トルコ軍がシリア北部でロシア軍のパトロール部隊を砲撃、ロシア軍は地対地ミサイルでトルコ占領地を攻撃
ガラパゴス化したアル=カーイダ系諸派が「トルコの支援を受ける自由シリア軍」(Turkish-backed Free Syrian Army:TFSA)とともに、イドリブ県とハマー県でシリア・ロシア軍と交戦する一方、アレッポ県北部では、トルコ軍とロシア軍による攻撃の応酬が行われた。
○「ガラパゴス化するシリアのアル=カーイダとシリア・ロシア軍の戦闘が激化」
シリア北部の勢力図
トルコは、アレッポ県北部のジャラーブルス市一帯、バーブ市一帯、アアザーズ市一帯に至るいわゆる「ユーフラテスの盾」地域、同県アフリーン市一帯のいわゆる「オリーブの枝」地域、そしてラッカ県タッル・アブヤド市一帯とハサカ県ラアス・アイン市一帯のいわゆる「平和の泉」地域を占領下に置いている。
その南側、すなわち、アレッポ県マンビジュ市一帯、タッル・リフアト市一帯、ラッカ県アイン・イーサー市一帯、ハサカ県タッル・タムル町一帯は、クルド民族主義勢力の民主統一党(PYD)が主導する北・東シリア自治局とシリア政府によって共同統治されており、シリア民主軍が展開するほか、トルコ占領地との接触線一帯と主要都市にはシリア軍とロシア軍の部隊が駐留している。
にわかに激しさを増すトルコ軍・TFSAとシリア民主軍の戦闘
接触線一帯では、トルコ軍とTFSAが連日、北・東シリア自治局と政府の共同統治地への砲撃を繰り返し、シリア民主軍が応戦を続けている。
そんな同地で2月9日、にわかに戦闘が激しさを増した。PYDに近いハーワール・ニュース(ANHA)によると、トルコ軍とTFSAが、バーブ市の東に位置するシリア政府と北・東シリア自治局の共同統治下のアリーマ町、カーウカリー村、ジュッブ・ハムラ村を砲撃したのである。
シリア民主軍に所属するバーブ軍事評議会が応戦、ANHAによるとシリア軍もこれに参加した。英国を拠点に活動する反体制系NGOのシリア人権監視団によると、その際に、シリア民主軍は「ロシアの指示」を受けてバーブ市を砲撃、子供2人と女性3人を含む9人が負傷した。
国営のシリア・アラブ通信SANAも、バーブ市西郊外でのTFSAとシリア民主軍の戦闘で、子供5人と女性3人を含む住民14人が巻き添えとなって負傷したと大きく伝えた。
戦闘はバーブ市一帯にとどまらなかった。TFSAは、マンビジュ市一帯に潜入し、同地に展開するシリア民主軍所属のマンビジュ軍事評議会の拠点複数カ所を攻撃したが、マンビジュ軍事評議会がこれを迎撃、戦闘員5人(司令官1人を含む)を殺害した。
トルコ軍によるロシア軍パトロール部隊への砲撃
2月9日になると、緊張はさらに増した。
マンビジュ軍事評議会の広報センターは同日の声明で、マンビジュ市北東のトルコ占領地内にあるカイラータ村のトルコ軍基地から、シリア政府と北・東シリア自治局の共同統治下にあるアルジャート村に対して砲撃が行われたと発表した。
ANHAによると、砲撃が行われた際、ロシア軍のパトロール部隊が同地のシリア軍拠点に進駐していたという。
また、シリア人権監視団によると、トルコ軍は、アレッポ県北部のシリア民主軍および同軍所属のマンビジュ軍事評議会の拠点への砲撃を停止するようロシア軍の要請を受けたが、これを拒否しており、これが今回の威嚇攻撃のきっかけとなったという。
ロシア軍の報復
パトロール部隊を狙うかのようなトルコ軍の砲撃に対して、ロシアも行動に出た。ラタキア県のフマイミーム航空基地に駐留しているロシア軍が、ジャラーブルス市南に位置するトルコ占領下のタルヒーン村にある石油精製用燃焼装置を地対地ミサイルで攻撃したのだ。
地対地ミサイルは2発着弾し、ANHAによると、2人が死亡、複数人が負傷、シリア人権監視団によると、大規模な爆発・火災が発生し、5人が死亡、4人が負傷した。
なお、タルヒーン村に対する攻撃は今回が2度目。1月9日にも同地にある石油精製用燃焼装置が所属不明の無人航空機(ドローン)の攻撃を受けている。
トルコ軍とTFSAの砲撃は続く
ロシア軍の報復にもかかわらず、トルコ軍とTFSAは砲撃を続けた。
ANHAによると、両軍は2月9日、アレッポ県タッル・リフアト市と同市の近郊にあるマルアナーズ村、アルカミーヤ村、タッル・アッジャール村、アイン・ダクナ村、バイルーニーヤ村、ハルバル村を砲撃した。
また、ラッカ県アイン・イーサー市近郊のムシャイリファ村、M4高速道路沿線、ナヒール休憩所に対しても砲撃を加えた。