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人気のオープンキッチンは「フル」か「セミ」か。リフォームでの可変性が大きいのは……

櫻井幸雄住宅評論家
フルオープンと呼べる形式のマンション・キッチン。開放感が大きい。筆者撮影

 現在、マンションにおけるキッチンの主流はオープン型。「オープンキッチン」と呼ばれる形式である。このオープンキッチンには、「フル」と「セミ」の2種類があることをご存じだろうか。

 上の写真が、フルオープン。キッチンとリビングの間にまったく壁がなく、開放感が大きい形式だ。

 これに対し、オープンキッチンではあるが、一部、コンロの前に壁を設置しているのが、下の写真。広く使われる言葉ではないが、あえて表現すれば“セミオープン”と呼べる形式である。

多くのマンションで採用されているオープンキッチンでは、コンロの前に壁がある。このほうが使い勝手がよい、という人がいるのも事実だ。筆者が撮影した一般的オープンキッチンの例。
多くのマンションで採用されているオープンキッチンでは、コンロの前に壁がある。このほうが使い勝手がよい、という人がいるのも事実だ。筆者が撮影した一般的オープンキッチンの例。

 セミオープンとフルオープンがある、といっても、マンション購入時に選択できるわけではない。「このマンションはセミオープンだけ」「このマンションではキッチンがフルオープンになっている」というように、マンションごとに設定が決まっているのが実情だ。

 現在、多くの新築マンションで採用されているのはセミオープンのほうで、フルオープンは近年増え始めた形式となり、まだ数は少ない。

 そのため、「どうしても、フルオープンの生活がしたい」というときは、「フルオープン・キッチン採用のマンション」を探さなければならない。

 セミオープン・キッチンのマンションを購入し、後から壁をはずそうとしても、それは不可能。というのも、コンロ前の壁内には上下階を貫通する排水管が入っているからだ。

 排水管はシンク(流し)のそばに配置する必要がある。その排水管を隠すため、部分的な壁が設置されている、というのがセミオープン・キッチンが主流になっている隠れた理由だ。

 これに対し、フルオープン・キッチンでは、排水管をシンクから離し、隅のほうに配置。シンクから離しても排水が滞らない工夫を凝らしている。つまり、フルオープン・キッチンのほうが手間がかかっているわけだ。

 手間はかかっても、今は開放感重視で、フルオープンのキッチンが増加中。とはいえ、フルオープン・キッチンにも短所があるので、それを知っておくことが重要だ。

フルオープンならではの「見えすぎる欠点」

 フルオープンと呼べるキッチンは、リビングダイニングとの間に壁がなくなり、開放感が大きくなる。それが、第一の利点だ。

 一方で、あまりに開放的であるための困りごとも生じている。

 たとえば、リビングからまな板や台所洗剤が丸見えとなり、生活感が出てしまう。シンクからの水はねが気になる。コンロで炒め物をすると、油気がリビング側に広がる気がする、という声があるのも事実だ。

 それを防ぐため、フルオープンのキッチンでも、低いフェンスのように囲いを設置する工夫がある(下の写真参照)。キッチンに立ったときの開放感はそのままで、まな板や洗剤を隠し、水はねを防止する工夫だ。

野村不動産のマンションでは、フルオープン・キッチンに低いフェンスを設けることが多い。同社のマンションモデルルームで、筆者撮影
野村不動産のマンションでは、フルオープン・キッチンに低いフェンスを設けることが多い。同社のマンションモデルルームで、筆者撮影

 また、炒め物をしたとき、油気が広がるのを防ぐため、レンジフードの能力を高めたり、コンロ前に透明なガラスフェンスを設置する工夫もある。

 もうひとつ、フルオープン・キッチンでは、壁面が少ないことで生じる不便さもある。

 コンロまわりの壁がホーロー引きになっている場合、磁石が付くので、フックや小さな棚などを設置しやすい。その便利さに慣れた人からすると、「磁石が付く壁が少ない」と残念がることになりがちなのだ。

 その点、セミオープン・キッチンの場合、磁石で付く備品を数多く活用できる。それは、セミオープン・キッチンの利点となるだろう。

リフォームで変更しやすいのは……

 最後に、リフォームで変更しやすいのはどちらかを説明しよう。

 前述したとおり、セミオープン・キッチンの場合、コンロ前の壁に排水管が入っている。そのため、壁を取り去ることはできない。それは、リフォームでキッチン部分を変えたいと思うときのネックになりがちだ。

 その点、可変性が高いのはフルオープン・キッチンのほう。排水管を隅に寄せてあるので、システムキッチンを移動させやすい。

 また、「やっぱり、コンロ前に壁があったほうがよい」となったときも、壁を後付けしやすい。

 そう考えると「キッチンはフルオープンかセミオープンか」で迷ったときは、とりあえずフルオープン・キッチンにしたほうが、よいということになる。

 ただし、問題は「フルオープンのキッチンはまだ少ない」ということ。今は、フルオープン・キッチンに出会ったら、ラッキーと喜ぶべき状況なのである。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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