Yahoo!ニュース

【南海トラフ】「巨大地震注意」って結局どういうこと?対象地域は?旅行や海水浴はしていい?防災士解説

植松愛実気象予報士・防災士・野菜ソムリエ
南海トラフ地震で大きな被害が想定される地域(気象庁HPを元に作成)。

8日夜、気象庁は「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表しました。

ひたすら漢字が並んでいる情報で、「巨大地震」は怖いけど「注意」ってどのくらい注意なの?と、正直受け取り方がわからない人が多いと思います。

「1週間程度は注意」と呼びかけられる中、これから3連休そしてお盆休みを迎え、帰省や旅行は予定通りしていいのか、そして太平洋側の海でレジャーを楽しんでいいのか、気になる疑問に防災士が答えます。

「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」ってどういうこと?

南海トラフで起きる巨大地震について、気象庁ではもともと「このあたりが想定される震源域」というエリアを決めています。
そして、そのエリア内で大きな地震(今回の場合はマグニチュード7.1)が起きたら、「続けてエリア内の他の場所でも地震が起きるかも」と考えて検討会を開くことにしているのです。

今回は予定通り検討会を開いて、複数の専門家で話し合った結果、「巨大地震が切迫しているわけではないけど、普段よりは起きやすくなっている」ということで「巨大地震注意」という情報を発表しました。
具体的な対象地域は、この記事の冒頭に掲載した図でオレンジ色になっている市町村です。

「普段より起きやすくなっている」というのは、もともと南海トラフの巨大地震は今後30年以内に70~80%起きると考えられていたところ、その確率が数倍高くなった、ということになります。

「巨大地震注意」で何をすべき?

出典:気象庁HP
出典:気象庁HP

前述のとおり、もともと南海トラフの巨大地震は近い将来に起きることがわかっています。
そのため、すでに備えをしている人が多いはず…という前提のもと、今回の情報では想定震源域である東海~九州の地域で「備えを再確認して」ということになります。

が、実際のところ、(残念ながら)ふだんから備えている人は少数派かもしれません。
日頃から備えてほしいポイントについては昨日の記事の後半でも書いていますが、まずは家の中で「安全スペース」(急に揺れても物が落ちてこない空間)を確保しておきましょう。

また、急いで非常食を買いに行かなくとも、レトルト食品(たいていのレトルトはいざというとき加熱しなくても食べられる)やお菓子で賞味期限が長いものは意外と多いので、家の中の食品も確認してみてください。

旅行はもともと備えを前提にして

そもそも、ほとんどの地震は前兆現象なしに起きます。
つまり、今回のような情報が出なかったとしても、旅行の際はいつでも、「旅先で地震に遭ったらどうするか」を考えてから行く必要があるのです。

今回、政府から帰省や旅行を取りやめるよう呼び掛けがされることはありません。
そのため旅行などを我慢する必要はありませんが、いつ地震が起きても対処できるよう、旅先のハザードマップを確認しておいたり、持ち歩く水や軽食の量に余裕を持たせたりと、備えを忘れずにしてください。

なお、JR東海やJR東日本では今後1週間程度、減速運転などが実施される区間があります。
旅行前に最新の交通情報も確認しましょう。

海水浴も我慢しなくいい…ただし「津波フラッグ」を知っておいて

津波フラッグ(気象庁HPより)
津波フラッグ(気象庁HPより)

旅行と同様、海水浴などの海のレジャーも(海水浴場が遊泳禁止になっていなければ)制限されることはありませんが、もし地震が起きて津波警報などが出た場合に備えて、「津波フラッグ」の色と模様を覚えておいてください。

「津波フラッグ」は、津波注意報・津波警報・大津波警報が発表された際に海水浴場などで掲示されることになっていて、長方形を4分割した、赤と白の格子模様のデザイン。
縦横の長さや比率に決まりはありませんが、遠くからでも見えるように、短い辺が100センチ以上のものが推奨されています。

海水浴中はスマホで津波の情報を調べることができませんし、防災無線も波音や風で聞き取りにくいことが多いため、海水浴場や海岸付近で津波フラッグを見かけたら、すぐに海から離れて避難してください。

※筆者のプロフィールからフォロー(リンク先の「+」のボタン)していただくと、防災に関する情報の解説や、台風情報、テレビでは話せない気象予報の裏側を書いた記事を逃さず読むことができます。

気象予報士・防災士・野菜ソムリエ

気象予報士・防災士として講演・執筆を行う傍ら、野菜ソムリエ・食育インストラクター・薬膳マイスターとして出張料理人(一般家庭での作り置き代行)としても活動。NHK・民放各局で気象キャスターを歴任し、報道の現場や防災、気候変動・地球温暖化に関する最新情報にも詳しい。著書に『天気予報活用ハンドブック~四季から読み解く気象災害』(竹下愛実名義・共著)がある。

植松愛実の最近の記事