白キャン解散直前インタビュー：小野寺梓「最後は『やっぱり解散してほしくない』って思われたい」
7人組アイドル・グループの真っ白なキャンバス（通称：白キャン）が、2024年11月4日に幕張メッセ幕張イベントホールで解散ライヴ「明日も変わらない1日を」を開催し、7年間の活動に終止符を打つ。
解散ライヴに向けての7人の個別インタビューの最後は小野寺梓。2017年の結成からのオリジナル・メンバーにして、唯一7年間ずっとステージに立ち続けてきたメンバーだ。小野寺梓自身も、すべてのライヴの現場にいたのは自分だけだと言い切る。そんな小野寺梓の人生にとっての白キャンとは。
肯定された気持ちになったことが忘れられない
――白キャンの解散が決まってから、ライヴや特典会で変わったところってありますか？
小野寺梓 うーん、最後を実感するのがまだつらくて。自分はアイドルを続けるって発表してるから、ファンの人が寂しがっても、「大丈夫、アイドル続けるから！」みたいに、逆にいつも通りしようとしちゃってる自分がいるかも、って最近思ってきて。もう2か月を切ってる（取材時）ってわかってるし、ライヴで泣いちゃったりするんですけど、悲しませないように振る舞っちゃってるし、現実逃避しちゃう自分がいるように感じるので、あんまり発表前と変わらずに接しちゃってるかもですね。
――白キャンの解散にあまり向き合ってない部分がある？
小野寺梓 ちょっとあるんじゃないかな。今まではファンの人を元気づけようと思ってやってたけど、たぶん自分の心を守ってるところもあるんだろうな、って最近気づいてきちゃいました。
――小野寺さんから見てファンの人はどんな雰囲気ですか？
小野寺梓 もちろん人によって違って、最後だから何年も前のファンの人が会いに来てくれることも最近多いんですけど、悲しすぎて現場に来られてない人もいるから、やっぱりつらいことなんだよなと思います。白キャンのファンの方は、やっぱり白キャンの曲が刺さる方たちだから、心に繊細な部分を持ってると思うから。でも、複雑な部分はあると思うけど、最後には来てくれたら嬉しいなって思います。
――白キャンの活動で嬉しかった思い出、楽しかった思い出はどんなことですか？
小野寺梓 たくさんあるけど、特に3つあって。ひとつは、梓のXのヘッダーにもなってるメイン争奪（『TIF2019メインステージ争奪LIVE』）の次の日のガンダム（2019年8月3日『TOKYO IDOL FESTIVAL2019』FESTIVAL STAGE）。メイン争奪には負けたけど、「おまえらすごいよ」って肯定してくれてるような気持ちになって、あそこはずっと忘れられなくて。ふたつめは、ファーストワンマン（2018年3月28日渋谷チェルシーホテル『Ending is Beginning』）。お披露目はパンパンだったんですけど、その後すごく人が減って、対バンのお客さんはひと桁が続いたけど、ファーストワンマンでたくさんの方が来てくれて、そこも肯定された気持ちになって。「こんなに人が来てくれるんだ、ワンマンライヴができる存在なんだ」みたいな。本当に想像の何倍も人がいました。3つめは、（橋本）美桜と（西野）千明が入ったSELENE（2018年12月31日）。（立花）悠子が抜けて「白キャンは終わりでしょ」ってめっちゃ言われてたけど、SELENEが超満員だったので、「まだいけるんだ」っていう気持ちにさせてもらったんです。全部同じような理由かも（笑）。
――そういう「本当に苦しいけど救われる」っていうのが、小野寺さんにとっての白キャンのストーリーなんですね。
小野寺 えー、たしかにそうですね（笑）。最初のほうしかなくてやばい（笑）。
――2019年以降の思い出はあります？
小野寺梓 えー、でももうずっとつらかったかも（笑）。2019年は、本当にメンタルがぶっ壊れてたし、精神が不安定だったので、毎日のように泣いてたし。つらかったけど、でも今振り返るとうらやましいんです、どんどん上昇していたことが。それがあったから頑張れたと思うし。
――とはいえ、2020年代も生誕祭は思い出深いんじゃないですか？
小野寺梓 うん、たしかに生誕祭（涙を拭く）。
――え、もう泣いたんですか？
小野寺梓 わかんない（笑）。毎年生誕祭はとっても幸せだし、周年も毎年とっても幸せです。
解散ライヴは冷静でいたい
――解散ライヴを幕張イベントホールでやると聞いたときはどう思いましたか？
小野寺梓 正直、その瞬間は恐怖と不安が勝ったんですけど、冷静に考えると、やっぱり結成当初に掲げた目標を叶えて終われるっていうのはすごく幸せなことだし、グループとして完成して終われるのかなって思ったから、幸せなことだなって思いました。でも、個人的には「武道館に立ちたい」ってずっとファンの人に言っちゃってたので、「どこかは叶えられないものがあるんだな」って思って、アイドルへの未練が残るなと思いました（笑）。
――幕張への恐怖と不安はどうにかなったんですか？
小野寺梓 なってないです。
――目が潤んでますね。
小野寺梓 でも、この後TikTokを撮りたいから泣きたくない。ちゃんとしっかり答えたいです。
――自分が幕張ステージに立ったら、どういう気持ちになると思いますか？
小野寺梓 うーん……意外に冷静でいたい（笑）。
――みんな小野寺さんは開演前から泣くだろうという見立てでいるけど、冷静でいたいと。
小野寺梓 いたいですね。やっぱり、それが白キャンの私としての最後の姿になるから。だから、そこでずっと泣いてるのはすごく嫌で。ちょっと冷静になって（笑）、その空間を楽しみたいし、成長した私を見せたいです。
――今、話しながら目に涙が溢れてますよ。
小野寺梓 （笑）。
――作戦として、1曲目でもう泣いておいて、あとは最後まで我慢するのはどうでしょう？
小野寺梓 いや、泣くと喉がむくんじゃって歌に影響が出るんです。昔よりは泣いた後に持ち直して歌えるようになったんですけど、それでも歌いづらいから、ずっと冷静でいたいです（笑）。泣くなら最後の1曲だけ（笑）。
――解散ライヴはどんなものにしたいですか？
小野寺梓 「すごいアイドルだったな」って言われたいかも（笑）。やっぱり惜しまれて終わりたい。ファンの人を悲しませたくない、って最初に言ってたのと矛盾するんですけど、でも最後は「やっぱり解散してほしくないよ」って思われたいです。
――残りの日々でもそう思われたいですか？
小野寺梓 それまでの期間は、大事な残り少ないライヴだから楽しい気持ちにしたい……とか言って泣いちゃってる自分がいるから本当に矛盾してるんですけど（笑）、解散ライヴまで本当に泣きたくない（笑）。最近ずっと泣いてなかったんですけど、最後の「MARQUEE祭」は（2024年9月10日）久しぶりにダメだった。
――あれは見ていて胸が揺さぶられるものがありましたよ。
小野寺梓 夏フェスも思い出深いけど、逆にすごく出てる対バンとかも日常で、思い出がいっぱいありました。
――最後のTIF、最後の夏フェスを過ごしてみてどうでした？
小野寺梓 本当に感謝。関係者の方がすごいステージに用意してくださったのも嬉しかったし、ファンの方たちもたくさんの方が見てくださったので、頑張ってきて良かったなって思いました。
――白キャンの小野寺梓としては、もう思い残すことがないぐらい？
小野寺梓 本当にそうです、だって他にもたくさん解散するグループさん、現体制終了のアイドルさんがいるなかで、こうやって良くしてもらってるから。
たくさん葛藤しながら今の小野寺梓が完成した
――白キャンの解散とともに、私もアイドル関連の仕事を廃業するんですよ。解散、という白キャンの潔さとともに、アイドルライターの私は死ぬのがいいだろうと思ったんです。
小野寺梓 でも、梓は無期限休止にしたいって言ったんですよ（笑）。
――それはなぜ？
小野寺梓 Berryz工房さんが無期限活動休止で、しかも梓はいまだに復活を諦めてないんです（笑）。だから、梓は休止にしたいって言ったけど、今思うと解散で良かったのかなって思います。休止にしてたら曖昧な感じっていうことですよね？
――そうです。無期限休止にしてでも、いつか続けたいっていう気持ちもあったわけですか？
小野寺梓 そうですよ。
――続ける可能性を残したかった？
小野寺梓 お休みしたらまたできるかもしれないし、解散しちゃったらできないから休止にして、どうなるかわからないけど未来に託そうみたいな（笑）。「未来で復帰したいな」っていう気持ちがあって、そうしたいっていう提案はしたけど、みんな解散が良かったから。でも、解散しても復活してもいいですよね、って思ってる（笑）。
――2024年7月8日に第1期BiSの再結成ライヴがあったんですけど、すごい体験でしたよ。白キャンも解散したら10年後に再結成してください。
小野寺梓 したいです、自分の中でする気満々で（笑）。だからこそ自分が活動しておかないと、白キャン自体が忘れられちゃう気もして。自分がもっと有名になったら、自分の動員で復活ライヴの会場も大きくできるかもしれないし、だから復活したいモチベです（笑）。
――解散となったけれど、未来に希望は託してるんですね。
小野寺梓 全然またやると思ってる（笑）。梓の願望ですけど、メンバーによく言ってます。なんなら毎年周年やりたい（笑）。
――解散しても周年ライヴをやるのは聞いたことがないですよ（笑）。
小野寺梓 あと、「私達が真っ白なキャンバスです」って言いたかったから休止にしたいっていうのもありました。ずっとプロフィールに書き続けたいし。
――そういう意味でも、小野寺さんにとって、この7年間は白キャンが人生そのものだったんですよね。
小野寺梓 この小野寺梓を作った場所、基盤になった場所っていうか。たくさん葛藤しながら、今の小野寺梓が完成したので、小野寺梓として羽ばたいていきたいです。
――もしかすると、解散する痛みは、これからすごく感じるかもしれないですよね。
小野寺梓 いやでも、けっこう腹をくくりました。
――おお！
小野寺梓 （手を叩いて笑う）
――覚悟をしたんですね。
小野寺梓 うん。逆に感謝って感じです。だって、辞めるアイドルさんがいっぱいいるなかで、白キャンはこんなにメンバーが続けてくれて、感謝だなって思います。今、気持ちがそう切り替わったって感じかな。冷静に考えてすごいなって。
――あとは後悔ないように過ごしてほしいです、ハードスケジュールだけど。
小野寺梓 でも、大型連休が待ってるから大丈夫です、11月4日以降は（笑）。とりあえずみんな病まないで、元気で過ごしてほしいです。
真っ白なキャンバス ラストライブ『明日も変わらない1日を』
2024年11月4日(月・祝)
幕張メッセ 幕張イベントホール
開場：17:30 / 開演：18:30
