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予防接種ルールが10月から変更 大事なポイントは接種間隔の変更と「ロタウイルス」の定期接種化

堀向健太医学博士。大学講師。アレルギー学会・小児科学会指導医。
(写真:政処 裕介(まろけ)/アフロイメージマート)

欧米に比較し大きく遅れていた日本の予防接種が、ここ10年ほどで大きく改善されてきています。たとえば最近であれば、2014年10月から水痘(水ぼうそう)ワクチンが定期接種となりました。

定期接種とは、『国が接種を勧奨し、法律に基づいて市区町村が主体となって実施するワクチンのこと』です。皆さんにとっては、『公費により接種できるようになる』という点が大きいでしょう。

任意接種の予防接種って、なかなかのお値段ですからね。

水痘は2014年の定期接種化後、患者数は明らかに減少しました。定期接種化により接種率が大きく上がり、有効性がはっきりしてきたのです(※1)。

このように、予防接種はひとつひとつ改善され人々を感染症の脅威から守ってきたのです。

出典(※1)より引用
出典(※1)より引用

(※1)水痘・帯状疱疹の動向とワクチン(国立感染症研究所)

そして、2020年10月から予防接種に関する決まりごとがふたつ、大きく変更されます。

1つ目がロタウイルスワクチンの定期接種化、そして2つ目が予防接種の間隔が変更されることです。

どちらもとても大事なポイントですので、解説したいと思います。

ロタウイルスワクチンが定期接種になります

イラストAC
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ロタウイルスとは、主に胃腸炎を起こすウイルスです。

世界における2000年までの検討では、5歳までにほぼすべての子どもがロタウイルス胃腸炎に罹患し、5人に1人が医療機関に受診し、60人に1人が入院し、293人に1人が死亡すると推定されました(※2)。また、ロタウイルスは胃腸炎だけでなく、けいれんや場合によっては脳炎なども起こすことがあります。

(※2)Emerging infectious diseases 2003; 9(5): 565-72.

そのような経緯からロタウイルスワクチンが開発されました。

2019年3月の時点で97ヵ国で定期接種に導入されていましたが、日本でも2020年10月から定期接種に組み入れられることになったのです。

ロタウイルスワクチンの有効性は高く、ロタウイルス胃腸炎による入院や救急部受診のリスクを検討した観察研究30研究の結果からは、82%も減少するという報告があります(※3)。完全に罹らなくなるわけではありませんが、明らかに重症化を減らすのです。

(※3)BMC Infect Dis 2017; 17:569.(日本語訳

これまで任意接種だったロタウイルスワクチンは(地域によって異なるものの)3万円程度の自己負担があったので、水痘ワクチンと同様に、定期接種化で接種率が上がることが期待されています。なお、ロタウイルスワクチンは生後2ヶ月から生後14週6日までに開始する必要があり、定期接種として接種できるのは2020年8月生まれのお子さんからとなります。

そして、ロタウイルスワクチンは『飲む生ワクチン』です。

生ワクチンとはなんでしょうか?

イラストAC
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ワクチンは、『生ワクチン』と『生ワクチン以外』にわけられます

生ワクチンは、病原体の毒性を弱めて免疫を獲得することを目標にしたワクチンです。

簡単に言えば、『軽く罹って免疫を獲得する』わけです。まったく毒性がないまで無毒化したならば免疫も得ることができません。ですので、ごく軽い症状が出ることがあります。

このような話をすると、『怖い』という方もいらっしゃいますが、たとえばロタウイルスは5歳までに全員が罹ります。そしてロタウイルスワクチンよりも遥かに強い病原性を持っています。その、強い病原性を回避するように設計されているワクチンと言えます。

一方で不活化ワクチンは、主に加熱したりホルマリン処理をしたりして病原体を殺したワクチンです(他の作成方法もあります)。これらの不活化ワクチンに病原性はありません。

現在の予防接種の間隔に関して、『生ワクチン接種後に別のワクチンを接種するのは27日間の間隔』、『不活化ワクチン接種後に別のワクチンを接種するのは6日以上の間隔を』ということを、多くの保護者さんがご存知でしょう。

そのワクチンの接種間隔が、2020年10月より変更になるのです。

予防接種の間隔が変更されます

写真AC
写真AC

2020年10月1日からの予防接種の接種間隔の変更は、おおざっぱに言うと、『注射』の生ワクチンの接種は27日以上あけるものの、他のワクチンとの接種間隔に制限がなくなります。なお、同じ生ワクチンでも、ロタウイルスワクチンは『経口(飲む)生ワクチン』ですので、別のワクチンをする際に間隔をあけなくてもOKです(※4)。

簡単にまとめると、下の表のような感じですね。

出典(※4)より筆者作成
出典(※4)より筆者作成

(※4)ワクチンの接種間隔に関する規定を改正することに伴う対応について

この理由として、不活化ワクチンは、他の不活化ワクチンや生ワクチンとの同時接種を含めてどのような間隔で接種しても、お互いのワクチンの免疫が影響されないことがわかっているからです。

なお、今回の改定でかわる決まりごとは、海外では普通の方法です(※6)。

世界標準に合わせたに過ぎないのですね。

(※5)Simultaneous Administration of Varicella Vaccine and Other Recommended Childhood Vaccines --- United States, 1995--1999 

(※6)Vaccine Recommendations and Guidelines of the ACIP

例えば、これからのインフルエンザワクチンのシーズンでは、以下のようなケースが考えられるでしょう。

(ケース1)ある日にインフルエンザワクチンを接種したあと、これまでは他の予防接種をするのに1週間あけなければなりませんでしたが、10月からは翌日に別の予防接種をすることができます。

(ケース2)MR(麻しん風しん)ワクチンを接種した翌日に、別の医療機関でインフルエンザワクチンを接種することができます。

そんなケースですね。

予防接種の種類が多くなり、予防接種の予定が組みにくくなってきた保護者さんにとっては、助かる改定といえるでしょう。

詳しくは、かかりつけ医にご相談くださいね。

医学博士。大学講師。アレルギー学会・小児科学会指導医。

小児科学会専門医・指導医。大学講師。アレルギー学会専門医・指導医・代議員。1998年 鳥取大学医学部医学科卒業。鳥取大学医学部附属病院・関連病院での勤務を経て、2007年 国立成育医療研究センターアレルギー科、2012年から現職。2014年、米国アレルギー臨床免疫学会雑誌に、世界初のアトピー性皮膚炎発症予防研究を発表。医学専門雑誌に年間10~20本寄稿しつつTwitter(フォロワー12万人)、Instagram(2.4万人)、音声メディアVoicy(5600人)などで情報発信。2020年6月Yahoo!ニュース 個人MVA受賞。※アイコンは青鹿ユウさん(@buruban)。

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