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民放BS報道番組が盛り上ってきたのは?

碓井広義メディア文化評論家

先日、読売新聞の取材を受けました。訊かれたのは、「民放BSが報道番組を強化する理由(ワケ)」です。

そう言われてみれば確かに、「いつの間に、こんなにも」というくらい、最近のBS報道番組は数も中身も充実してきていますし、新番組も始まるようです。

BS日テレ「深層NEWS」

BS-TBS「週刊BS-TBS報道部」

BS-TBS「週刊報道LIFE」

BS-TBS「外国人記者は見た!日本inザ・ワールド」(10月7日から放送開始)

BSフジ「プライムニュース」

BS朝日「いま世界は」

BSジャパン「日経プラス10」

読売新聞の特集記事では、短いコメントとなって掲載されていますが、実際には、下記のような説明をさせていただきました。

『民放BS 報道番組を強化』と題された記事の全体は、ぜひ本紙(2015.9.30夕刊)をご覧ください。

最近の国内外の情勢は、短時間で断片的な情報を伝える地上波のニュースだけを見ていても、現実を捉えきれません。そんなニーズに合致してきたのが、BSのニュース番組です。

地上波においては、ニュース・報道番組といえども、視聴率競争から逃れられません。そこには、「伝えるべきニュース」よりも、「耳目を集めるニュース」が優先される傾向があります。ニュースとして伝える際の順番、長さ、論調が、「現実を知りたい」「本当の問題点を知りたい」という視聴者の欲求に、必ずしも対応していないのです。

BSの視聴者として、以前から、比較的年齢が高く、教養レベルも高い層が存在します。それはまた、日常的に社会の動きに関心を持つ層でもあります。最近のBS報道番組には、そうした旧来のBS支持者だけでなく、新たなファンも加わってきています。

BSは、地上波のように「赤ちゃんから高齢者まで」という幅広い視聴者を狙う必要はないため、時間的・内容的制約にあまり縛られない、一種のポリシーをもった、またエッジの立ったニュース番組を送り出すことが可能です。

そこでは、「課題を明らかにすること」「掘り下げること」「議論すること」といった内容が展開され、視聴者が「自ら判断するための材料」が提示されています。

各局がBSニュース番組に力を入れているのは、「BSパワー調査」(視聴率調査に該当)の進化(日記式から機械式へ)によって、視聴者のニーズが、より可視化されてきたこと。また地上波で弱まっている「ジャーナリズムとしてのテレビ」という側面を補強する意味合いがあると思います。

以前に比べれば、BSも多くのスポンサーを集められるようになりました。番組制作上は、より高い予算を確保することで、内容の充実を図ることができます。しかし、気をつけたいのは、BSが単なる“第二の地上波”になってはいけないということです。課題発見、掘り下げ、議論という、BS報道の長所をより意識した番組作りが、今まで以上に必要なのです。

メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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