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その転売、待った!サプリ、健康食品の悪質転売が問題になっている。フリマなどで売らないで、買わないで!

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:beauty_box/イメージマート)

ネットには様々な不正な方法を使って、お金をだまし取ろうとする人たちがいます。前回は、「横行する不正注文の実態を暴く!今、飲食店の電話番号が悪用されている。」の記事にて、後払いの代金を払わない犯罪行為があることを「かっこ株式会社」にお聞きしました。

同社は、不正注文検知サービス「O-PLUX」を通じて、不正注文をリアルタイムに検知し、なりすまし注文や不正転売などの被害の防止のためのサービスを提供しています。

さて今回、お聞きしたのは、サプリや健康食品などの転売についてです。

同社の担当者は「詐欺とまではいえないのですが、非常に悪質な方法で商品を手に入れて、転売する方法が横行している」と話します。

それは非常にグレーなやり方ゆえに、もしかするとすでに「儲け話」として聞かされて、手を染めている方もいるかもしれませんが、すぐにやめてください。

「どのような手口でしょうか?」

「健康食品やサプリの通販サイトでは、まず使って頂いてから、気に入ったら定期的に購入してもらうようにしているところが多くあります。そのため、初回の料金は定価5000円のところを、キャンペーンとして500円ほどの安い値段で販売しています。ところが、初回の購入で安く手に入れたものを、転売をしている人たちがいます。フリマアプリなどで、お試し価格で手に入れたものを、定価より少し安い値段に設定して販売し、利ざやを得ており、通販業界の間でも問題になっています

今、消費者トラブルで多いのが、逆のケースで「初回のみ90%オフで購入できる」といった健康食品やサプリメントのネット広告を見て「安い」と思って購入したら、実は2回目以降は定価での定期購入になっていた。しかも解約が簡単にできないというものです。

多くの通販業者は、法律に基づいて、利用者にわかりやすく定期購入になる旨を書いていますが、なかには悪質業者もいて、定期購入を利用者に気づかれないような小さな文字で書き、ごまかすような記述をしており、被害に遭う人が続出しています。

私も以前にこの手口を調べたことがありますが、本来、申し込みの確認画面で「支払の総額や契約期間などを記載しなければなりません」しかし、それをきちんと載せていないところもありました。そこで電話をかけて指摘すると「うちは、無期限の契約だから、期間も総額も表示できない」などと言い返してきます。

こうした被害がある一方で、「まずは使ってもらってから、判断してもらおう」という通販会社の思いを逆手に取るような手口が出てきているのです。

「この場合、注文時に500円の注文では、確認の電話はかけないので、電話番号は適当に書くケースが見られます。実は、ネット上でもこうした転売手法を指南する動画サイトもあります」

担当者の言葉を受けて、調べてみました。

すると「せどり」「副業」の方法を教えるといった形で、今回の手法を紹介するものが、次々に出てきます。説明されている内容は、たいがい次のようなものです。

「サプリや健康食品、化粧品を販売する通販サイトでは、キャンペーンとして、定価より安い値段で買えるようになっています。その商品を格安で購入し、フリマアプリやオークションで売るという方法になる」と説明します。

「たとえば、お試し価格1000円で買ったものの定価が、3500円だったとすれば、その値段より安くフリマなどに出せば、買ってもらえて、その差額で儲かるようになっています」

「ただし」とサイトの説明者は注意を促します。

「こうしたキャンペーン商品の多くは、定価での継続購入が条件になっていますので、一回目の購入後、すぐに解約を伝えることが必要です。お一人様一回限りなので、家族や友達の名前でも購入してみてください」

別な動画では、フリマアプリで売る前の注意点を上げていました。

「今、どのくらいの値段で、これから仕入れようとする商品がフリマで売られているのかを必ず、チェックしてください。あまりに値崩れをしていれば、商品の仕入れを控えた方が良いですね」

そして最後に「購入、転売できる商品を販売するサイトのURLをリスト化していますので、お渡しできます」と言い、自分のサイトにアクセスするか、メッセージアプリでの友達登録をするように促します。

もはや「仕入れ」と言い方をしているように、商売として行うように指南しています。

もしこの一連の内容をサイトで見て、今、行おうとしている人がいればやめてください。

なぜなら、もしリストを手に入れて、フリマの値段の動向を確認しながら、繰り返して商品の転売をしていれば、業として行っていることになり、古物証の営業許可が必要になります。もし許可を得ずに、この行為を繰り返して、古物営業法違反に問われると、3年以下の懲役または、100万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

過去にも、スマートフォンやプロ野球の観戦チケットなどを転売して利益を得ていたとして、古物営業法違反の容疑で逮捕された事例もあります。

しかも厄介なことに、同社の担当者によると「個人同士で、仕事の請負を行えるマッチングサイトを悪用して、この手法を行っているケースもあると聞いています」とのことでした。

そこで、幾つかのネット上の業務請負のマッチングサイトに登録して調べてみました。しかし、なかなか募集の広告表示からだけでは、今回のような手口かの判別はできず、残念ながら、悪質な転売業者にあうことはできませんでした。

ちょっと怪しいなと思う、募集先があったので、相手に仕事の詳細を尋ねてみましたが、内容はまったく教えてもらえずに、「応募について、あなた様との契約を見送りさせて頂きます」という、かみ合わない返事がきただけでした。

ただ、サイトを見ていえるのは、非対面でのやりとりであり、第三者の目が届きにくい状況になっており、もし悪意ある人物が入り込めば、違法性のあるような仕事を紹介してくることはあるかもしれないの印象は持ちました。今後も、調査は続けたいと思います。

通販会社、購入者、フリマアプリによる、三位一体の取り組みも必要

それに、フリマ利用者の方々にも知っておいてほしいことがあります。通常の値段より安いからといって、安易に購入しないでください。もし購入先が先のような個人の顔をした転売業者だった場合、悪質行為を行う者の懐を肥やすことになってしまうからです。

通販サイト側からも「自社以外のサイトからは買わないでください。商品の品質が劣化している恐れがあります」と、健康被害の面からも呼び掛けています。

何より、正規サイトからの購入を心掛けることで、不正な転売業者を排除することにつながります。

またフリマアプリ側も、サプリなどを繰り返して販売する、個人の顔をした悪質な転売業者のアカウントの通報を受けたら、注意など適切な対応をする。

こうした不正な転売行為を防ぐには、もはや通販会社単体だけでは対応できません。

振り込め詐欺も、見守る人たちが連携で、高齢者に声をかけて防いだ事例も多くあるように、不正転売に対しては、被害を受けている通販会社はもちろんのこと、購入者、フリマアプリ側の「買う側」「売る側」が一丸になった三位一体の連携がなければ、この行為はなくならないと考えています。

通販会社は利用者のことを考えて、お試し価格で販売しているのに、転売目的で購入しているとすれば、それは業者をだましていることにもなります。

繰り返しますが、こうした行為を、軽い気持ちで行うことだけは絶対にしないようにしてください。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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