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舞台から命のストーリーとお客さんへの感謝を届けたい――少女歌劇団ミモザーヌ インタビュー

宗像明将音楽評論家
左からすずきゆい、さかもとりるは、いわむらゆきね、みつふじまりん、ちばひなの

2020年12月からスタートした少女歌劇団ミモザーヌ。吉本興業に所属し、広井王子が総合演出を担当する少女歌劇団だ。しかも、20歳までのメンバーで構成されているという特徴がある。

2024年8月に開催される公演「ジャングル・レビュー ~Living~」に向けて活動する、いわむらゆきね(18歳・1期生・団長)、ちばひなの(17歳・1期生・副団長)、すずきゆい(20歳・1期生)、さかもとりるは(3期生・17歳)、みつふじまりん(14歳・5期生)に話を聞いた。

なお、取材後の2024年7月18日、「ジャングル・レビュー ~Living~」をもって少女歌劇団ミモザーヌは「劇団リニューアル期間」に入ることがアナウンスされた。

――ミモザーヌに入ったきっかけを教えてください。

いわむらゆきね もともと小学生のときからダンスを習っていて、そのなかでお芝居や歌にも興味が出てきて、小劇場で歌ったりもしていました。もっと大きな舞台に挑戦してみたいなっていう気持ちが出てきたときに、お母さんが少女歌劇団プロジェクトを見つけてくれて、1期生オーディションに応募しました。

さかもとりるは ダンススクールに行ってたんですけど、コロナ禍で自粛になっちゃったんです。そのときにミモザーヌを見つけて、新しい挑戦をしようと思ってオーディションを受けました。

さかもとりるは(筆者撮影)
さかもとりるは(筆者撮影)

――さかもとさんは3期生だから、ある程度ミモザーヌの活動を見てから決めたんですか?

さかもとりるは 活動は見てなかったんですよ!(笑)

一同 あはは!

さかもとりるは ホームページを見ると、かわいい女の子たちがすごく楽しそうだなって思って。でも、入ってみたら「楽しいだけじゃないんだな」っていう厳しさを突きつけられて、逆に「頑張らなきゃ」っていうのが自分に刺さって、今も続けているのかなって思います。

すずきゆい 私も1期生なので、何も知らない状態だったんです。私もダンスをやっていて、地元ダンススクールを辞めたところで、ミモザーヌのオーディションの情報を見たんです。そのとき「これって運命?」みたいに感じて、挑戦してみようってオーディションを受けてみたのが最初でした。

みつふじまりん 少女歌劇団ミモザーヌって聞いたときは、すごくカチッとしたイメージがあったんですけど、ホームページやSNSを見ると、みんなめちゃくちゃ楽しそうで、とにかく楽しんで歌って踊っているのがすごく魅力的に見えて。楽しんでやるほうが自分の魅力を広げるんじゃないかな、って思って入りました。

ちばひなの ダンスを幼稚園の頃からやっていて、地元の小さいダンススクールだったから、もっと大きい舞台でいろんな人の前で踊ってみたいって思ったときに、ダンスの先生がミモザーヌのオーディションを教えてくださったんです。1期生の募集だったんで、正直何をする劇団なのかよくわかってない状態だったんですけど、「やらずに後悔するならやってみようかな」って挑戦してみました。

ちばひなの(筆者撮影)
ちばひなの(筆者撮影)

――このなかで広井王子さんを最初から知っていた方はいますか? ……ゼロですね。NMB48のオーディションを受けたことがある方はいますか? ……ゼロですね。実は宝塚歌劇団に入りたかった方はいますか? ……みつふじさんですね。

みつふじまりん 観劇するのは好きだったんですけど、自分がいざやるってなったら、何か違うかなってミモザーヌにしました。

――ミモザーヌは20歳までのシステムですが、すずきさんはもう20歳ですよね。

すずきゆい はい、今回の夏公演で卒業いたします。

――あと1か月じゃないですか、めちゃめちゃ寂しくないですか?

すずきゆい 寂しいです! 応募したのは中学2年の冬休みとかでした。20歳ってすごく遠いと思っていたから、本当にノープランでした。でも、20歳までって期限が決まってるから、やってみようと飛び込めたなって思います。卒業後は、続けていたダンスもやらせていただきながら、お芝居のほうにも挑戦させていただきたいなと思ってます。

すずきゆい(筆者撮影)
すずきゆい(筆者撮影)

――他のみなさんは、20歳までのシステムをどう受けとめているんですか?

いわむらゆきね 入ったときは20歳なんてまだまだ先のことだと思ってたんですけど気づけば最年長から2番目になって、どんどん下も入ってきて。でも、私はやりたいことが決まっていて、役者の道に進みたいなと思います。

ちばひなの 入った当時は1期生のなかでも年少組だったので、ふたり(すずき・いわむら)以上にまだまだ先のことやと思って、自分事やと思ってなかったんです。入団して5年経って、残り3年で、いた期間より残りの日が短いって考えたら、あっという間に終わっちゃうんやなって思うんで、残りの時間を大切にして、吸収できるものは全部吸収していこうって思ってます。

さかもとりるは ミモザーヌに入ると、時が過ぎるのがあっという間で。いろんな経験をさせてもらうから、あっという間なんですよ。だから4年間もあっという間でした。

――この先の3年間は心配ありませんか?

さかもとりるは 心配です!

一同 あはは!

さかもとりるは 心配ですけど、これからもっと「自分がどうにかしなきゃいけない」っていう気持ちを持って行動していきたいなって思ってます。壮大なこと言っちゃった(笑)。

みつふじまりん まだ14歳だから、卒団はまだまだ遠いなって自分では思うんですけど、ゆいちゃんと同じ楽曲に出させていただいたりもしたので、やっぱり卒団もそのうち来るんやなと思ってます。

みつふじまりん(筆者撮影)
みつふじまりん(筆者撮影)

――ミモザーヌでは、歌とダンスだけではなく、演劇、日舞、茶道、殺陣、アクロバットなどをレッスン課目に取り入れているそうですが、大変なのではないでしょうか?

ちばひなの ミモザーヌは、入団して3年間は基本的には基礎しかできないんですよ。歌とダンスの基礎が基本になっていて、その3年を越えたメンバーは、どんどん応用で華道だったり日舞だったりをやらせていただけるんです。3年間みっちり基礎メニューがあったから、応用にも対応できるようになるし、私はフラメンコが自分の中の強みなんです。そういう自分の知らないものに出会えるのがすごくありがたいです。

いわむらゆきね 基礎の時期にちょうどコロナ禍がかぶってしまって、舞台にも立てず、ひたすら基礎練をする時間があって。しかも、みんなで集まって稽古もできず、リモートで練習をする時期があって、私は正直、基礎練の時間がとてつもなく長く感じたんです。でも、ひなのも言ってくれてるように、今となっては本当にやって良かったなと思います。

いわむらゆきね(筆者撮影)
いわむらゆきね(筆者撮影)

すずきゆい みんなが言ってくれた通り本当にきつかったですし、頑張ってるけど「頑張ってたよね」っていう結果で終わっちゃうのかなって不安もありました。先が見えなくてみんな不安だったんですけど、基礎をやらせてもらえて、足元を固めることができたことは、本当に幸せなことだったんだなってすごく思います。

さかもとりるは 3期生はラッキーで、リモートの期間もあったけど、一番最初だけだったんですよ。すぐ公演に出られたんです。1期生、2期生よりは苦しくなかったんですけど、それでもできないことが多いと「この道じゃなかったのかも」って思うこともすごく多くかったですね。でも、できるようになるとめちゃめちゃ嬉しくて、嬉しい気持ちのほうが大きかったです。

みつふじまりん 基礎をずっとやるので、1年目とかは「やば、終わらへん」と思ってたんですけど、今となってはそれがあったからこそできるようになってることも実感できるので、その時間は本当に大事にしようって思います。

――みなさんが「ここはミモザーヌの特徴だ」と考えている部分を教えてください。

いわむらゆきね 私達10代のグループって、ポップスをやってるグループが多いのかなって思うんですけど、私達はポップス以外にもジャズだったり、昭和歌謡だったり、民謡だったりもやってるので、そこが他のグループと違うところなのかなって。古い曲も多いので、若い方からお年寄りまで、みんなに楽しんでもらえるグループかなと思います。

すずきゆい ミモザーヌは個性豊かなんですよ。それぞれ特化してるものが全然違って、トークだったりお芝居だったり。やっぱりレッスンでいろんなことをやらせていただくからこそ自分の中で輝くものが出てきて、それをみなさんにお届けできているんです。

ちばひなの 本当にびっくり箱みたいな劇団です。10代がフラメンコだったりアクロバットだったり日本舞踊だったり、いろんなことをやってるんです。昭和歌謡やジャズを歌うのも、私達自身にも驚きがあって。私がミモザーヌに入って最初の公演のときに驚いたのは、フラメンコとアクロバットを融合させてパフォーマンスをしていたことなんです。公演の中に遊びが詰めこまれているのがミモザーヌの魅力だと思います。

左からちばひなの、いわむらゆきね、すずきゆい(筆者撮影)
左からちばひなの、いわむらゆきね、すずきゆい(筆者撮影)

さかもとりるは 10代の少女なので、未完成なところが魅力だと思っていて。身長が伸びるという成長も見れるし、パフォーマンス面でもできるようになる過程を見られるのが魅力かなって思っています。

みつふじまりん 私はメンバーに個性があるのがすごく魅力的だなと思ってて、お芝居が得意な方だったり、歌がすごい上手な方だったりとか、それぞれいろんな個性があるので、そこを見ていただければなと思います。

左からさかもとりるは、みつふじまりん(筆者撮影)
左からさかもとりるは、みつふじまりん(筆者撮影)

――8月に行われる公演「ジャングル・レビュー ~Living~」のみどころを教えてください。

みつふじまりん 動物の役としての個性を見ていただけるんじゃないかなって思ってて。みんなすごく動物について「こういう癖がある」とか調べてるので、それを出していけたらなって思います。

さかもとりるは 一幕は「生きる」っていうテーマで、動物の動きをしているだけじゃなくて、踊ったり歌ったりしているのが見どころだなって思っています。二幕は、フラメンコとか日本舞踊とか、いろんな挑戦をしているのが見どころだなって思います。

ちばひなの 人間は未来のことを考えていても、動物たちって今日一日を生きることを目標としていて、食物連鎖の中で食べられる動物たちはそれも受け入れていて、そういう人間と動物の対比も見られるかなと思っています。残酷さだけじゃなくて、生きることの希望だったり、素晴らしさだったりも感じられると思います。一幕は、基本的にはメンバーが常にステージ上に全員いる状態で、エネルギッシュでパワフルで壮大なショウとなっているので楽しみにしていただけたらと思います。

すずきゆい この公演で私は卒団なので、集大成をお届けしなければいけないと思っています。ずっと私がダンスを強みとしてやってきたので、二幕ではそれをお届けできるようにしたいです。メンバーで一部の振りを作った曲があるので、そこもみなさん楽しみにしていただきたいです。

いわむらゆきね 生きるというテーマを、ナマモノの舞台を通してお届けするっていうのが私はすごく面白いなと思ってて。舞台って生命の集まりで、演者の命があって、お客さんの命があって、それを支えてくださるスタッフさんたちの命があって完成するものなので、舞台という名のジャングルがそこに広がってると思うんです。そのなかで命のストーリーと、お客さんへの感謝を届けたいなって思ってます。一幕では、大人数のシンクロしたダンスで迫力いっぱいに強いメッセージを伝えるので、そこに注目してほしいなって思ってます。

左からすずきゆい、さかもとりるは、いわむらゆきね、みつふじまりん、ちばひなの(筆者撮影)
左からすずきゆい、さかもとりるは、いわむらゆきね、みつふじまりん、ちばひなの(筆者撮影)

音楽評論家

1972年、神奈川県生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。著書に『大森靖子ライブクロニクル』(2024年)、『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』(2023年)、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(2016年)。稲葉浩志氏の著書『シアン』(2023年)では、15時間の取材による10万字インタビューを担当。

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