奥多摩湖からの急登に奮闘 三頭山・ヌカザス尾根トレッキング △マイナー登山道を歩く△(0003)
奥多摩湖にかかる浮橋を渡り、北側から三頭山へ直登気味にアプローチする登山コース。山頂までは登り一辺倒でバテバテです。
<趣意>
あまりメジャーではないマイナーな登山道。ちょっと気になってはいたもののなかなか行く機会のなかった山道を歩いてみました。
<概要>
山岳名: 三頭山 (みとうさん)
所在地: 東京都西多摩郡奥多摩町・檜原村、山梨県上野原市・北都留郡小菅村
標 高: 約1531m
三頭山は東京都の水源林として保護され山頂近辺にはブナ林が残されている。初夏は新緑、秋には紅葉が美しい。
名前の由来は3つのピーク、西峰・中央峰・東峰があることから。
日本三百名山、花の百名山(ハシリドコロ)、奥多摩三山の一座。
<三頭山・ヌカザス尾根の魅力>
(1)標高差1000mの直登の登り応え
奥多摩湖湖畔の登山口から三頭山の山頂までは標高差が約1000mと低山としてはそれなりの登り応えがあります。とくに登山道は急登が連続しますのでけっこうキツいです。
(2)山頂域のブナ林や三頭大滝などの自然
山頂域にはブナ林が広がっています。水源林として保護され、杉などの植林もされていないため美しい森が広がっています。また渓流と三頭大滝などの水の流れも見応えがあります。
<登山コース>
奥多摩湖の湖畔から三頭山の北側のヌカザス尾根を上がり、檜原都民の森へ下りていくルートです。
「峰谷橋」バス停からスタートです。赤い鉄橋を渡りトンネルをくぐります。トンネル内は狭いので通行車両にご注意ください。トンネルの先にある浮橋へのスロープを下りて奥多摩湖の湖面に浮かぶ麦山浮橋を渡ります。揺れてちょっとスリルがあります。対岸に渡り、湖畔の道をすこし歩いて奥多摩湖周遊道路(都道206号線)へ上がります。道路に合流して右手へ進みます。路側帯は狭いところもあるので通行車両にお気をつけください。
しばらく進むと左側の擁壁の間に登山口が開かれています。取り付きの登り初めからなかなかの急勾配です。鬱蒼と木が茂り暗い森のなかです。登山道は基本的には広葉樹林ですが下の方には部分的に植林された杉林もあります。ひたすら登り続けて1つ目のポイントであるイヨ山に到着です。
イヨ山から先は道を下ってまた登り返すというパターンが何度か繰り返されます。ヌカザス山の手前の登り返しはキツく長い。途中で一息つける平場があります。平場からもう一踏ん張りでヌカザス山に上がります。
ヌカザス山から次のポイントである入小沢ノ峰へ向かいます。すこし歩くとムロクボ尾根からのルートとの合流点があります。さらに先へ進むとラスボスの急斜面です。オツネノ泣坂とも名付けられているそうですが、まさに泣きが入りそうな急登になります(“泣く”理由は違うようですが)。両手を使うほどではないですが、ふくらはぎに負担がかかります。20分ほどでようやく入小沢ノ峰に到着です。
この先は急斜面はなく比較的ゆるやかになりますが、まだまだ登っていきます。ようやくブナの森の美しさにも目がとまる心のゆとりが生まれてきます。鶴峠の分岐を過ぎてしばらくなだらかに登っていくと三頭山に到着です。三頭山には3つのピークがあり、到着したのは西峰になります。西峰から東のルートへ入れば中央峰と東峰に辿り着きます。
今回は三頭山西峰から南へブナの路を通ってムシカリ峠へ下りて三頭大滝を目指します。ブナ林のなかの階段道を下りきるとムシカリ峠です。そのまま道を真っ直ぐ進むと笹尾根となります。東の分岐路に入り三頭大滝方面へ下りていきます。下りていくとやがて沢に出ます。沢沿いの道を下っていきます。濡れて苔むした石が滑りやすいので要注意です。
下りきって橋を渡るとウッドチップが敷かれた道に出ます。右手に三頭大滝があります。滝見橋へ出ると滝をよく観望できます。ふたたびウッドチップの道へ戻り檜原都民の森内のバス停へ向かいます。ウッドチップの道は歩きやすく足の感触がとても気持ちいいです。森林館の前を通り過ぎて階段と坂道を下りると駐車場となっており、その奥にバス停があります。今回はここがゴールです。
<行程表>
※標準的タイムによる目安(休憩含まず)
「峰谷橋」バス停→ 三頭山登山口(20分)→ イヨ山(60分)→ ヌカザス山(60分)→ 入小沢ノ峰(30分)→ 鶴峠分岐(25分)→ 三頭山西峰(30分)→ ムシカリ峠(10分)→ 三頭大滝(40分)→ 森林館(25分)→ 「檜原都民の森」バス停(5分)
コースタイム/ 5時間10分程度
標高差/ 1000m程度 (峰谷橋バス停:535m、イヨ山:979m、ヌカザス山:1175m、入小沢ノ峰:1302m、三頭山西峰:1527m、檜原都民の森バス停:990m)
<登山コース補足>
峰谷橋から登山口までは路側帯の狭い道路がありますので通行車両にご注意ください。
麦山浮橋は奥多摩湖の水位により通行禁止になる場合があります。事前に通行可否をご確認ください(東京都水道局のWebサイトでお知らせがあります)。
基本的に全体が直登気味で急坂が断続する登山道です。
登山道は全体的にブナなどの落葉広葉樹中心の森です。初夏は新緑が秋には紅葉が美しいです。
●水場やトイレなど
登山道上に水場がありますが期待しない方がいいです。なおルートの登坂上にはないです。
トイレは峰谷橋バス停、三頭大滝そば、森林館、都民の森バス停にあります。ルートからすこし外れますがムシカリ峠の先の三頭山避難小屋にもあります。
<難易度・危険箇所など>
とくに大きな難所や危険箇所などはほとんどありません。
<アクセス>
●往路
JR青梅線「奥多摩」駅から路線バス(西東京バス)で「峰谷橋」バス停まで約25分。
●帰路
檜原都民の森内の「都民の森」バス停から路線バス(西東京バス)でJR五日市線「武蔵五日市」駅まで約1時間41分(直通の急行バスの場合は1時間8分程度)
※直通の急行バス以外の普通便の場合、「数馬」バス停でいったん別のバスに乗換えます。
●補足
2023年のJRのダイヤ改正により、ホリデー快速おくたま号で新宿駅から奥多摩駅に向かう場合、青梅駅でいったん乗換えることになります(直通運転は廃止になりました)。
同改正により、新宿駅と武蔵五日市駅を結ぶホリデー快速あきかわ号は廃止になりました。なお、武蔵五日市駅から新宿方面に向かう場合、武蔵五日市駅から普通各駅停車便で拝島駅に行き、ホリデー快速おくたま号に乗換えることができます。
<売店等>
奥多摩駅周辺には自動販売機があります。奥多摩駅バスロータリー隣接の売店は廃止になりました。
武蔵五日市駅には駅舎と駅前にコンビニエンスストアがあります。
“檜原都民の森”駐車場に隣接して売店があります。
<日帰り温泉など>
数馬の湯 (数馬バス停)
瀬音の湯 (十里木バス停)
もえぎの湯 (奥多摩駅)
<お食事処>
“檜原都民の森”には森林館内に食堂があります。
奥多摩駅・武蔵五日市駅周辺には複数の飲食店があります。
前記の日帰り温泉施設内には食堂があります。
<山小屋などの宿泊施設>
山のふるさと村 ※東京都運営のキャンプ場(東京都立奥多摩湖畔公園)
数馬の集落周辺には複数の旅館があります。
<付近の山>
浅間嶺・浅間尾根
笹尾根
御前山
<名産品>
じゃがいも
こんにゃく
のらぼう菜
<そのほかの補足>
(1)檜原都民の森
三頭山山頂域の山岳公園。公園内の森林館には休憩室や食堂などあり。各種イベントを催行。
(2)奥多摩町観光案内所
奥多摩駅前。各種パンフレット備置。
(3)奥多摩ビジターセンター
奥多摩駅そば。登山道等の情報提供あり。
(4)五日市観光案内所
武蔵五日市駅そば。
<私的な雑感>
三頭山ヌカザス尾根は低山としてはかなりハードな登り応えのある手強い登山コースという印象です。
三頭山の北側にある奥多摩湖の湖畔から一気に登り上がります。ほぼ直登で急斜面が何度も連続する情け容赦ないルートです。さすがに両手を使うような斜面はありませんが、へばりつくように登っていくような所もあります。初めて登ったときは正直、音を上げて途中で引き返そうかと思いました。10歩上がっては一息いれまた10歩上がっては一息いれ…と自らの体力の無さに凹んだ次第です。
ブナなどの落葉広葉樹の森は美しいのですが、それを楽しむ余裕もない。せめて途中で展望スポットなどがあれば休憩時にすこしは心が安まるのですが眺望はほぼありません。森のなかの急斜面をひたすら登らされます。
ヌカザス尾根コースの一番おもしろいポイントは奥多摩湖にかかる麦山浮橋を渡るところでしょうか。通称“ドラム缶橋”。ちょっとアトラクション感覚があって楽しめます。最初で面白いところが終わってしまうのが欠点かもしれません。
三頭山ヌカザス尾根は一言でいうととにかく“ツライ”。しかし裏ルート(檜原都民の森から登るのが一般的と思われます)として三頭山の別の一面を体験して山の奥深さを知ることができる面白い登山ルートだなーと感じます。
<備考>
檜原村観光協会のWebサイトにおいて三頭山のハイキングガイドマップが提供されています。
昭文社・山と高原地図「24.奥多摩」内に本コースの記載があります。
(2023/10/13 上町嵩広)