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「飲酒ガイドライン」なんて無理?!お酒を健康的に楽しむために知っておきたいこととは?

松崎恵理一般社団法人日本栄養検定協会代表理事、博士(栄養学)・料理家
(写真:アフロ)

2月19日に厚労省より「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(以下、飲酒ガイドライン)が発表されました。

1日あたりのお酒の量を見て「無理~!」「そんなに飲めないなんてがっかり。。」と思った人も多いのではないでしょうか。

そこでガイドラインで示されている内容を確認すると共に、健康的にお酒を楽しむために知っておきたいポイント、飲酒ガイドラインが発表された経緯を解説したいと思います。

■飲酒ガイドラインで示されている内容とは?

このガイドラインでは、アルコールの体への影響は年齢や性別、体質、体調などによって変化することを前提として解説し、過度な飲酒は、

・疾病のリスクを上げること

・行動面で運動機能や集中力の低下、怪我、他人とのトラブルなどのリスクがある

としています。

また、高血圧や男性の食道がん、女性の出血性脳卒中などの場合は、少量であっても飲酒自体が発症リスクを上げてしまうこと、大腸がんの場合は、1 日当たり 20g程度(週 150g)以上の純アルコール量の飲酒を続けると発症の可能性が上がる等の結果を示した研究があることを示しています。

その上でガイドラインでは、「生活習慣病のリスクを高める量(1日当たりの純アルコール摂取量が男性 40g以上、女性 20g以上)を飲酒している者の割合を男性 13.0%、女性 6.4%まで減少させること」を重点目標にしています。

目安となる飲酒量が注目されていますが、ガイドラインで目標としているのは、「過度な飲酒をしている人の割合を減らす」ことです。

■過度な飲酒ってどれくらい?

具体的に過度な飲酒の量というのは、どのくらいなのでしょうか。

ガイドラインでは、生活習慣病のリスクを高める量として

「1日当たりの純アルコール摂取量が男性 40g以上、女性 20g以上」

としています。

これをお酒の種類別に表すと以下のようになります。

筆者作成
筆者作成

いやいや飲み会でこの量以内に収めるのは無理~!と感じる人が多いかもしれません。

ここで注意したいのは、この量が「1日当たり」であることです。

上記の量以上を毎日飲む人は、確かに「過度な飲酒」になりますが、この量を1週間の平均値として考えてみると以下のようになります。

仮にワイン(アルコール度数13%)をグラス3杯(375ml)を飲んだ場合、純アルコールの量は、39gです。これが1週間に1日であれば、1日あたり約6gとなります。1週間に3回、同じ量を飲んだ場合は、1日あたり約17gの純アルコール摂取量になるわけです。

目安となる摂取量を1週間の総量に換算すると、女性の場合で1日あたり純アルコールの量の目安が20gということは、1週間で20g×7日=140gです。

つまり1週間の平均値で見ると、上記のようにワイン3杯ほどの量を時々楽しむのであれば1日当たりの目安量を超えない、ということになります。

男性は、目安として示されている量は、女性の倍の量ですからもっと多くなります。

とはいえ、アルコールの摂取量は、お酒が強いか否かといった体質に大きく影響されますので、お酒が弱い人もこの量を飲んでも大丈夫というわけではありません。

また、1回の飲酒で60g以上の純アルコールを摂取すると急性アルコール中毒のリスクが上がるとされていますので、注意が必要です。

ちなみにこのガイドラインには、純アルコール量の計算方法も示されていますので、以下に記載します。

摂取量(ml) × アルコール濃度(度数/100)× 0.8(アルコールの比重)=純アルコール量

ビール(5%)を500ml飲んだ場合の計算は、500ml×0.05×0.8=20g となります。

写真:アフロ

■健康的にお酒を楽しむために知っておきたいこと

アルコールの吸収は、胃で約25%、残りのほとんどは小腸で吸収されます。

アルコールの吸収速度は、胃よりも小腸の方が早いとされています。また、食べ物と一緒にアルコールを摂取した場合やアルコールの濃度が低い場合は、その分吸収する速度が遅くなるとされています。

アルコールが体内に吸収されるとほとんどが血液中に入るため、摂取したアルコール量や濃度によって血中アルコール濃度が変化すると考えられます。

酔いの程度は、血中のアルコール濃度によって変わります。

目安としては、血中濃度(%)が「0.02~0.04:爽快期」「0.05~0.10:ほろ酔い期」「0.11~0.15:酩酊初期」「0.16~0.30:酩酊極期」「0.31~0.40:泥酔期」「0.41~:昏睡期」とされています。

血中のアルコール濃度の急上昇を避けて適度にお酒を楽しむためには、アルコールの吸収速度を下げるためにお酒を食事と一緒に楽しんだり、水を一緒に飲むことで胃の中のアルコール濃度を下げたり、脱水によって血中のアルコール濃度が上がるのを避けるといった工夫をすることがおすすめです。

■飲酒によって不足しやすい栄養素

アルコールのほとんどは、肝臓で分解されて無毒化されます。この時、ビタミンB群、特にビタミンB1が消費されることが知られています。また、アルコールの利尿作用によってカリウムも失われやすくなります。

ビタミンB1はエネルギー代謝にも欠かせないビタミンのため、不足すると疲れを感じやすくなります。

お酒をたくさん飲んだかな?という時は、大豆製品や豚肉、鮭、鰻などビタミンB1が多く含まれる食品を摂るように心がけると良いでしょう。

写真:アフロ

■飲酒ガイドラインが発表された経緯

このガイドラインは、2010年5月にWHOが採択した「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」を受けて、平成25年に「アルコール健康障害対策基本法(平成 25 年法律第 109 号)」が制定され、この法律に基づくアルコール健康障害対策推進基本計画の第2期計画として策定されています。

WHOが採択した「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」の序文では、この世界戦略を採択した現状として

・アルコールの有害な使用が原因でおよそ 250 万人の命が奪われている

・なかでも若者が占める割合は著しく増大している

・アルコールの使用は健康障害の主なリスク要因として世界で第3位に挙げられている

・アルコール関連の問題のために、個人やその家族は甚大な影響を受け、社会生活が損なわれることもある

・アルコールの有害な使用は、主な非伝染性疾病(NCD)の四大リスク要因のひとつに挙げられているが、修正可能で回避可能な要因である

といったことが挙げられています。

非伝染性疾病(NCD)とは、WHOの定義では、生活習慣の改善により予防可能な疾患を指し、四大リスクとは、不健康な食事、運動不足、喫煙、過度の飲酒を指します。

WHOが指摘している項目の中の「アルコールの有害な使用により命が奪われている、中でも若者が占める割合が増大している」ことは、日本における急性アルコール中毒で搬送された人の年代別のデータを見ても注意する必要がありそうです。

東京消防庁のデータを見ると、急性アルコール中毒の搬送の年代別の数値を見ると、20代が圧倒的に多く、20歳以下も存在していることが分かります。

詳しくはこちら

今回発表された「飲酒ガイドライン」では、飲酒運転、20歳未満の飲酒、妊娠中の飲酒に注意すると共に、避けるべきこととして

・短時間での多量飲酒

・他人への飲酒の強要

・不安や不眠を解消するための飲酒

・服薬後や病気療養中の飲酒

・飲酒中や飲酒後の運動や入浴など体に負荷のかかる行動

をあげています。

過度にならない飲酒は、リラックス効果や食事を楽しむ、食文化としても大切な要素のひとつです。

自分の体質や体調を考えつつ、お酒は、ポジティブな働きを期待できる範囲を意識して楽しむという気持ちを大切にしたいですね。

写真:イメージマート

一般社団法人日本栄養検定協会代表理事、博士(栄養学)・料理家

博士(栄養学)、料理家。専門は栄養疫学。栄養学を学ぶ栄養検定を実施・運営。美味しく健康的なレシピ作りも得意。日本栄養・食糧学会会員。慶應義塾大学卒業。オートファジーコンソーシアムアカデミア会員、栄養士養成校にて「統計学」の非常勤講師。LE CORDON BLEU(代官山校)料理を首席で卒業しグランディプロム取得。Paris Ecole Ritz Escoffier 短期クラス修了。問い合わせは、https://eiyokentei.or.jp/message/ から。毎週月曜朝、日本栄養検定協会無料メルマガ配信中!https://system.faymermail.com/forms/7515

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