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バンタム級王者に就いた中谷潤人。次は統一戦それとも…。気になる相手をリサーチする

三浦勝夫ボクシング・ビート米国通信員
マロニーvs.サンチェス(写真:Mikey Williams/Top Rank)

日本人同士の統一戦

 東京・両国国技館で24日に行われたWBC世界バンタム級タイトルマッチで王者アレハンドロ・サンティアゴ(メキシコ)に6回1分12秒TKO勝ちでベルトを奪取した中谷潤人(M.T)。同じリングのメインイベントで強豪ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)に9回KO勝ちで初防衛を果たした同級WBAチャンピオン井上拓真(大橋=以下拓真と表記)との真の頂上を目指すデッドヒートが今後待望される。

 日本人同士のバンタム級統一戦に関して中谷が「視野に入れているし(実現は)タイミングだと思う。決まればしっかり対策を練って頑張りたい」と語れば拓真も「お互いに勝ち進んで行けば、お互いに当たると思っている。その時を楽しみにしている」と前向きな姿勢を明かす。しかし次戦でいきなり中谷vs.拓真が実現する見込みは少ない。すでに大橋ジムの大橋秀行会長は、WBA1位を占める石田匠(井岡)との防衛戦を優先する発言をしている。

 では中谷は次、誰と拳を交えるのか?今回のサンティアゴ戦で一段と世界的な注目度を増したネクストモンスターはライバル王者との統一戦にプライオリティを置いていると思われる。拓真以外のライバル王者はWBOのジェイソン・マロニー(豪州)とIBFのエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)だ。この2人は24日の世界バンタム級ダブルタイトルマッチを地球上でもっとも注目していた人間だったに違いない。

WBO王者マロニーの動向

 さて、2人のうちマロニー(27勝19KO2敗=33歳)には5月12日、豪州パースのRACアリーナで予定されるワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)vs.ジョージ・カンボソス(豪州)のIBF世界ライト級王座決定戦のカードで2度目の防衛戦を行う話が持ち上がっている。もし試合が締結すれば、時期的に中谷と統一戦を行うことは難しいのではないか。「今年はできれば4試合行いたい」とアクティブに活動する意志を示す中谷にとってマロニーの防衛戦終了後では間隔が空き過ぎてしまう。今後マロニーと対戦するにしても1試合はさむことになるだろう。

 とはいえマロニーは米国のボクシング専門メディア「ボクシングシーン・ドットコム」の最新インタビューで「ロマチェンコvs.カンボソスのカードに出場することを前提にトレーニングに入っているけど、5月の試合が確定しているわけではない。実際いろいろなオプションがあるんだ。今、マネジャーがビジネス面をケアしているところ。2週間後ぐらいにアナウンスできるんじゃないかな」と話している。

 彼のコメントからロマチェンコ戦出場が第一オプションながら状況次第で別なスケジュールが組まれる可能性も感じられる。もしかしたら5月12日、中谷が豪州へ遠征しマロニーの対立コーナーに立つことだってあるかもしれない。ロマチェンコvs.カンボソスの共同プロモーター「トップランク」のイベントで中谷はこれまで米国で2度リングに上がっている。しかしファイトマネーが絡むと中谷の次戦は日本か米国に落ち着くとみられる。

マロニーは日本へ来る?

 今回、両国国技館で中谷が3階級制覇に成功し、彼の返上したベルト、WBO世界スーパーフライ級王座決定戦で田中恒成(畑中)が4階級制覇を果たした。これで日本人男子の世界チャンピオンは何と9人となった。ミニマム級からスーパーバンタム級といずれの王者も軽量級に属するが、今、日本は世界のボクシング大国の一つになった。今後しばらく日本は経済的な理由から世界中の強豪選手を惹きつける磁石のような存在となるだろう。

 マロニーもそれに惹きつけられるのではないだろうか。モンスター、スーパーバンタム級4団体統一チャンピオン井上尚弥(大橋)がバンタム級王者時代にマロニーと防衛戦を行った時に筆者が知り合った彼のトニー・トリ・マネジャーは親日家の印象だった。同時に敏腕的ぶりも感じさせるのだが、アウェー日本で中谷と統一戦に臨む気配をうかがわせる。

 中谷とマロニーは接点もある。昨年5月ラスベガスで、WBO世界スーパーフライ級王座決定戦を行った中谷が衝撃的なKO勝利を飾った相手がマロニーの双子の弟アンドリュー・マロニー(豪州)。兄ジェイソンにとっては弟のリベンジマッチとなる。また間接的だが、マロニーが1月に初防衛戦で対戦したサウル・サンチェス(米)は中谷のロサンゼルス合宿でメインスパーリングパートナーを務めた選手。サンチェス戦が激闘になったことを付記したい。

ロドリゲスを満足させたジャパンマネー

 もう一人の“マニー”ことロドリゲス(23勝13KO2敗1無効試合=31歳)はIBFから通達された指名試合、ランキング1位の西田凌佑(六島)との一戦が5月4日、大阪で決まっている。したがって即、中谷と雌雄を決することはないだろう。それでも筆者が今月初めにロドリゲスにインタビューした時、彼は「将来、ナカタニと統一戦ができれば最高だ」と話していた。そして西田戦の入札で開催権利を獲得した亀田興毅氏率いる「亀田プロモーション」に対して「とてもいい仕事をしてくれた。我々を大いに満足させてくれた」とリスペクト。ここ数戦、米国の大手プロモーションの一つPBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)のイベントでリングに登場していたロドリゲス。彼の言葉からも日本の報酬が米国を上回っていることが計り知れる。

昨年メルビン・ロペス(右)を下してIBF王者に復帰したロドリゲス(写真:Amanda Westcott/SHOWTIME)
昨年メルビン・ロペス(右)を下してIBF王者に復帰したロドリゲス(写真:Amanda Westcott/SHOWTIME)

 次戦でマロニー、ロドリゲスとの統一戦が実現しないとなれば、中谷はWBC1位ビンセント・アストロラビオ(フィリピン)を迎えることになるかもしれない。昨年5月マロニーとWBOバンタム級王座決定戦を行い、2-0判定負けしたアストロラビオ(19勝14KO4敗=26歳)は8月、敵地タイで常連ランカーだったナワポーン・カイカンハ(タイ)に右クロスを炸裂させて痛烈な11回TKO勝ち。WBCの指名挑戦者に名乗りを上げた。

 2年前にビッグネームのギジェルモ・リゴンドウ(キューバ)に快勝したこともあるアストロラビオは12月に井上尚弥と4団体統一戦を行ったマーロン・タパレス(フィリピン)、アンカハスのスパーリング相手として同胞たちをサポートした。アグレッシブな選手だけに中谷と噛み合いそうだが、勝負となると王者有利は動かないところだ。

アストロラビオvs.ナワポーンの挑戦者決定戦

最強トーナメントを日本で

 フライ級、スーパーフライ級(いずれもWBO)そしてWBCバンタム級王者に就き3階級制覇に成功した中谷(27勝20KO無敗=26歳)は世界王座を獲得する前、「WBSS(ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ)が自分のクラスで開催されれば、ぜひ参戦したい」と話していた。その気持ちは今も変わらず「リングに上がってどっちが強いか判明するのがボクシングの魅力」とアピールしてはばからない。

 その最強を決めるトーナメント、WBSSが開催されなくなって久しい。軽量級がかつてないほどの充実期を迎えた日本がWBSS開催のイニシアチブを握る日が訪れることを期待して止まない。現在、その機運は熟していると言える。モンスターが去ったバンタム級が再び輝きを放ち始めた。

ボクシング・ビート米国通信員

岩手県奥州市出身。近所にアマチュアの名将、佐々木達彦氏が住んでいたためボクシングの魅力と凄さにハマる。上京後、学生時代から外国人の草サッカーチーム「スペインクラブ」でプレー。81年メキシコへ渡り現地レポートをボクシング・ビートの前身ワールドボクシングへ寄稿。90年代に入り拠点を米国カリフォルニアへ移し、フロイド・メイウェザー、ロイ・ジョーンズなどを取材。メジャーリーグもペドロ・マルティネス、アルバート・プホルスら主にラテン系選手をスポーツ紙向けにインタビュー。好物はカツ丼。愛読書は佐伯泰英氏の現代もの。

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