立秋後ではあるが前線停滞による梅雨末期のような大雨に警戒 54年前は羽越豪雨
停滞前線の出現
広い範囲で大雨と暴風をもたらした台風9号から変わった低気圧が日本の東海上に去り、8月11日(水)は、本州の広い範囲と沖縄を中心に暑くなりました。
全国の610地点(気温を観測している920地点の約66パーセント)で最高気温30度を超える真夏日、209地点(23パーセント)で最高気温が35度以上の猛暑日となりました。
しかし、中国・華中から東シナ海の前線活動が活発となって西日本から東日本へと前線がびてきましたので、記録的な暑さは一服ですが、大雨に警戒が必要となってきました(図1)。
気象衛星でも前線付近ではデコボコした対流性の雲が増えてきており、次第に前線活動が活発になっています(タイトル画像参照)。
そして、日本列島に前線が停滞することから、西日本を中心に8月13日(金)にかけて大雨となり、13日以降は、東日本と北日本を含め、広い範囲で大雨となるおそれがあります。
気象庁では、8月11日11時半頃に、大気海洋部予報課の岸本賢司主任予報官が記者会見をし、「前線周辺ではいつどこで大雨が降ってもおかしくない状態が続く」として、注意を呼びかけました。
秋雨前線というより梅雨前線末期
各地の週間天気予報を見ると、北海道と沖縄を除いて、傘マーク(雨)の日が続く予報です(図2)。
最高気温が35度以上という猛暑日の予報はないのですが、これだけ雨が続くと湿度は高くなりますので、30度前後の最高気温といっても熱中症に対する警戒が引き続き必要です。
立秋(8月7日)が過ぎたので、今回の停滞前線を秋雨前線と呼ぶこともできますが、今年の季節の進み方が例年とは違い、梅雨末期に近いものです。
春と夏との境目である梅雨は、夏に向かって太平洋高気圧が勢力を増し、日本付近で梅雨前線が停滞したのち、北上して夏になります。
また、夏と秋の境目である秋雨は、秋に向かって太平洋高気圧の勢力が弱まり、日本付近で秋雨前線が停滞したのちに南下して秋になるというのが典型的なものです。
今年は、早い梅雨明けと言っても、太平洋高気圧が勢力を強めての梅雨明けではなく、梅雨前線がはっきりしなくなっての梅雨明けです。
このため、上空に寒気が流入しやすく、大気が不安定となって局所的な豪雨が続いていました。
強い日射によって暑い日が続いていましたが、夏にはなりきっていなかったということもできるでしょう。
ここへきて、太平洋高気圧が強まってきて日本付近で前線が活発化したということから、似ているとしたら、秋雨より梅雨のほうです
大量の水蒸気流入
平成30年7月豪雨(通称「西日本豪雨」)のときのような大量の水蒸気は、太平洋高気圧の縁辺部をまわるように、東シナ海から西日本、北陸へと流入してくる予報です。
このため、西日本を中心に3日間で600ミリを超えるような大雨が降る予報も計算されています(図3)。
気象庁は、早期注意情報を発表し、5日先までの警報級の可能性を「高」「中」の2段階で予測しています。
これによると、8月12日から14日は、九州から東北まで「高」の県があるほか、多くの府県で「中」となっています(図4)。
また、15日も16日の広い範囲で「中」となっています。
これからしばらくは、広い範囲で長期間にわたる雨に対する警戒が必要となっています。
羽越豪雨
今から54年前、昭和42年(1967年)8月26日から29日に新潟県と山形県で、羽越豪雨(出羽の国と越後の国の豪雨の意味)と呼ばれる大雨が降り、死者83名、行方不明者55名、浸水家屋6万6000棟などの大きな被害が発生しています。
このときは、日本付近に前線が停滞し、その前線上を低気圧が通過した26日から28日の3日間の降水量は、新潟県の下越地方や山形県の南西部では200ミリを超えています。
特に、新潟県黒川村の胎内川第一ダム(気象庁以外の観測所)では748ミリを観測し、この付近を流れる中小河川の氾濫や大規模な土砂災害が多発しました(図5)。
羽越豪雨のように、夏の前線による豪雨は、秋の冷気が南下してできている前線に向かって、気温が高いことによって多量の水蒸気を含むことができた空気が流入して発生します。
最新の気象情報の入手に努め、厳重な警戒が必要です。
タイトル画像、図2、図3、図4の出典:ウェザーマップ提供。
図1、図5の出典:気象庁ホームページ。