婦 お金の教科書」という本を最近出版しました。実は専業主婦と会社員の夫という「片働き」より、専業主婦のほうが2倍いるほど圧倒的多数の時代に日本は突入しています。
しかしこの変化は2000年以降に明確になったばかりで、世の中はまだ共働きが当たり前の時代に対応し切れていません。
お金のマニュアルも、まだ十分に共働き家庭に対応しきれていないようです。だいたいモデルに出てくるのは専業主婦、せいぜいパートに出ている家族です。
ということで今回は「間違いだらけのお金の教科書」というテーマで、共働き夫婦のお金のルールについてよくある間違いを正してみたいと思います。
共働き夫婦5つの間違い
・間違い1「寿退職で仕事を辞めて専業主婦になればラクになる」
・間違い2「パートは税金や年金を払わずにすむのでお得」
・間違い3「応募したって、どうせ正社員にはなれないからパートを続ける」
・間違い4「ワンオペ育児、大変なのは私(ママ)が要領が悪いせい」
・間違い5「今のやりくりも苦しい、どうせ一生このままに違いない」
間違い1「寿退職で仕事を辞めて専業主婦になればラクになる」
「辞めたい」と思うのは誰でも思うことですが、実際に辞めるのはまた別の話です。しかし結婚というタイミングと、子どもの誕生や子育てという時期には退職がちらつきます。
しかしここで辞めないことが大切です。そもそも専業主婦になれば夫ひとりの収入でふたりの生活をすることですからおこづかいは半減、服を買ったり旅行をする予算は半分になるだけのことで「時間はあれど、カネはない」になります。
また、一度辞めてから正社員での再就職を目指すと、保活で不利になったり、時短勤務前提になるため採用のチャンスがなかなか得られなかったりします。産休からの復職をクビにすることは法律でできないので、育休をとり復職、時短勤務をしながら共働きを続けることが一番有利な選択肢です。
寿退職、おめでた退職はできる限り避けるべきです。
間違い2「パートは税金や年金を払わずにすむのでお得」
一度辞めても、パートで働けばいいのでは、と思う夫婦は多いと思います。パートの範囲で働けば税金はほとんどかからず、年金保険料や健康保険料も払わなくてすむので一見すると有利なように見えます。
しかし、正社員共働きをキープするほうが正解です。なんといっても生涯賃金では大きく差がつきます。30歳で正社員を辞めて年収100万円のパートを続けた場合と正社員を続けた場合では、少なく見積もっても1億円、ケースによってはそれ以上の収入格差がでます。保険料や税金をどんなに引かれても、やっぱりプラスです。
しかもガンガン引かれた年金保険料は将来の年金額に還元されるので、「パートと会社員夫婦」より「ふたりとも会社員夫婦」のほうが年100万円くらい年金が多くなります。女性の寿命を考えれば2500万円くらい多い収入です。退職金ももらえればさらに老後の格差になります。
健康で働ける元気があるならば、パートはまったくお得ではありません。
間違い3「応募したって、どうせ正社員にはなれないからパートを続ける」
1995年頃から2015年頃までに就職した人はおおむね就職氷河期世代です。つまり子育て世代のほとんどはここに当てはまります。子育て中でパートや契約社員で仕事をしている人の多くは「どうせ正社員にはなれない」と思い込んでいます。
実はこれ、「2018年現在」に限れば状況は変わっています。まず、新卒大学生はほとんど全員が内定を得ています(ずるい!と叫びたくなりませんか?)。また、転職希望者にも正社員の有効求人倍率が1.0倍になっているほど過去に例のない「大チャンス」になっているのです。
超簡単にいえば、就職希望者10人がいたとき、求人票が10枚あるようなものです。5~6年前には求人票が2~3枚だったとすれば、今こそ正社員を前提に転職活動をするべきなのです。
正社員の仕事が大変だったとしても、年収100万円を350~450万円にアップできたとしたらどうでしょうか? 正社員夫婦になれば、人生の収支は大きく改善する一歩目になります。今パートや契約社員で働いている人も、専業主婦の人も、ぜひ正社員目指して「就活」をしてみてください。
けっこうチャンス、あるかもしれません。
間違い4「ワンオペ育児、大変なのは私(ママ)が要領が悪いせい」
共働き最大の課題は「子育て」です。子どもがいない間は共働きはダブルの年収で楽しく生活できます。家事(特に食事)の苦労は外食でだいたいやりくりできます。
しかし子育てが始まるとそうはいきません。育休が終わって復職すると育児と家事に忙殺されるようになります。子どもが自分で何でもできるようになるまで何年もその状態が続きます。要するに「ワンオペ育児」です。
しかしワンオペ育児に疲れている女性は何も悪くありません。共働きなのに、「ワンオペ」なのが悪いのです。時短勤務をしているからとママが全ての育児家事を引き受ける義務はありません。むしろ男性にも上手に休んでもらって(半休とか時間休を取得してもらうとか定時退社をときどきしてもらうとか)、家事や育児をしてもらうのです。
夫の会社も定時退社や有休取得を奨励していたりします(最近はやりの「働き方改革」のおかげです)。ぜひ男性にも家事育児をもっとさせて、共働きを乗り切りましょう。
間違い5「今のやりくりも苦しい、どうせ一生このままに違いない」
最後の間違いは「こんなにしんどい共働きと家事育児の両立、ずっといいことはない」という絶望感です。実はそんなことはありません。
正社員として共働きで働くことは、「ダブル退職金、ダブル厚生年金」で老後に大きな余裕を手に入れます。経済格差は3000万円以上になると見込まれます。
ただし「正社員共働き」に限ります。パートや派遣社員は通常退職金が出ないからです。厚生年金も派遣社員がフルタイムで働いた場合はもらえますが、パートには出ません。
正社員はしんどいのですが、ここが頑張りどころだと思ってください。人生の最後に高笑いするのは共働き正社員夫婦なのです。
共働き夫婦のための新しいお金のルールブック(教科書)が必要だ
5つ、共働き夫婦が抱いている「よくある間違い・勘違い」を紹介してみましたが、どうだったでしょうか。ひとつかふたつ、「それは考えたことがなかった」というヒントがあったら幸いです。
わが家も共働き夫婦です。毎日ケンカもしながら、必死に仕事をして家事と育児をしています。しかし、その先に「ちょっとした明るい未来」があると思えば、苦労も乗り越えられると思っています。
できるだけ、正社員の共働き、というポジションから降りないでください。目の前の家計、数年から数十年先の家計はもちろん、人生の最後を見据えてもやはり「共働き正社員夫婦」で居続けることが最強であるからです。
――拙著「共働き夫婦 お金の教科書」では、家計の分担や貯蓄の方法、資産運用に役立つ口座選びまで、共働きのお金のノウハウを「2018年バージョン」でまとめています。よろしければご覧ください。 →プレジデント社 書籍紹介ページはこちら