病院が盲導犬同伴を拒否、補助犬とペットのラブラドールとはどこが違うの?
京都新聞によりますと、視覚障害者の男性が「受診に際し、盲導犬を同伴したいと病院にお願いしたが拒否された」と掲載されています。
それを読んで、筆者は店舗などでなく病院でも補助犬を拒否する現実にショックを受けました。
そもそも身体障害者補助犬法は、病院や店舗を含む公共の施設では盲導犬や聴導犬、介助犬などの補助犬の受け入れを義務付けています。それなのになぜこのようなことが起こったのかを考えていきましょう。
盲導犬同伴を拒否した病院の言いぶんとは?
まずは、どのような経緯で、この盲導犬の同伴を拒否したかを見ていきましょう。
視覚障害者の男性が、病院にたいして事前に盲導犬の同伴が可能か問い合わせたところ、拒否されました。そのため関西盲導犬協会は、補助犬に関する窓口がある市障害保健福祉推進室と医療を担当する市医療衛生企画課に相談しました。それで行政から病院に補助犬法の趣旨などを説明してもらいましたが、受け入れられなかったということです。
京都新聞の取材に対し病院は以下のように回答しています。
「別の患者の中に、犬にアレルギーのある人や犬嫌いの人がいるかもしれない。法の趣旨は分かるが、少しでもリスクがある限り、現実的には受け入れられない」
盲導犬などの補助犬の理解がされているのか?
コロナ禍で犬や猫のペットの人気が出ています。
盲導犬は、一般的には、ラブラドール・リトリバーが多いです。街でお散歩しているペットとしてのラブラドール・リトリバーと盲導犬を同一に考えているのではないでしょうか。具体的にどのように違うのかを見ていきましょう。
遺伝的要素を配慮
盲導犬は、健康でいることはもちろんですが、それ以外にも将来盲導犬として、ユーザーが安全に街を歩けるようにすることが重要です。
その素質がある母犬から、子犬が産まれています。元気なラブラドール・リトリバーの子犬を教育すれば、なるというものではないのです(警察犬は、シェパードが多いのですが、トイ・プードルもなったりしています)。
実際、その子犬が盲導犬になるかならないかは、遺伝的要因が強く関与している、と言われています。ですから父犬、母犬は、過去に産んだ子犬のうち、何頭が盲導犬になったかということが重要な指標になっています。
そのような両親の元で産まれた子犬でも、全てが盲導犬になることは難しく、約3割の子が盲導犬の教育を受けるわけです。残り6~7割の子犬は一般のご家庭でペット犬としての犬生を過ごします。
盲導犬の生後2カ月の過ごし方
動物愛護法でも生後8週齢以降の犬や猫しか生体販売ができなくなっています。ペットにとっては、生後2カ月は大切な時期なのです。
子犬は約1カ月で離乳します。盲導犬は2カ月でパピーウォーカーのもとに巣立って行きます(パピーウォーカー制度のないところもあります)。
なぜ、生後2カ月間が大切かというと、「社会性」を身につけるためです。
盲導犬の子犬たちは母犬と兄弟姉妹犬とボランティア家族に囲まれ、犬社会と人間社会の両方の影響を受けながら成長します。特に、この時期に兄弟姉妹たちとたくさん遊びやけんかをすることは、以下のように大切なのです。
・人間や他の犬との距離の取り方を学ぶ
・犬同士で遊ぶことで、けんかの仕方を学ぶ
この時期に一匹で育ってしまうと、「空気の読めない」犬になってしまう可能性もありますので、人間社会に出て働く盲導犬には重要です。
盲導犬の生後2カ月から1歳まで
パピーウォーカー(子犬飼育ボランティア)制度がaるところでは、生後2カ月で、パピーウォーカー宅に預けられます。家族なので、子どもさんがいることも多く、一緒に旅行したりお散歩をしたりして、人間といることは楽しいことだと覚えます。
家族の一員として、「人間社会」をより深く経験するのです。
具体的には、テーブルマナーなどもこの時期に覚えます。
・人間の食べ物を欲しがらない
・勝手に食べ物を取らない
・落ちたものを食べない
厚生労働省の身体障害者補助犬のサイトより
上記のように1歳まで一般的なことを教えてもらい愛情一杯に育てられて盲導犬の訓練所に戻っていきます。訓練所で視覚障害者のユーザーが安全に街を歩けるように教えていくのです。
盲導犬とペットのラブラドール・リトリバーの違いとは?
盲導犬同伴を拒否した病院は、盲導犬に対して十分な理解がないかもしれません。それではどんな心配があるのか具体的な例をあげていきしょう。大前提は、盲導犬は視覚障害者の自立と社会参加に資するものとして、身体障害者補助犬法に基づき訓練・認定された犬です。それ以外のことを具体的に見ていきましょう。
□ニオイつけのために、オシッコをしないの?
盲導犬は、仕事前に排泄を済ませているので、病院に行ってもウンチやオシッコをすることはありません。ペットの犬には、初めて訪れたところは自分のテリトリーにしようとする子もいます。
□発情の有無
盲導犬は、不妊去勢手術をされているので、近くに発情中の子がいても興奮して近寄っていくなどはしません。
仕事中は、犬がいても興味は示さないのです。
□犬好きな人がいたら、飛びつくの?
一般的にラブラドール・リトリバーは、人が好きな子が多いですね。賢い犬ですが、犬が好きという動作を見せるとその人に飛びついてくる子も中にはいます。その点、盲導犬は、この人は自分のことが好きだということがわかっても仕事中は、飛びついてきたりせずに、平然としています。
□視覚障害者の方の診察中はうろうろしている?
ユーザーが待つようにコマンドを出していると、椅子の下などでじっとしています。だれもいないからといって、1匹でうろうろすることはありません。
□誤ってシッポを踏んだら怒る?
盲導犬は、ユーザーが座っているときは、基本的には足元にいます。おとなしくしているために、座っていて気がつかず誤ってシッポを踏んでしまっても怒ったりはしません。じっと我慢します。
ペットのラブラドール・リトリバーの場合は、あまり噛んだりしないですが、びっくりすることが多いです。
元来、ラブラドール・リトリバーは知的でフレンドリーな犬です。その中でも盲導犬は遺伝的な素養も考慮して、訓練されているので、犬が苦手な人にもほとんど影響がないですね。
仕事だけして、あとはじっとしています。
身体障害者補助犬が働きやすい社会を目指して
厚生労働省の身体障害者補助犬のサイトにより
身体障害者補助犬は、盲導犬、介助犬及び聴導犬のことをいいます。
厚生労働省の身体障害者補助犬のサイトによりますと、補助犬は身体障害者の自立と社会参加に資するものとして、身体障害者補助犬法に基づき訓練・認定された犬です。法に基づく表示をつけています。
□盲導犬
視覚障害のある人が街なかを安全に歩けるようにサポートします。
□介助犬
肢体不自由のある人の日常生活動作をサポートします。
□聴導犬
聴覚障害のある人に生活の中の必要な音を知らせ、音源まで誘導します。
このように身体障害者補助犬法に基づいているのですが、現実的には、社会的理解が低いようですね。
もちろん、犬アレルギーの人や犬が苦手な人もいます。そんななか自分と同じように相手のことを大切に思えるようになり、お互いに理解することが大切なのではないか、と思っています。
まずは、盲導犬などの補助犬が正しく理解されることが大切なのでしょうね。