小林製薬の紅麹ショック!米麹は大丈夫なのか?
NHKの報道によると小林製薬の「紅麹」の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症した問題で、この健康食品に使っている紅麹原料の供給先は52社に上っているとのことです(3月25日13時現在)。紅麹の赤い色を使った食品などにも使用されており、日本酒類や塩辛、ねり製品に使われるなど、複数の卸売業者を通じてさらに別の企業に販売されていることがわかり大きな問題になっています。
本日時点の小林製薬の発表では「紅麹サプリメントに意図しない成分が含まれている可能性」があること、また「成分の特定や腎疾患等との関連の有無は確定できない」ものの「健康被害の拡大を防ぐための予防的措置として」関連商品を自主回収することとしたとのことです。
この報道を聞いて、普通に売っている米麹は大丈夫なのか?と心配されている方もいらっしゃるかと思いますので、違いなどについて解説したいと思います。
■米麹と紅麹は違う
麹はカビの一種です。カビには、さまざま菌種(属)があり、紅麹はMonascus属になります。紅麹は、カビ毒であるシトリニンをつくるものがあり、この毒は腎臓の病気を引き起こす可能性や発がん性の可能性が指摘されています。今回、シトリニンは検出されなかったとのことですので、何が原因なのか究明が待たれるところです。
私たちが一般に米麹として食べているものは、アスペルギルス属の中のオリゼーという種類です。紅麹とは違う種類です。
■米麹は大丈夫なのか?
日本の麹には、日本酒や味噌、塩麹や甘酒に使われている黄麹、焼酎や黒酢、泡盛に使われる黒麹、黒麹の突然変異である白麹があります。いずれの麹も毒を作り出すことはありません。これは、独立行政法人 産業技術総合研究所がコンソーシアムを組織し、麹菌のゲノム解析を行った結果、2005年にNature誌に発表され、確認されています。
米麹に使われている麹は、通常は黄麹です。黄麹の麹菌(種麹)を蒸した米に付着させて培養したものが米麹です。黄麹は、カビの中のアスペルギルス属に分類されます。
このアスペルギルス属は強い毒性を持つことで知られています。そのため、アスペルギルス属だということを理由に有毒だと認定されて、海外に持っていけないということが過去にはありました。
ところが、日本にある麹は、長年、種麹屋で培養されることで毒を作り出す遺伝子を持たない麹菌のみを選んで育ててきた結果、毒性を持たない菌となったと言われています。
日本固有のアスペルギルス・オリゼーという麹菌は、アスペルギルス属にあって、毒を作り出さない非常に珍しい菌なのです。
一般に流通している米麹を使っている限り、毒を作り出すことはありませんので、ご安心ください。
■麹は生きもの
ただし、麹は培養できます。アスペルギルス・オリゼーではなく、毒を作りだす種類のアスペルギルス属のカビ菌もあります。きちんと管理されていない状態で培養するのは、コンタミネーションを起こす可能性がゼロではありません。米麹を買ってきて、味噌を作ったり塩麹や甘酒を作る分には、問題ありませんが、種麹から米麹をつくるという工程は専門家に任せた方が安全と言えるでしょう。