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白キャン解散直前インタビュー:三浦菜々子「私達が伝えたいこともなくライヴをするのは違うと思う」

宗像明将音楽評論家
三浦菜々子(株式会社PLAYYTE提供)

7人組アイドル・グループの真っ白なキャンバス(通称:白キャン)が、2024年11月4日に幕張メッセ幕張イベントホールで解散ライヴ「明日も変わらない1日を」を開催し、7年間の活動に終止符を打つ。

解散ライヴに向けての7人の個別インタビューの6人目は三浦菜々子。その歌唱力の高さゆえに「白キャンの歌姫」と呼ばれてきたものの、謙遜し続けるメンバーでもある。そして、以前所属していたグループが突然活動を止めたため、10年以上のアイドル生活で、今回初めて解散ライヴを経験することになる。三浦菜々子に話を聞くと、それは自然とアイドル生活の振り返りになった。

解散が決まって変わったところはない

――解散が決まってから、ライヴや特典会で自分が変わったところってありますか?

三浦菜々子 ないです。

――ない?

三浦菜々子 はい(笑)。解散する話が出たとき、一番最後まで「嫌だ」って言ったのは私でした。しんどかったですね、解散が決まったときは。でも、5月に発表する頃には、自分ももう整理はついてました。結局は時間が解決するんだな(笑)。

――そういう状況で、白キャン最後の日々をどう過ごしてるんですか?

三浦菜々子  メンバーによっては、一個一個エモい気持ちや寂しい気持ちでライヴをやってる人もいるかもしれないけど、私としては別に解散だからって何かを変えたつもりはないし、変えてないです。もちろんTIFが最後、夏フェスが最後っていうのはあるけど、私としては前のグループ(Stereo Tokyo/2017年に活動停止)が急になくなってるから、次があることが当たり前だとは思ってなかったんです。コロナ禍でTIFも無観客になったし、「当たり前の状況」ってあんまりないし、自分がいつまでも白キャンにいるかも別に確証があったわけじゃないし、「次もあるからいいや」って気持ちでライヴに挑んでなかったから、それは解散に関係なく何も変わらないです。だから、見え方が変わったんだとしたら、受け取り手側の気持ちが変わったんだと思います(笑)。

――いかにStereo Tokyoの経験が大きかったかという話ですね。

三浦菜々子 そうですね、なかなかないですよね(笑)。白キャンの解散決まってからのインタビューでも、「思い出に一番残ってるライヴはなんですか?」と聞かれるんですけど、ライヴで最初に出た瞬間が一番記憶に残ってて、どんどん自分たちを見に来てくれる人の数が増えたのを覚えてますね。幕があったり、紗幕があったり、いろんな出方があったけど、私達がステージにスタンバってて、初めてファンの人たちに対面する瞬間は、どのライヴも全部覚えてるし印象深いです。でも、ちょっと時間が経つと反省点に悩まされるから、「楽しかった」って100%思えてる時間はすごく短くって。いつも終わった直後ぐらいに「でも、あのときこうすれば良かった」と思ったり、動画を見返して「ハッ、こうなってる」と気づいたり、反省点がどんどんどんどん出てくるから、100%「楽しかった」で終わったライヴはないです。

2024年10月14日なんばhatch公演の三浦菜々子(撮影:真島洸/提供:株式会社PLAYYTE)
2024年10月14日なんばhatch公演の三浦菜々子(撮影:真島洸/提供:株式会社PLAYYTE)

こんなにアイドルに向いてない人はいない

――楽しかった思い出や嬉しかった思い出はありますか?

三浦菜々子 えー、なんだろう(笑)。ライヴは楽しくてすごい好きでしたね。レコーディングもすごく楽しかった。レコーディングは、キングレコードさんでメジャー・デビューしたときに担当してくださってた方が、一緒に作るタイプで。それまでは葵さん(古屋葵/白キャンの多数の楽曲の作編曲を担当)が言ったことに対して、どこまで自分ができるかみたいな感じだったのが、キングさんでまた違った方法で、どんどんフレーズが出来上がってく感じがすごく楽しくて、『共創』(2021年のアルバム)を作ったとき、歌に対して一個引っ張りあげてもらった感じはありました。私の歌声って、めっちゃ癖が強いんですよ。ボイトレで「それを消しなさい」って言う先生もいれば、「もっともっと出していきましょう」って言う先生もいたりして。葵さんもキングの方も、「癖をいかそう」みたいに基本的に肯定してくれて、それをより良くいかすためにはどうするかみたいな感じでやってくれたのが、歌に対して「楽しい」と思うきっかけになったのかなと思います。もっと自由でいいんだな、って感じました。

――ファンとのことではなく、歌のことなのが三浦さんらしいですね。

三浦菜々子 だから、もう10年以上アイドルやってるのに、本当に根っからアイドル向きじゃないですよね(笑)。こういうときにファンの人との思い出を言えないっていう(笑)。歌とかになっちゃうんですよね。

――あはは。

三浦菜々子 こんなにアイドルに向いてない人はいないと思うんですけど、気づいたら10年やってて、解散が決まったら「歌は絶対に続けてください」とか「アイドルをやってください」って言ってもらうことがあって、めっちゃびっくりしました。「歌は続けてください」は、歌が好きだって言ってくれる人もいるからわかるんですけど、「アイドルを続けてください」って言われたのが、めっちゃびっくりして(笑)。逆に、こんなにアイドルに向いてない人はいないけど、10年もできたし、応援してくれる人もいるから、本当に全アイドルに自信を持ってほしいですね(笑)。

――急に話がでかくなりましたね(笑)。

三浦菜々子 いろいろ悩む人もいると思うけど、こんなんでも白キャンで6年できたから、「みんな自信持って!」って感じです。解散するとなったとき、ファンの人に「俺ももうオタク卒業だよ」と言われても、「いいっていいって」みたいに言ってたんです。アイドルファンは、アイドルの推しがいなくなったら新しい推しができるんだから、そんなこと言わなくていいのに、って思うんです。でも、みんな自分のために言ってくるんですよ、そういう話を。「ななちゃんが一番だよ、ななちゃんが最後の推しメンだよ」って言ってくれて、気を遣ってくださってるのはありがたいことだし、そう言ってくれるのはありがたいことです。

――でも、一定数は本当にアイドルファンをやめると思いますよ。

三浦菜々子 それはそれで、その人の人生だからいいと思うし、私は「自分がアイドルを辞めた後に他の推しを作らないで」とか思わないんですよね。幸せにアイドルを推すことが、その人の幸せなんだったら、どんどん推しメンを見つければいいと思うし。アイドルとファンの人の関係って、彼氏彼女と違って、何人好きになっても許されるし、何人のチェキに行っても許される関係じゃないですか。それを最大限いかすのは別に悪いことじゃないな、って思うんです。でも、他の推しメンを作る匂わせをしてくる人に対して、私は前までは「いってらっしゃい」みたいな感じだったけど、良くないっていうのを白キャンのメンバーに「ななちゃん、そういうところちょっとドライだから『行かないで』みたいに言ってあげたほうがいいよ」って教えてもらって学んで、それを実際にしたんです。でも、もう私はあと2か月(取材時)の命だし(笑)。あと2か月のアイドル生命だから引き止めてもかわいそうか、って思うようになって「寂しいー」みたいな感じは出しつつ、「行ってきな!」って感じです、今は。

――そういう話を聞いていると、Stereo Tokyoと白キャンでは、ファンとの関係性が大きく変わったんだなと感じますね。

三浦菜々子 Stereoのときはガチ恋とかなかったですもんね。「アイドルとファンの人」っていう感じじゃなくて、みんながメンバーみたいな(笑)。だって、フロアにメンバーが飛び込んでいっても、キャーともワーともならないし、なんならメンバーが踊るスペースを空けてみんな踊ってるみたいな不思議な距離感だったけど、白キャン入ってから「普通のアイドルってこうだよな」みたいに思って(笑)。

――みんなが自分のことを見るのが怖かったって言ってましたもんね。

三浦菜々子 マジで怖かったです、最初(笑)。なんでみんなこっち見てんのと(笑)。

2024年10月14日なんばhatch公演の三浦菜々子(撮影:真島洸/提供:株式会社PLAYYTE)
2024年10月14日なんばhatch公演の三浦菜々子(撮影:真島洸/提供:株式会社PLAYYTE)

白キャンの曲が残ってくれたら嬉しい

――解散ライヴが幕張イベントホールだと聞いたときは、どう思いましたか?

三浦菜々子 正直もう立てないんじゃないかと思ってはいたので、最初聞いたときは、グループが目標としていた場所で終われる、目標を達成できるという意味で、ここまでしてきたことが報われる……じゃないけど「良かったぁ」という気持ちでした。だけど、「幕張でやる」ことを頭でちゃんと理解しだして、じわじわと大丈夫かな……って怖さと、でもせっかくあんなところで歌えるんだから、最大限やりきりたいし、楽しみきりたいなという気持ちが生まれました。

――幕張のステージに立ったらどうなると思いますか?

三浦菜々子 どうなるんですかね、本当は泣きたくないんですよね。でも、小野寺梓が泣くとちょっと泣いちゃう(笑)。釣られちゃう。彼女は全員メンバーを釣ってくんで、みんなおのちゃんが泣いてると釣られる(笑)。

――泣きたくはないんですね。

三浦菜々子 ちゃんと歌いたいんです。解散っていう前提をとっぱらったときに、お金を払って見に行って、全編アイドルが泣いてるライヴって、意味わかんないじゃないですか(笑)。だからちゃんと歌いたいな、って思います。見に来てくれた人に対して「解散だ、最後だ、悲しい」を伝えたいわけじゃないし。

――解散ライヴは、どんなものにするのが理想ですか?

三浦菜々子 わかんないです、解散ライヴが初めてで!(笑)

――あはは! Stereo Tokyoは、ある日を境に突然ライヴがなくなりましたもんね。

三浦菜々子 そうなんですよね。その当時、メンバーみんなでラストライヴがやりたいって大人に交渉したら、感謝を伝えるライヴに意味があるのかと言われたから、ラストライヴって「ありがとう」を伝えるだけのライヴじゃいけないんだろうなっていうのは、うっすら思ってます。かといって、どういうライヴにしたらいいのかっていうのは、ちょっとまだ答えが見えてないです。

――納得がいくように歌いきりたいっていう気持ちが強いんじゃないですか?

三浦菜々子 まぁ、納得いくことなんてあんまりないんですけどね(笑)。

――相変わらず自分に厳しいですね。

三浦菜々子 厳しくはないんですけど、でもみんなの前で歌うのは最後かもしれないし、わかんないけど(笑)。だから、「良かった」って思ってほしいですよね。白キャンを応援してて良かったって、純粋に思ってほしい。私達が何かを伝えたいと思っても、受け取る側の自由じゃないですか。だから、ファンの人が「良かった、楽しかった、最高だった」ってなれば正解なのかなとは思うけど、だからといって私達が伝えたいこともなくライヴをするのはまったく違うと思うんです。たぶん自分はアイドルとしてラストだし、そういうステージでどうしたいかっていうのは、本番までにちゃんと整理をつけたいなと思います。

――整理はつきそうですか?

三浦菜々子 わかんないですけど(笑)、「解散! ラスト! ありがとう!」っていう気持ちではやりたくないかな。それも大事だけど、でも白キャンの曲は残り続けるし、アイドルをやってて、自分のたちの曲が残るってすごく素敵なことだなっていうのはめっちゃ思います。

――曲はやっぱり残ってほしいと。

三浦菜々子 いやでも必要ないんだったらいいと思う(笑)。でも、何かふとしたときに「聴きたいな」って思ってもらえるような曲だったらいいな、って思いますね。だって、私いまだにカタカナ時代の「ステレオ東京」のときのデビュー曲のメロディーが頭に浮かんできて、「やっぱり聴きたいかも!」って聴くときありますもん。もう10年前ぐらいの曲だけど、白キャンの曲もそうなったら嬉しいですよね。曲って聴くと、そのときのことを思い出すじゃないですか。それでみんなが「あのとき楽しかったな」とか「白キャン、通ってたな」みたいに思い出してくれたら素敵だなと思います。

真っ白なキャンバス(株式会社PLAYYTE提供)
真っ白なキャンバス(株式会社PLAYYTE提供)

真っ白なキャンバス ラストライブ『明日も変わらない1日を』

2024年11月4日(月・祝)

幕張メッセ 幕張イベントホール

開場:17:30 / 開演:18:30

https://shirokyan.com/news/3632/

音楽評論家

1972年、神奈川県生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。著書に『大森靖子ライブクロニクル』(2024年)、『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』(2023年)、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(2016年)。稲葉浩志氏の著書『シアン』(2023年)では、15時間の取材による10万字インタビューを担当。

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