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iPad低迷でもまだ1位、というタブレット市場への疑念

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
iPad Proの新製品にも期待が集まるが…

Appleが発表した2017年第2四半期決算でも、iPadの販売台数は冴えないものでした。

同四半期の販売台数は890万台で、前年同期比-12%、売上高も38億8900万ドルで前年同期比-12%という結果でした。2016年第2四半期の1025万台、アナリスト予想の960万台ともに届かず、第2四半期で1000万割れとなったのは2012年以来初めてでした。

決算発表のカンファレンスコールでは「四半期を通じて供給が追いついていなかった」というコメントがあり、市場自体の下落とともに、機会損失による下落も原因にあったことがうかがえます。

2017年3月21日にはラインアップを整理し、iPad Air 2とiPad mini 2の販売を停止し、iPad mini 4も128GBの1モデルに絞って、第5世代iPadがきちんと供給できる体制を整えました。これにより、329ドルに値下げされた9.7インチのiPadの安定的な供給が見込めるのではないか、と期待しています。効果が表れるのは、第3四半期以降になるでしょう。

そんな状況であったことから、iPad Proの刷新や新しいサイズの投入などは、現実的な選択肢ではなかったことがうかがえます。

タブレット市場自体が縮小

Appleはタブレットやスマートウォッチ、ときどきスマートフォンも含めて、コンシューマー向けのスマートデバイスのカテゴリのトップメーカーとなっています。裏を返すと、Appleのそのカテゴリでのビジネスに陰りが見えると、カテゴリ全体の落ち込みに影響します。

IDCによると、タブレット市場では、2017年第1四半期(1〜3月)のAppleのシェアは25.9%でトップでした。2位は15.2%でSamsung、3位は5.1%でHuawei、4位に5.6%でAmazon、5位に5.5%でLenovoと続きます。

Appleは前述の通り、13%の下落と最も大きく減速しており、31.7%増のHuaweiを除いては、それぞれ1桁台の下落という結果でした。タブレット市場全体は-8.5%の下落で3620万台という結果でした。

タブレット市場は、スマートフォンほど、確固たるものではなく、他のカテゴリとの間でのせめぎ合いが厳しいことをうかがわせます。スマートフォンの大画面化は、画面が大きなデバイスであるタブレットを圧迫しています。タブレットだから処理性能が高い、というわけでもないのです。

また、ビジネスや教育市場では、キーボードを搭載するノートPCやChromebook、タッチディスプレイを備える2-in-1のWindowsデバイスが強くなっており、特に教育市場ではChromebookが58%のシェアを確保し、iPadの5倍以上の勢力に拡大するまでになりました。

iPadを見ていると、ウェブ、メール、SNS、簡単な文書作成、写真、ビデオ撮影、ちょっとした編集という用途に留まっていれば、2017年においても、iPad 2やiPad miniでも十分その役割を果たしてくれます。家の中で使っていると、バッテリーの充電サイクルも少ないので、バッテリーもへたってきませんし。

一度買ったら買い換える理由がない点がiPhoneとの違いだとみています。ゲーム用途でもVRが発展してくると、iPadだけでなくiPhoneやMacも途端に通用しなくなっています。

iPadやタブレット浮上のきっかけは、前述のVRや、スマートフォンとのよりシームレスな連携を含むワークフローの確立などが不可欠です。おそらく、それに取り組むのもまた、Apple、ということになるのではないかと思いますが、他のメーカーにその役割を奪われると、いよいよiPadの時代も終焉に近づいていくと思います。

iPadについての詳しいストーリー、iPad以外のApple 2017年第2四半期決算の解説は、「#アップルノート」でご覧下さい。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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