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[高校野球]強すぎる近畿! センバツ直近10大会の勝利数ランキング

楊順行スポーツライター
過去10大会のセンバツでは、近畿勢同士の決勝が4大会。写真は2018年(写真:岡沢克郎/アフロ)

 山梨学院が、県勢初めての決勝進出と優勝を果たした第95回選抜高校野球大会。コロナ禍で中止になった2020年を除く直近10大会の決勝をまとめてみると、こうなる(○数字は通算の優勝回数)。

2013 浦和学院①17—1済美

2014 龍谷大平安①6—2履正社

2015 敦賀気比①3—1東海大四

2016 智弁学園①2—1高松商

2017 大阪桐蔭②8—3履正社

2018 大阪桐蔭③5—2智弁和歌山

2019 東邦⑤6—0習志野

2021 東海大相模③3—2明豊

2022 大阪桐蔭④18—1近江

2023 山梨学院①7—3報徳学園

 懐かしいなあ。13年の決勝は浦学・小島和哉(ロッテ)と済美・安楽智大(楽天)、2年生エースの投げ合いだった。力尽きた安楽がKOされ、その投球過多が「安楽の722球」と物議をかもしたっけ。14年、平安のエースはやはり2年生の高橋奎二(ヤクルト)。15年、気比のエース・平沼翔太はいま西武の野手で、1学年下に山崎颯一郎(オリックス)……。

 それにしても大阪桐蔭の強さよ。この10大会のうち出場8回で優勝3回、ベスト4が2回。勝ち星にして23勝5敗だ。同じ大阪の履正社も、準優勝2回で8勝。大阪勢で33勝11敗は、47都道府県中断然の横綱だ。で、センバツ直近10大会の勝ち星番付を作ってみた(勝ち星が同じ場合は勝率上位、さらに優勝、準優勝の有無を優先)。

1  大 阪 33勝11敗

2  京 都 15勝11敗

3  愛 知 14勝7敗

4  奈 良 13勝10敗

5  兵 庫 13勝11敗

6  福 井 12勝11敗1分け

7  和歌山 12勝11敗

8  埼 玉 11勝5敗

9  東 京 11勝16敗

10 福 岡 10勝7敗1分け

11 千 葉 10勝8敗

滋 賀 10勝8敗1分け

13 栃 木  9勝7敗  

14 広 島  9勝10敗1分け

15 北海道  9勝12敗

16 高 知  9勝12敗

17 大 分  8勝5敗

18 神奈川  8勝6敗

19 群 馬  8勝7敗2分け

20 宮 城  8勝8敗

21 石 川  7勝4敗

22 山 梨  7勝5敗

23 岩 手  7勝7敗

熊 本  7勝7敗

25 香 川  6勝7敗

26 茨 城  6勝7敗

  静 岡  6勝7敗

28 愛 媛  6勝8敗

29 岐 阜  5勝6敗

沖 縄  5勝6敗

31 長 崎  5勝8敗

32 福 島  4勝5敗

33 三 重  3勝5敗

34 青 森  3勝6敗

鹿児島  3勝6敗

36 山 口  3勝8敗

37 秋 田  2勝3敗

38 徳 島  2勝5敗

39 山 形  1勝2敗

40 鳥 取  1勝4敗

41 岡 山  1勝6敗

42 新 潟  0勝1敗

島 根  0勝2敗

佐 賀  0勝2敗

富 山  0勝3敗

長 野  0勝5敗

宮 崎  0勝5敗

近畿は毎年決勝に進出する計算

 10勝以上をあげているのはほぼ、優勝もしくは準優勝のある府県だが、例外は東京と福岡だ。東京は2校出場が5大会あり、分母が大きいから勝つ率も高いが、その分負け数ならトップだ。福岡は決勝進出こそないが東海大福岡、福岡大大濠、筑陽学園、九州国際大付と、出場7回中のべ5校が8強入りと、コンスタントに勝ち星を記録していた。また4勝以上している都道府県は、この期間に少なくともベスト8以上を経験している。

 直近のランキングだけに、100年分以上を積み重ねた通算勝利数ランキングとは多少異なるところがある。たとえば福井や大分がだいぶ力をつけていることがわかるし、山梨も今回の優勝が大きく効いている。逆に高知、あるいは愛媛、岐阜などはこのところちょっと元気がないか。

 地域ごとの特性も顕著だ。21年夏の甲子園では,史上初めて8強中1地区で5つを占めたように、近畿勢はこの期間のセンバツで6府県ともに10勝以上で、すべてが勝ち数ベストテンに入る。さらに6府県のうち3府県が優勝し、ほか3県にも準優勝がある。10大会で近畿勢同士の決勝は4回で、決勝進出はのべ10校だから、近畿勢は毎年優勝か準優勝している計算だ。逆にこの期間決勝に進んでいないのが東北、中国で、これらはいまの勢力地図を描くのに大いに参考になりそうだ。

 地区内の格差が大きいのが北信越。敦賀気比の福井、星稜の石川は上位に健闘しているが、新潟、富山、長野の3県はそろって未勝利でつごう10戦全敗。通算勝利数ランキングでも最下位の新潟は、過去10大会で1回しか出場していない。また九州地区でも、5県が5勝以上しているのに、宮崎は5戦全敗、佐賀は出場が2回しかなく、こちらも勝っていない。センバツでの佐賀の勝利は00年の佐賀商までさかのぼり、もっとも勝ち星から遠ざかっている県である。

 また、チームによる偏りが目立つのは宮城と福島で、宮城は8勝すべてが仙台育英、福島は4勝とも聖光学院によるもの。山梨もすべて山梨学院の勝ち星だ。神奈川なら、8勝中7勝が東海大相模で、福井も12勝のうち敦賀気比が10勝。どちらも県内に強力なライバルがいるが、こと近年のセンバツでは1強状態に近い。それに対し、先にあげた福岡を筆頭に、愛知は東邦と中京大中京、石川は星稜と日本航空石川、兵庫は明石商と報徳学園、和歌山は智弁和歌山と市和歌山、高知は高知と明徳義塾など、ライバルがかわりばんこ、または同一大会で好成績を残す県もある。

 春季大会もこれからなのに、夏の地方大会が楽しみ……というのは、ちょっと気が早いか。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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