今年もまた被害が! 金融詐欺で1500人の80億円はもう戻らない なぜ私たちは騙されるのか
今年もまた金融詐欺で逮捕が 被害総額は80億円か
毎年、数件ほどの金融詐欺が起きます。ほとんどのパターンは「高金利をエサに集金、運用の実態はなく破たん、逮捕されるがお金は戻らず」というものです。
今年もリプラスという投資会社が80億円を集めて逮捕されました。
8/6 FNNプライムオンライン “80億円集金”自称・高学歴外資系投資家を逮捕 「私には神通力がある」巧みな誘い文句とは
8/26 朝日新聞 投資会社幹部「損失出したことない」実態は自転車操業
8/26 テレ朝ニュース 80億円の被害… リプラス従業員ら詐欺容疑で再逮捕
毎年毎年、よくもまあこう悪者が現れるものだなと思うのと同時に、なぜ毎回数千人がだまされ、数十億から数百億円の被害総額となってしまうのか、考えさせられます。
たったひとつのルールを守れば、こうした稚拙な金融詐欺のほとんどすべてが回避できるというのに。
「安全・確実・高利回り」を実現するカラクリはタコ足配当
「安全・確実・高利回り」は誰にとっても魅力的です。何せ失敗する可能性がなく、銀行の定期預金より高い利回りを得られるのならこれほどありがたいことはありません。
今回のリプラスだけでなく、過去に逮捕案件となった多くの金融詐欺のほとんどすべては「安全・確実・高利回り」をうたって集金をしてきたといっていいでしょう。
何を取り扱うか(株なのかワインなのか商品なのか)、どんな説明をするのか(WEBか華美なパンフレットかイベントか)、違いはあっても基本的に唱えるのは「安全・確実・高利回り」という呪文です。
そして破たんをしたとき明らかになるのは、実態のないタコ足配当です。後から契約してもらった入金を、過去の契約者の高配当にそのまま回せば、最初の契約者は「やはり高利回りが実現された!」と驚喜します。
最初の顧客は喜びの声を語り、それがWEBに紹介され、また新規顧客が捕まります(自分自身、さらに数百万円追加契約するカモになることもしばしばある)。
こんなやりかたが未来永劫続くはずがありません。首謀者たちは自分たちの儲けも抜いていきますから、早晩資金は底をつきます。破たんしたケースのほとんどは、こうしたポンジ・スキームと呼ばれる仕組みでウソの高利回りを装います。
一部に「最初はまともにビジネスを試み、途中からタコ足配当に切り替える」輩もありますが、詐欺を働いていることは変わりがありません。
「安全・確実・高利回り」があると思うな 存在しない
そもそも論として「安全・確実・高利回り」を信じてしまうことが間違いの始まりです。
銀行の預金は「安全・確実」ですが「低利回り」です。これは安全・確実を保証するためのコストがかかるからです。銀行が法人へ融資をして3~4%の利息を回収したとしても、預金金利にはそのまま還元できません。つぶれた会社からは取りっぱぐれることもありますし、銀行自身のコストもあるので、そのまま預金金利にはできないわけです。
投資信託などは「安全・確実」がない代わりに、中長期的には「高利回り」が期待できます。経済の成長は基本的にインフレ率や預金金利を上回るとされているからです。また、値上がりがあったら、すべてを顧客に還元する仕組みになっています(値下がりも)。
しかし、確実ではなく、短期的には下がることもあります。昨年の3月末は、新型コロナウイルスへの不安から世界中の株価は30%くらいの下落をみせました(なお、焦らず待てば、値下がり分はすべて回復している)。
「安全・確実・高利回り」は基本的に並立できません。どんなに華美なパンフレットがあろうと、どんなに熱心な営業マンが夢を語ろうとも信じてはだめなのです。ましてや「喜びの声」を信じてはいけません。
なお、ここでいう「高利回り」は現状の銀行預金金利や国債金利、あるいはインフレ状況と比較します。年4%の預金金利がつき、年4%のインフレがする社会においては、4%は高利回りではないからです。
(インフレ気味の外国の金利が4%あって、外貨預金を買ったとしても、為替リスクを考えればそれは「安全・確実・高利回り」とはいえない)
心に刻め!「安全・確実・高利回り」をうたう輩は信じるな
ここまでコラムを読んでくれたあなたに、改めて大事なアドバイスをします。
「安全・確実」と「高利回り保証」をセットにしている段階で、そのような商品には手を出さないのが賢明です。
「お客様の喜びの声」も無視するべきです。本質的には、誰かのリターンがあなたのリターンを保証するわけではありません。通販番組の「お客様の個人的な感想です」のような表記を信じない人が、なぜ金融商品の「喜びの声」だけ信じるのでしょう。
それになぜ、メガバンクや大手証券会社のようなまっとうな金融機関が提供する金融商品について、「喜びの声ページ」がないのでしょうか。「喜びの声」を全面に押し出す金融商品は、あやしいなと構えてみるくらいが適当な距離感だと思います。
悪い奴らは後を絶ちません。来年も再来年も、数十億円から数百億円を集めて捕まる業者が現れることでしょう。
しかし、「あなた自身がだまされない」ことは可能です。どんなにたくさんの誘惑があったとしても、だまされず、買わなければいいだけのことだからです。
もう一度繰り返します。「安全・確実・高利回り」を信じてはいけません。それだけであなたの数百万円を紙くずにしなくてすむのです。