メスティンはなぜキャンパーに人気なのか
皆さんは「メスティン」という言葉を聞いたことがあるだろうか。普段からキャンプをしているキャンパーなら知らない人はいないであろう言葉だろうが、キャンプをしていない人は一体何のことか検討もつかないのではないだろうか。
メスティンとは元々スウェーデンのトランギア社が作っているアルミ製調理器具(クッカー)のことを指すのが一般的だったが、キャンプ・アウトドアメーカーだけでなく100円ショップのダイソーなどから同じ形の物が販売されるようになり今ではメスティン=トランギア ではなくアルミ製の箱型の調理器具の事を指すようになっている。
昨今キャンプブームと言われているが、そのブームとほぼ同じタイミングでメスティンに注目が集まり、トランギアのメスティンが飛ぶように売れた。キャンプ用品店に在庫がないのはもちろん、ネット上では税抜き価格1,600円が定価にもかかわらず4,000円や6,000円で転売されているのが長いこと続いていた。その後はメスティンで作るキャンプ飯レシピ本が多数販売されたり、Instagramではメスティンで作ったキャンプ飯だけをのせるメスティンインフルエンサーが出てきたりと留まる事を知らない。
なぜメスティンはこれほどまでに人気があるのか、筆者の経験と共に考えていきたいと思う。
メスティンがキャンプで人気である理由は大きく2つある
1、様々な調理方法で調理できる、2、携帯性に優れている という事
1つ目の理由である様々な調理方法とは、焼く、煮る、蒸す である
メスティンは元々飯盒として使われていたこともあり、ご飯を炊くことが得意な調理器具である。全体がアルミでできており、熱伝導が良く熱が全体にいきわたりご飯をムラなくふっくらと焚くことができるのである。それだけではなく、バットを使い底あげをすればシュウマイや肉まんを蒸すこともできる。アルミホイルとバットを使えば燻製用のチップを使って燻製も作ることもできる。また、火にかけて使えば蓋も本体もフライパンとして使えるので1つ持っていればあらゆる調理をすることができるキャンプアイテムだ。
2つ目の理由は、携帯性に優れているということ
これはメスティン自体が箱型だから収納しやすいということでもあるが、メスティンの中にお箸やスプーン、調味料などの細々した物を入れてまとめて持ち運ぶことができるという点も人気の理由の1つだといえる。私もメスティンの中にはお箸やスプーン、調味料はもちろんのことメスティンに収まるミニ鉄板や油、ミニガストーチなどを入れてまとめて持ち運びしている。
では、丸型のクッカーではそれができないのかというと出来ない事はないが入れるモノを選ばないと厳しいだろう。折り畳み式のスプーンやお箸であれば丸型でも入れることができるだろうが、鉄板や長さのあるものを丸型のクッカーに入れるのは不可能だ。しかし、丸型クッカーにはOD缶(キャンプで使われる丸いガス缶)をそのまま入れることができるので必要最小限の装備しか携行することのできない登山には丸型クッカー+OD缶が使われる。
なぜメスティンが爆発的に注目されるようになったのか
山登りに持って行く道具と、週末のキャンプで使うキャンプ道具では装備が違うのは今では当たり前だが、昨今のキャンプブーム以前は今よりはるかにキャンプ道具の種類が少なく、選択肢が少なかったのである。厳冬期の登山で使えるようなハイスペックな道具の取り扱いが多く、週末のキャンプで使うような安くてそこそこ使えるキャンプ道具は殆どなかった。
つまりほんの数年前までは週末のキャンプに行くだけでもキャンプ用品専門店に行って、価格が高いハイスペックのテントやガスバーナー、OD缶と丸いクッカーを買う必要があったのである。
しかし、キャンプブームと言われるようになってからは、同じような形のソロ用テントでも3万円のハイスペックのものから数千円で買える入門用までと選択肢が増えている。同じく調理器具も丸型や四角、そしてメスティンといったように選択肢が増えていったのである。
今まではOD缶と相性のいい丸型のクッカーばかりだったが、登山用ではなくキャンプ用で使うのであれば丸型よりもメスティンの方が使いやすいよね、といった意見が多く見られるようになったのである。メスティン自体は昔からあったが、キャンプブームにより初心者ユーザーが多くなり初心者目線での使いやすさとして発掘されたのではないだろうか。更に拍車をかけるようにYouTubeやTwitter,Instagram等のSNSによりメスティンの使いやすさが爆発的に広まったのである。
昔のキャンプと今のキャンプ
「昔のキャンプ」と「今のキャンプ」では特徴や求めているものが変わっていると感じることがある。グランピングなんて言葉が無かった一昔のキャンプをあえて別の言い方に変えると「野営」、どこか野暮ったく男の趣味といった雰囲気がある。一方今のキャンプの特徴や求められているのは「おしゃれ」や「映え」ではないだろうか。女性キャンパーも増え老若男女が楽しめる趣味となっている。今と昔、どちらが良いか悪いかではなく、時代やユーザーによって多様性が生まれるのはとても良い事ではないだろうか。
メスティンで作るキャンプ飯は野暮ったくなりがちなキャンプ飯に可愛らしさを生み出すことができる。
メスティンは様々な調理方法で使えて、お箸やスプーン調味料も一緒に持ち運べて便利なキャンプ道具であり、なおかつおしゃれや映えを求めている現代キャンパーにとって相性のいいキャンプ道具となったのである。