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【ラグビーW杯2023フランス大会】日本代表チリ戦勝利の3ポイントとイングランド戦の鍵

斉藤祐也元ラグビー日本代表/ラグビー解説者
力強い突破を見せたLOアマト・ファカタヴァ選手(写真:ロイター/アフロ)

日本代表対チリ代表を終えて

 ワールドカップ開幕前、選手は口々に初戦の難しさを語っていた。思い返せば、2019年の初戦、ロシアを相手に前半5分にトライを献上し、流れの悪いスタートを切ることになった。7分後に日本代表がトライするが、前半は思うようなゲーム運びができず12-7で前半を折り返している。(結果30-10日本代表勝利)。チリ戦も前大会同様に開始5分にトライを与えた。4年前と大きな違いを感じたのは、3分後にトライを返し同点にしたこともあるが、チリ陣内で戦う意図が明確に表れたことである。

 ワールドカップは文字通り世界一を争う大イベントである。世界中から注目され、結果次第では選手キャリアが大きく変わることもある。観客数も多く、これまで経験してこなかった声援やブーイングを感じられることから緊張感の高まるゲームになる。今ではTMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)など正確なジャッジが下されるが、過去には覆されるようなレフリングがあったことを記憶している。

 どの時代もワールドカップは、国(チーム)と選手が最高のパフォーマンスを目指す大会である。

日本を勝利に導いた3つのポイント

 日本代表は、初戦で4トライ以上のトライを得て5ポイント獲得して勝利した。勝利のポイントを3つに絞ってみた。

1.エリア獲得率 

 ロングキックとパントキックを多用し、チリ陣内でプレーする時間を長くした。前半終了時は78%、終了の10分間は81%と高い数値を叩き出していた(終了時66%)。キックは自チームからボールを手放すことであり、カウンターアタックなどでリスクを背負うことになる。しかし、日本代表は相手に攻撃権を渡してもディフェンスで相手のペナルティを誘うことやターンオーバーすることに成功していた。終了後のタックル数を見ても明らかだった(タックル数:日本151回/チリ101回)。また、相手陣内でのターンオーバー数は日本が11回に対してチリは5回だった。チリ陣内で長くプレーすることからトライ機会が増えたと言える。

2.ゴールキック成功率

 松田選手によるトライ後のコンバージョンゴールは成功率100%だった。勝ち点5を獲得するため、トライする姿勢を最後まで貫いた。よってPG(ペナルティゴール)を狙う機会はなく、全てコンバージョンであった。予選プールを勝ち抜くためにはポイントを稼ぐ必要があるが、格上である強豪国に対してはトライすることは簡単ではない。次戦より勝利するにはPG(ペナルティゴール)を狙うシーンが増えてくるだろう。世界のリーグを見ても上位チームの成功率は平均75%~80%であるため、勝つためにはそれ以上の成功率が必要とされる。松田選手のコンディションであれば今後も高い成功率が望める。

3.ペナルティ数

 日本代表のペナルティ数6(チリ代表9)は、W杯開幕前のゲームと比較しても少ない数字だった。規律を重んじる日本代表として成果ある結果であった。次戦イングランド、予選プール最終戦アルゼンチンには、飛距離のある正確なキッカーがいるため中盤エリアのペナルティを無くさなければならない。

ラグビーワールドカップ2023フランス大会 ゴールを100%成功させたSO松田選手
ラグビーワールドカップ2023フランス大会 ゴールを100%成功させたSO松田選手写真:ロイター/アフロ

イングランド戦に向けて(注目選手/課題)

 注目選手FW(フォワード)では、怪我から復帰し初戦で高いパフォーマンスを見せたアマト・ファカタヴァ選手とワーナー・ディアンズ選手の存在がイングランドにプレッシャーを与えることになるであろう。リーチマイケル選手は力強いランプレーと窮地を救うタックルなどゲームを読む力は最高だった。BK(バックス)は、松田力也選手の正確なキックと松島幸太朗選手のカウンターアタックなど走る機会を増やすことが鍵になりそうだ。

 チリ戦のブレイクダウン(ボール争奪)では、相当な圧力を掛けられるシーンが多く、球出しの遅れが見られた。イングランドは、チリ以上にフィジカルが強く、ブレイクダウンでプレッシャーを掛けることは予想がつくため、FWの仕事量が勝敗を分けるであろう。

 タックル成功率は76%だった。世界のリーグを見ると上位チームは平均85%以上の数値が出ているため、成功率を上げる必要がある。

 イングランドはキッキングゲームを好み、パントキックからのディフェンスとラック周辺でペナルティを誘うプレーに徹してくると見ている。自陣で反則すればPG(ペナルティゴール)3点を覚悟しなければならない。また、初戦の前半3本のDG(ドロップゴール)を決めたジョージ・フォードに隙を見せれば狙ってくるため、深いポジショニング時は要注意だ。

 W杯前のテストマッチから、変化の見える日本代表の真価が問われるのはイングランド戦である。勝利が決勝トーナメント進出の現実味を帯びるため期待したい。

元ラグビー日本代表/ラグビー解説者

高校1年からラグビーを始め、若干2年で高校日本代表に選出される。東京高校では、攻撃の要である NO.8(ナンバーエイト)として活躍し、全国高等学校ラグビーフットボール大会(花園)へ初出場の立役者となる。明治大学時に全国大学ラグビー選手権に出場し優勝。4年時には主将を務める。2000年にサントリーに入社、一年目のシーズンからレギュラーを獲得し、「日本ラグビーフットボール選手権大会」連覇などタイトル獲得に貢献。2002年フランス1部リーグ・ USコロミエに海外移籍。フォワードとして日本人初のプロ契約選手となった。帰国後、プロ契約選手として、神戸製鋼、豊田自動織機などで活躍した。

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